第28話 したくなかった再会
王、いや、本当にあいつは王なのだろうか。あいつからはまるで王の威厳というものを感じない。謁見の間にあった肖像画のほうがよっぽど威厳を感じた。
その王の格好をした人物の「囲め」という言葉とともに、王の傍らにいた兵士達が一斉に俺達を取り囲み、槍を向けてきた。
「おいおい、俺達が何かしたのかよ。」
俺達は王に向かって膝をついて頭を垂れていたが、俺はスッと立ち上がってそう言った。
すると、王は、フッと笑い、
「君はまだ気づいていないようだね。」
王の口調が変わった。何処かで聞いたことのある口調だ。最近聞いたな。
「あの時の君達にはしてやられたよ。全く、僕の気を引いて後ろから攻撃するとはね。」
俺はその言葉で気がついた。
「ああ、お前、フィリルか?」
そう言うと、王はまたフッと笑った。どうやら、あれは本当にフィリルのようだな。
さっきの話、あの時とは迷宮でのことだな。でも、なんでこいつがここにいるんだ?そして、なんで王の格好をしているんだ?
「なんでお前がこんなところで王の格好をしているんだ?」
そう言うと、フィリルはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、玉座からスクっと立ちあがり、
「そりゃあ、ここのロドリス王⋯だったっけ?を殺して、僕がすり替わっているからよ。」
殺した。フィリルがその単語を発した瞬間、後ろでブワッと殺気が一気に膨れ上がった気がした。
フィリルはそれに気づいていないのか、若しくは気づいているが面白がっているのか分からないが、ニヤニヤとしながら話を続ける。
「いやぁ、とても滑稽だったよ。巷では王国最強とか剛力無双とか言われていたのに、僕が王妃の顔をして王の前に出たらすぐに騙されてねぇ⋯容易く殺せたよ。」
こいつ、なかなかに下衆だな。人を殺してそれを笑いながら話せるんだ。
俺は今にもフィリルに向かって魔術をぶっ放そうかとも思ったが、兵士に四方から囲まれている状態なので、何かしたらすぐに殺されるかもしれない。それに、冷静さを失ったら向こうの思う壺だろうしな。
幸い、武器は謁見の間に入る時にも取り上げられなかった。あいつは何となく詰めが甘いな。だが、それによって俺達の希望になるんだから、あいつには感謝だな。
「なんでここの王を殺したんだ?」
俺は怒りを押し殺し、フィリルにそう尋ねた。
俺達を囲む兵士達が、質問など許さんと言わんばかりに槍を刺そうとしてきたが、フィリルはそれを「待て」と制止した。
「僕達が生きていて、魔王様復活のために動いていることを知っていたみたいなんだよ。僕が殺した時はあっさりだったけど、流石は王国史上最強といったところだね。」
そういえば、こいつらの目的は、昔、勇者に封印されたっていう魔王の復活って言っていたな。
「じゃあ、なんで俺達をここに連れてきたんだ?」
俺がそう言うと、フィリルは、少し考えるようなポーズをし、
「前にも言ったかもだけど、詳細は言えないけどね、君達のように強い力を持った者を僕達は必要としているんだよ。魔王様の復活のために。君達は僕らが想像する以上の力を持った人間だ。ぜひとも生け捕りにしたいね。」
フィリルは俺達を嘲笑しながらそう言った。しかし、俺達を獲物として見ているような目つきでこちらを見ていて、気分が悪くなりそうだ。
「そうか⋯。」
俺は何か聞こうとしたことがあったが、フィリルの言葉を聞くうちに少しずつ気分が悪くなり、何を聞こうとしたか忘れてしまった。そうして、俺が言葉に詰まっていると、
「こいつらはお前が操ってんのか?それとも、人の見た目をしただけの魔物なのか?」
フィオナが俺達を囲む兵士達を指差してそう聞いた。
フィリルは御名答と言わんばかりにパチパチと拍手をした。
「そうだよ。こいつらは兵士の見た目をしているけど、もう中身は魔物になっている。人間には戻れない。まあ、これは僕がやったわけじゃないけどね。」
フィリルは平然とそう言った。すると、フィオナは少し笑い、
「じゃあ、こいつらは殺してもいいんだな」
そう言った。すると、俺達を囲む兵士達がすぐに槍で俺達を刺そうとしてきた。しかし、その数瞬後、フィオナの身体がフッとぶれた。そして、一瞬で3人を殺していた。
さらに、フィオナはそのまま他の兵士も槍で斬って、僅か数秒で兵士10人を、それも一人で殺していた。
そのままフィオナは槍の先をフィリルへと向ける。
しかし、フィリルは平然とした顔で、
「いやあ、見事見事。前はいなかったけど、お強い仲間が加わったようだね。」
そう言った。あのフィオナの攻撃を見たのに、まだ余裕そうな表情をしているのは、何か策があるからだろうか。
「槍を向けているということは、僕と戦おうということだろ?じゃあ受けて立つさ。」
フィリルはそう言い、ずっと王の格好をしていたが、着ている服を破き、一気に剥がした。すると、王にそっくりだった姿は、一瞬で前に見たのと同じ格好のフィリルの姿となった。
「この服には格好を思うがままに変えられる魔術がかけられているんだよね。とても便利だ。最も、君達はこの間に入ってすぐから薄々僕が王じゃないって気づいていたようだけどね。」
フィリルはそう言いながら、まるで準備運動をするかのように、手をブラブラと振り、首をコキコキとならした。
そして、しばらくした後、
「じゃあ、始めようか。」
フィリルが少し低い声でそう言った。




