青春の邪魔者
目の前にいきなりピンクの色合いでまとめられた、ミニブーケが差し出された。
顔を上げると、目の前にブーケ、そしてそれを差し出す見知らぬ男の子。彼は、私を見て「誰?」という顔をした。
冬の夕方、私は夫と光のイベントを観るために、待ち合わせをしていた。ショピングモールの高いガラスの屋根の下、太陽はとうに落ちて暗くなっていたが、ショップの光とイルミネーションで周りは明るかった。
待ち合わせにはまだ早かったので、花屋の角を曲がって化粧室に行った。軽く化粧直しをし、鏡で全身を見てから待ち合わせ場所へ行こうとした。ブーケを差し出されたのは、ちょうど花屋の前を通りかかった時だった。
男の子の後ろ側、ちょうど彼を挟んで私の反対側に、私と同じくらいの身長で同じような色合いの服を着た女の子が居た。
「間違えたんだな」と思ったが、声をかけるのも居た堪れない気がして、私はそのまま待ち合わせ場所に急いだ。
夫を待ちながら、彼の緊張と気恥ずかしさと、諸々の感情を想像して微笑ましい気持ちになった。男の子、と書いたけれども二十代くらいだったので、正確には「男の人」だろう。でも心情的には息子と同世代の「男の子」だ。
昔、まだ結婚前の夫とデートで歩いていた時に、暴走気味の車が横を通りかかった事があった。
「危ない」と夫の頭の中では、華麗に私をかばって避けたつもりだったのだけど、振り返った夫が見たのは、砂利道から溝に突き落とされた私だった(幸い怪我はなかった)
そんな思い出が蘇った。
ブーケの彼も、誕生日か何かの記念日に、彼女にプレゼントするべくデートコースを考えて、色々と計画したんだろうな。でも計画にはハプニングが付き物なんだよね。
ごめんね。おばちゃん邪魔するつもりはなかったの。通りかかっただけなのよ。
あの二人はその後どうしただろうか?ピンクのブーケは無事に受け取ってもらえただろうか?そうだと良いな。
笑い飛ばして受け取ってくれるような彼女ならきっと楽しい思い出になるよ、と思いながら私は、やって来た夫に手を振った。