第9話 初の迷宮探索
「よし、準備は整ったな?」
「うん。」
「ああ。」
昨日のエレアの意見で今日は迷宮探索をすることに決めた。
ということで、アラストロ周辺で一番深いと言われる迷宮に来た。
この迷宮は、ここらへんで一番深いということもあり、すでに多くの冒険者達に踏破されてきたらしいが、最近、この迷宮に入っていった冒険者が帰ってこないという噂がある。
だから、その噂が広まってからほとんどの冒険者はこの迷宮には寄り付かなくなった。
魔物はもちろんいるが、その冒険者達もかなりの手練だったらしい。だから、そいつらの捜索も兼ねてこの迷宮に決めた。
しかし、俺たちも二の舞にならないように気をつけないとな。
目の前には迷宮の入り口の階段がある。石段は少しずつ欠けていて、なんか怖い。
「よし、じゃあ行くか。」
「うん、私が明かり用の松明を持つね。」
「俺が先に行こう。」
ガイエルが先導し、俺達は迷宮の入り口の階段を降りていった。
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地下の3階ぐらいまで降りてきた。まだ魔物は出てきていない。
「なあ、ここってどのくらい深いんだ?」
「そうだな、ここらへんでは一番深いから、20階層ぐらいじゃないか?」
「じゃあまだまだってことだな。少しペースを上げていこう。」
そんなに何日も潜るわけにもいかないしな。
そんな事を考えていると、
「うん?」
後ろの方からカサカサと音がした。振り返ってみると、紫色の1メートルぐらいの小さめの悪魔のような魔物が3匹いた。
「む、魔物だ。俺が前に出る。お前たちは奴らに幻惑魔術をかけろ。」
「わかった。じゃあ俺が⋯」
「私がかける。迷宮に行きたいって言ったのは私だしね。」
エレアがそう言い出した。
「わかった。幻惑の下位でいいからな。」
「うん!」
エレアは大きく頷き、
「愚かなるかの者を我が幻で戦慄させん フルゴーレ!」
しばらくすると、魔物が全員唸り声をあげて怯え始めた。
「よし、俺が行く。」
ガイエルがそう言い、魔物に斬りかかり、一瞬で全員を一刀両断にした。
「グギャァァ!!」
魔物が大きな声を出して、その場に血を流して倒れた。
「弱い奴らで助かったな。後ろからも魔物が湧くかもしれん。後ろに気をつけろよ。」
ガイエルが言った。改めてガイエルは強いし、頼りになるな。
「あぁ、わかった。じゃあ、俺が後ろを警戒しておくよ。」
俺が後ろにいき、ガイエル、エレア、俺の順に進みだした。
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13階層ぐらいまで来ただろうか。魔物の数もさっきより増えてきた。何となく、出てくる魔物もさっきよりも強くなったような気もするが、ガイエルの指示に従って行動していて、俺たちも魔術は上位までは普通に使いこなせるので、苦戦はしない。
「、ガイエル、そろそろ休憩しよう。疲れてきたんじゃないか?」
「うん、私も疲れてきたし、ここで休憩しよう。」
「そうだな。だが、警戒は怠るなよ?」
ガイエルはとても頼もしい。本当に俺との年の差は1歳だけなのかと仲間になってまだそんなに経っていないが、何度も思う。
「ああ、わかったよ。」
そう言い、地面に腰を下ろす。少し湿っていて、コケも生えている。よく見ると、色々な虫がカサカサと動いていて、ちょっと気味が悪い。
「この迷宮で冒険者達が消えているんだろ?」
「まあ噂ではあるがな。もし消えていたとして、そいつらがこの迷宮の何処かにいるのか、それとも別の場所にいるのかも知らん。」
ガイエルが答えた。
「まあ、見つけたらでいいだろ。」
「そうだな。」
「⋯よし、そろそろ行くか。もういいだろ。」
「うん、早めに終わらせないとだしね。」
俺達は最深部へと向かった。
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「うん?なんか雰囲気が変わったな。」
18階層ぐらいまで来たが、次の階層へと続く階段がある部屋だけ、何かこれまでとは雰囲気が違った。
「そろそろ最深部ということだろうな。」
「そうなのか?」
「ああ、最深部の近くは魔力が強い。だからその魔力に誘われて強い魔物も多く集まるらしい。」
「ふーん、そうじゃあ気を引き締めないとだな。」
そう言い、俺達は最深部へと続く階段を降りていった。
最深部の階段を降りると、降りたところから少し遠くに、大きな扉が見えた。
「うん?何かあるぞ?」
その扉の手前に、何か光っているものが見えた。
「あれは魔法陣だな。む?魔法陣の上に誰かいるぞ。」
近づいてみると、紫色に光る魔法陣があった。そして、その上には、冒険者らしき人達が倒れていた。全員意識はなさそうだ。
「おい、大丈夫か!?」
そう言い、俺が倒れている冒険者を助けようと、魔法陣の中に入ろうとすると、
バチッと音がし、魔法陣から弾かれた。
「魔法陣の中には入れないぞ。」
「ねえ、回復魔術も効果がないよ。」
エレアが冒険者に回復魔術を唱えていたが、これも魔法陣に弾かれたようだった。
どうすればいいか悩んでいると、ガイエルが、
「⋯これは何者かによって魔法陣に閉じ込められているのだろう。」
そう言った。すると、どこからか、
「ピンポーン、正解だ。」
どこからか、不気味な声が聞こえた。
「おい、誰だ!?どこにいるんだ?」
俺が叫ぶと、
「まあ焦るな、いま出てきてやるから。」
さっきの不気味な声がまた聞こえ、しばらくすると、俺達が降りてきた階段の方から紫色の霧がかかり、その中から、耳と髪が長く、顔が紫の人のような奴が現れた。
「やあ、はじめまして、そして御名答。僕の魔法陣の効果を当てたそこの戦士くん。」
謎の人間らしき奴はそう言った。
「お前は…誰だ?」
俺がそう尋ねると、
「僕の名は、今は封印されし魔王の直属の配下五人衆の一人、フィリル・ベレーゲンさ。」
そいつは、そう名乗った。




