第1話 クルシア
「すげぇ…」
頭の中で思い描いていた異世界と同じで、俺は結構興奮していた。生前、日本にいた時も、たまに異世界に行きたいと思うことはあったが、まさか行けるとは思わなかった。
(俺はまだこの世界のことを何も知らないし、とりあえず色々聞いてみるか。)
幸い言葉が通じ、この世界の文字も理解できるので、俺は周りにいる人にこの世界について聞いてみることにした。
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「ふぅ」
色々な人に聞いて、なんとなくこの世界のことがわかった。
この世界はクルシアと呼ばれているらしい。約1400年前、勇者クルスがどこからかやってきた悪を何処かに封印した英雄であったため、この世界の名前をクルシアにしたらしい。
その封印された悪というものがどういう奴なのか詳細はわからないらしい。まぁ1400年前だしな、仕方ない。
ちなみにここは世界の中央らへんにあるレイルという街らしい。
他には、この世界の宗教についてだ。
この世界には、三大宗教と呼ばれるものがあり、一つ目がリーン教。西の方に広く分布しているらしい。教えが厳しく、教徒もお堅い人が多いらしい。ちょっと西の方には行きたくないな。
二つ目がデイゼン教。この宗教は東の方に広く分布していて、リーン教とは逆に教えは緩くいい加減らしい。こっちはこっちでなんかヤバそうだな。
このデイゼン教とリーン教は対立しているらしい。ていうか、教えの厳しいリーン教が教えの緩いデイゼン教が一方的に嫌っているらしい。
三つ目がルーシュ教。この宗教は北国に総本山を置いているらしい。教徒が多いわけではない。しかし、三大宗教の中で唯一軍事勢力を保持しているらしい。ルーシュ教徒は北の方にしかおらず、他の土地には行かないらしいので、ルーシュ教徒以外は詳細をよくわかっていないらしい。
ちなみに、この世界の中央や南には宗教はあまり分布しておらず、全員が全員何かの宗教の教徒というわけでもないらしい。
また、この世界の種族についてもわかった。まずは人族。この世界の人口の大部分を占める種族だ。世界のいろんな土地にいるらしい。
そして獣人族。人と動物が混ざったような種族で、獣人族の中でもいろいろな種族がいるらしい。
あとは魔族。魔族と言っても、魔物と人の混ざったような種族から、魔物までと、一口に魔族と言っても範囲は広い。
その他にも種族はいるが、この世界の人口のほとんどはこの3つの種族で占めているらしい。
また、獣人族は森の多い南のほうに多く暮らしていて、魔神族の主に人と魔物の混ざったような種族は寒くて山の多い北の方に多くいるらしい。
そんなところを総本山とするとは、ルーシュ教もいろいろと大変なのかもな。
俺が近くの人に聞いてわかったことはこのくらいだが、そういえば、他にも聞きたいことがあるのなら、冒険者ギルドに行けと言われたな。
冒険者ギルドの依頼をこなしたら金も貰えるらしいから、俺は一文無しで何も持っていないし、とりあえず冒険者ギルドに行ってみるか。
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「ここが冒険者ギルドか。」
冒険者ギルドは、頑丈そうなレンガでできていて、生半可な攻撃では壊れなさそうな建物だった。
さて、ここでまずは何をすればいいのだろうか。とりあえずカウンターにいるギルドの職員にでも聞いてみるか。
「あのぉ~、すみません」
「はい、何か御用でしょうか?」
「俺はここに初めてきたんですが、どうやったら依頼を受けられるんですか?」
「初めての方なのですね。このギルドでは、まず、ご自分の能力を確認していただき、それを参考に、職を選んでいただきます。そして、自分の冒険者ランクにあった依頼を受けられます。ちなみに、冒険者ランクは一番下が1、一番上が10で、自分のランクと、自分の上下1ランクの依頼は受けられます。」
なるほど、受けられる依頼は限られているのか。
「それでは、最初にご自分の能力を確認していただきます。こちらのカードに、ご自分の名前を書いて頂き、魔力を込めてください。」
そう言って、職員に薄い石のようなものでできたグレーのカードを手渡された。とりあえず、カードの名前を書く欄に名前を書いたが、魔力を込めるとはどういうことなのだろうか。
「あのぉ、魔力を込めるって、どうやればいいんですか?」
「そちらのギルドカードに手をかざして、神経をてのひらに集中させれば、自分の能力がギルドカードに浮かび上がってきます。」
なるほど、掌に神経を集中させる、か。
よし、やってみるか。
深く深呼吸をして、
「すぅ〜、ふんっ」
てのひらに神経を集中させた。何かがギルドカードに吸い取られるような感じがした。
そして、ギルドカードがパァァッと光った。
光が消えたあと、もう一度ギルドカードを見てみると、自分の力や運などが数値として出ていた。
えーっと、力が31、運が43、体力が34、知力が18か。これはどのくらいなのだろう。
そして、えっと、魔力が……340?なんか魔力だけめっちゃ高いな。
まあよくわかんないし、職員にギルドカードを見せてみるか。
「あの、俺の数値はこんな感じなんですけど。」
「なるほど、お客様は、力や運、体力、知力も残念ながら平均以下のようです。しかし、魔力が340とは非常に高いですね。お客様は初めてのようなので、説明させていただくと、魔力は、ご自分の魔法を使える回数に影響してきます。魔力が高いほど、魔法をより多く使えたり、より高度な魔法を使えたりします。ただ……」
「ただ、何ですか?」
そう聞くと、職員は残念そうに話し始めた。
「お客様はご存知ないかもしれませんが、戦闘などにおいて、魔術師は近距離で戦う戦士などに比べて圧倒的に劣るのです。なので、攻撃、補助系統の魔術はほとんど使われず、魔術師はほぼ回復専門の職として扱われます。しかし、お客様の場合、知力があまり高くなく、知力が高くないと使えない回復魔術が使えません。」
「つまり、どういうことですか?」
「魔力以外のステータスが低いお客様は、攻撃、間接専門の魔術師になるほかないのです。」
そうか…なんかステータスが数値に出て、低いとか言われると悲しいな。
でも、ほかになれる職がないならしょうがないな。よし、魔術師になろう。
「わかりました。じゃあ、俺は魔術師になります。」
「かしこまりました。ではお客様は今日から魔術師です。」
そう言うと、職員は俺のギルドカードに向かって何やらブツブツと唱え始めた。すると、ギルドカードの俺の名前の隣に、魔術師という文字が浮かび上がった。
「よっしゃあ、今日からバンバン依頼をこなすぜ!」
「その前に、お客様、その服装だと冒険者と言っても笑われるだけですよ。」
そう言われたので、俺の服装を見おろすと、
「あ」
そういえば、俺は散歩中に異世界に来たので、上下ジャージだった。でも俺は今、金も何も持っていないしな。
「えっと、おれは今金を持っていないんですが、どうすればいいですか?」
「お金を持っていないのなら、、特別に、安物ではありますが、魔術師用のローブと杖だけ差し上げましょう。」
そう言って、カウンターの奥に行くと、しばらくして、何かを持ってこっちに戻ってきた。
「こちらでございます。」
そう言って、俺に、黒いローブと、白いカッターシャツのようなもの、青いズボンと90センチぐらいの短い杖を手渡した。
「ありがとうございます。」
「そちらを身に着けていただければ、お客様も冒険者らしくなると思います。では、よい冒険者生活を。」
ということで、俺は、弱いと言われる魔術師になった。