第2話 初めての依頼
俺は魔術師になった。しかし、この世界では魔術師は他の職に比べて弱く、さらに俺は知力が平均以下らしいので、回復魔術も簡単なもの以外使えないらしい。前世だと、勉強はクラスで真ん中ぐらいだったからの普通ぐらいのだと思っていたんだがなあ。
まあいい。俺は職についたということで、とりあえず、依頼を受けよう。えーと、俺は冒険者ランク1だから、ランク1とランク2の依頼しか受けられないんだっけ。
とりあえず、ギルドの掲示板に貼ってある依頼の書いてある紙をみてみるか。
えーっと、ランク1と2の依頼は…あった。『ランク1 大通りのゴミ拾い3時間』か。報酬は30マニルか。少ないな…
ちなみにこの世界のお金の単位は世界共通でマニルというらしい。大体日本円換算で、10円で1マイルぐらいだ。
つまり、この依頼は3時間ゴミ拾いをして、300円しかもらえないのである。流石に割に合ってない気がするから、他のを探そう。
他には…あった。『ランク1 いなくなったペットを探してほしい』か。報酬は、えーと5000マニル!?よし。これにしよう。でもなんでこんなに高いんだろうか。まあいい。
「すみません、この依頼を受けたいんですけど。」
「承知しました。一度依頼を受けますと、キャンセルにはキャンセル料として7000マニルいただきますので、くれぐれも、責任を持って依頼をお受けください。」
キャンセル料ってそんなにかかるのか。でも、ちゃんと依頼をこなせばいいだけだしな。
「わかりました。」
「それでは依頼主の方の家はこの街の北の東西通りの通り沿いの家にあります。まずはそちらに伺い、依頼の詳細を聞いてから依頼をこなすとよろしいかと思います。」
「ふーん、じゃあ、その家の目印みたいなのってありますか?」
「東西通り沿いの、白い家が依頼主の家でございます。」
「なるほど、わかりました。」
俺はギルドを出て、まずはその家に向かうことにした。
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「あった、この家か。」
依頼主の家に着いた。えっと、確かこの家で依頼の詳細について聞くんだっけ。
とりあえず、その家の扉をノックして、
「すみませーん。」
と言った。すぐに返事は返ってきた。
「は〜い、少々お待ちくださいませ。」
とその声の主が扉を開けた。60代くらいの濃い茶髪でパーマのおばさんが立っていた。
「何か御用でしょうか?」
「このペット探しの依頼を受けるので、依頼の詳細を聞かせてほしいんですが。」
「ああ、その依頼を受けてくれるのね。ありがとうね。」
「そのペットってどういうやつなんですか?」
まあ猫とか犬とかなんだろうな。
「ワニよ」
「はい?」
思わず聞き返してしまった。今ワニという単語が聞こえたからだ。聞き間違いだろう。いや、聞き間違いであってくれ。
「1.5メートルぐらいの小さいワニよ、ちょっと前、家から逃げ出したのよ。」
でも、答えは変わらなかった。やっぱりワニと言われた。なるほど、通りで報酬が高いわけだ。犬猫探しとかじゃあ報酬に5000マニルも出すはずないもんな。今すぐ依頼をキャンセルしたいと思ったけど、もう遅い。キャンセルしたら、キャンセル料で7000マニル取られるらしいからな。
「じゃあ、お願いね。あぁそうだ。捕まえるなら、このロープを使うといいわ。」
そう言って、ロープを手渡された。自分のペットをロープで捕まえさせるとは…まあでも、ロープとか使わないと、ワニを捕まえることはできないもんな。
「わかりました。」
そう言い、俺はその家を後にした。
「よっしゃあ!気合入れて探すぞ!」
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「はぁ」
5時間ぐらい探したが、全然見つからない。ワニなんだから目立つしすぐ見つかるだろなんて思っていたが、この街は広いし、裏路地とかもたくさんあるので、全く見つからない。だんだん日が暮れ始めている。
「いねえなぁ…」
そう言い、細い裏路地にあった大きい木箱に座った。
「ふう〜っ、ったく、どこにいるのやら。」
そう言い、箱の上で横になった。
「うん?」
箱の下から、何か音が聞こえた。
「何だ何だ?」
そう思い、箱の蓋を開けると、中には体長1.5メートルぐらいのワニがいた。
「こいつか、絶対こいつだ!」
ワニはおとなしかった。ペットだし、飼いならされてるのかもしれない。一応、ワニの口をロープで縛って、依頼主のおばさんの家に戻ることにした。
でもなんで、このワニは箱の中に入ってたのだろうか。
そんなことを考えながら、その場をあとにすると、しばらくして、さっきの場所らへんから、子どもの声で、「あーっ!!」という声がした。気になったので、ワニの口を縛ったロープを近くの木に縛り付け、何事かと様子を見に行くと、子供が3人で箱の近くで残念そうな顔をしていた。
どうやら、彼らが逃げ出したペットを箱の中に閉じ込めていたらしい。せっかく捕まえたのに可哀想だが、これは人のペットなので、返さないといけないからな。
「すみませーん、戻りました。」
「あらあら、ありがとうね。助かるわ。」
ワニを連れて家に戻ると、おばさんはとても喜んだ顔をした。
「それじゃあ、依頼達成の証のサインをするから、依頼の紙を見せてちょうだい。」
どうやら、依頼達成の証として、依頼主が依頼の紙にサインをして、それをギルドに持っていくことで、報酬をもらえるらしい。
「はい、これをギルドに持っていけば、報酬をもらえるはずよ。本当に見つけてくれてありがとうね。それじゃあ。」
依頼主のおばさんは、そう言って扉を閉めた。
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ギルドに戻る頃には、すっかり日は暮れていた。
「ただいま戻りました。」
そう言い、カウンターの職員に、依頼と依頼主のおばさんのサインの書かれた紙を見せた。 「ご苦労さまです。こちらが報酬の5000マニルでございます。」
俺は5000マニルを受け取ると、ギルドを後にした。
「もう日も暮れたし、宿を探さないとな。」
とりあえず、安そうな宿を探すことにした。
「ここでいいか。」
冒険者ギルドの近くにある宿にした。高そうではないし、別に汚くもなかったので、その宿に泊まることにした。
「すみませーん。一晩お願いします。」
「あいよ、2階の奥から2番目の部屋を使いな」
「ふう」
部屋につき、ベッドに寝転がった。転生してまだ一日なのに、とても疲れた。これからどうやって暮らせばいいのだろうか。ずっと宿で暮らすわけにもいかないし、どっかに家でも買ったほうがいいのかな。
まあいい、とりあえず初任務完了だ。でも今日の依頼は初めてにしてはハードすぎる任務だったので、明日はもう少し楽な任務がしたいな。
そんなことを考えながら、俺は眠りについた。