第14話 防護魔術
「えっと、ページがボロボロで読みづらいな。」
俺は昨日、本屋で偶然日本語で書かれた本を見つけた。まさか俺と同じようにこの世界に来た日本人がいるとはな。とても驚いたし嬉しい。
だが、本を見てみると、ボロボロで最近書かれた本ではなさそうだ。なので、残念ながらこの本を書いた日本人はもうこの世には居ないのかもしれない。
本を開くと、筆者のたわいない話が書かれていて、日記のようだった。
どうやら、この筆者は、日本にいた時に、若くして交通事故で亡くなったらしいが、俺と同じようにアルシュタインという神によってこの世界に召喚されたらしい。
と、この本を読んでいると、内容が少し変わった。本題のようだ。
その本には、こう書いてあった。
−−−
俺がこの世界にやってきてから3年くらい経っただろうか。
俺は魔力が他の人間より高かったので、魔術師になった。そして、魔術を駆使してさまざまな魔物を倒し、莫大な金も手に入れた。
だから、俺は魔力が高いのを生かしてこれからは山奥でひっそりと魔術の研究でもすることにする。そして、成果が出るごとにこの本に記録しておくことにする。日本語を忘れないようにするために、この本は日本語で書くことにする。
俺は前世からそういうことが好きだったので、楽しみだ。
−−−
まず、何について研究してみようか。
そういえば、昔この世界には詠唱をせずに魔術を撃てたという魔人族がいたらしい。俺もそれについて研究してみるか。
−−−
(詠唱をせずに魔術を撃てた魔人族っていうのは、多分フィリルのことだろうな。
まあいい、続きを読んでみよう。)
−−−
無詠唱の研究を始めて1ヶ月ぐらい経った。どうやったら無詠唱で魔術を撃てるのか分からない。そもそも、詠唱はどのような役割を果たしているのだろうか。
−−−
詠唱の役目が分かった。どうやら、詠唱をすることにより、自分の体の中にある魔力が魔術となり、外に放たれるらしい。
でも、適当な詠唱では魔術は放てない、大昔に魔人族の始祖が魔術をあみ出し、それぞれの魔術に決まった詠唱を作ったらしい。
だから、適当な詠唱を言って魔術を唱えても、魔術は撃てないということだ。
詠唱の役目がわかっただけでも一歩前進だ。
−−−
研究を始めて半年ぐらい経っただろうか。
なぜその魔人族は詠唱なしで魔術を撃てたのだろうか。
その魔人族にだけの特別な力でもあったのだろうか。
最近、研究はあまり進んでいない。これからは、魔術の研究だけではなく、自分で実践してみよう。
−−−
研究を始めて結構経った。どのぐらい研究していたかはもう数えていない。
そんなことはどうでもいい、俺は新たな魔術をあみ出した。いや、新たな魔術なのかはわからないが、少なくとも、俺はこの魔術を他では見たことがない。
自分の周りに結界を張り、魔術や物理攻撃から身を守る魔術、名付けて防護魔術だ。
以前無詠唱で魔術を撃とうとして手に魔力を込めていたら、俺の周りに何か光る壁のようなものができた。
手に魔力を込めるのをやめると、その光る壁は消えた。
俺はもう一度手に魔力を込め、光る壁に向かって魔術を放つと、撃った魔術は光る壁に当たって消えた。
また、それに向かって石を投げてみても、その壁に当たると石は地面に落ちた。
これは大きな発見なのだが、もう俺は外で魔物と戦うつもりはない。一生不自由なく暮らせる金は手に入れた。
だから、俺にとってはあまり実用的とは言えない。
かといって、他人に教えるつもりもない。俺だけの魔術だ。
−−−
防護魔術について新しく分かったことがある。
どうやら、魔術や物理攻撃をこの防護魔術で防ぐには、その攻撃よりも大きな魔力を込めないと防げないようだ。
だから、魔力の低い人間はこれを使えたところで何の役にも立たない。
しかし、俺みたいに魔力が異常に高い人間が使うと、チート級に強くなるだろう。
もうこの魔術の研究にも飽きたし、新しい魔術の研究でもしてみるか。
あと、日記を書くのも面倒くさいので、ここで終わりにする。
−−−
なんか唐突に終わったな。
だが、この本に出てきた防護魔術というのは、試す価値はありそうだ。
「ショータ、その本読み終わった?」
自分のベッドの上で暇そうに足をブラブラさせていたエレアが言った。
「ああ、ちょっと面白い魔術が書いてあった。今から街の外に行って試してみよう。」
「面白い魔術?なにそれ?」
「街の外に出たら教えるよ。」
「分かった。楽しみにしてるね。」
俺達が外に出ようと準備をしていると、
ガチャっと扉が開いた。
「うん?お前たち帰っていたんだな。」
ガイエルが戻ってきた。ナイスタイミングだな。物理攻撃も防護魔術で防御できるか試してみよう。
「ガイエル、いいところに来た。今からこの本に書いてあった面白そうな魔術を試してみようと思ってるんだ。ちょっと街の外に出てみよう。」
「面白い魔術?よく分からんが行ってみよう。」
「よし、じゃあすぐに出発しよう。」
新しい魔術を試すのはワクワクするな。
そんなことを考えながら、街の外へと向かった。




