ラクリマの村を歩く 1
「おかね、いっぱい」
キラキラ。
沢山の金貨を前にフロスは目を子どものように輝かせている。
ネクロマンサーを倒した報酬により、大量の金貨をもらった。
手元に残ったのは金貨×52、銀貨400、銅貨いっぱいとネクロマンサーが使っていた杖、ナイフ、アンデッドの体液で汚れたポケットたち。
とりま風呂に入りたい。汗と敵の血で汚れすぎ。
聞いてみるか
「受付嬢さん、ここらへんで浴場と宿ってありますか?」
「ええ、ありますよっ」
受付嬢は机上に引いてある村の地図に、スッと指を指し
場所を示した。
この集会所からどちらも近くにあるらしい。
「こっちが大浴場で、こっちが宿屋です。」
「まずは宿屋で荷物をおいて、それから、風呂に入ろう。」
コク
隣でもぐもぐしているフロスに俺は声を掛ける。
この状態のフロスは小動物のようで可愛らしい。
しかし敵との戦闘となると無言の無表情で敵をぶっ殺しまくる。
ギャップ「燃え」だね。
うん。焼却。
「フロス、それを食べ終わったら行くよ」
このセリフ...フロスの保護者だな。俺。
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カポーン
お湯に浸かる。
「ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙...」
世の中には理がある。重力があるから地面に引っ張られるし、赤と黄色はオレンジ色。
疲れた身体に風呂と睡眠は染み渡る。
まるであのときのアンデッドのような声を喉から出しながら、俺は湯船というなの気持ちよさの渦に飲み込まれぇ〜
っはっ
あぶね。
うたた寝しそうになってしまっていた。
今寝ちまいそうになったときに、母ちゃんの「あんたっ風呂で寝ないっ!」
という声が脳みそにこだました。
いやぁ。風呂という文化は実に良い。テルマエよテルマエ。
ローマの道は全てに全てに通ずる。
ん?逆か。
あぁぁこんなきもちぇえ時間が一生続けばいいのにぃ
…
……
…しかし改めて考えるといろんなことがありすぎた。
いきなり異世界に来たり、神というゴミカスろくでなしに出会うし、フロスによってアイデンティティをブレイクされるし。
はぁっ...本当に疲れた。
明日は依頼じゃなくて店を回ってみるとするか
宗助はザパッという音を立ててその場に立ち上がり、
椅子に座る、
手元のシャンプーの頭を押して手のひらに1.5プッシュほど出す。
俺はそれを泡立て、頭に持って行く。
ワシワシと音を立てて俺の髪の毛に泡が形成されていく。
丸一日洗っていないから気持ちいい。
って俺の風呂シーンとか誰にも需要ねえか。
俺は体を洗っていく。すると隣になんかおかしなおっさんが座って。
「旅の浪漫は、まだまだこれからだぜ...」
っていってきた。
なので俺は
「ふん、最後まで楽しんでやるさ。」
と返した。
「あぁ、これからの旅がより良いものになるか地獄になるかは、全て、お前次第さ。」
…
正直俺はこいつも俺も何言ってるかわからない、心の中二病に従順に従っただけだ。
俺は頭からお湯を被り、水滴をさっと払う。
そしてそのまま不敵な笑みをおっさんに向け、浴場をあとにした。
──────────────────
俺とフロスが歩いている。
向かう先はラクリマの村の宿屋。
体をきれいにした俺達はあと残りは寝るだけ。
そう。寝るだけ。
眠り、それは生命体本来の姿を取り戻す行為。
死というものは永眠とも言われるし、植物なんて脳みそがないから常に寝ているも同然。
そう。ただベッドの上に横向きになって目を閉じるだけ。
しかしなんだ。
今日の俺はただその行為を人生の中で最も欲しているではないか。
それはなぜか。
そう。
_人人人人人人人人人_
> 疲れ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
それは、運動を行うモノ全てに約束された出来事である。
ものは使うと劣化する。エネルギーを消費するとその分人も疲れるのだ。
このとき羽村宗助は、この丸一日(飛ばされたのが深夜1時、来たのが昼の2時、よってほぼ寝ていない。)の疲れのピークに達していた。
よって目をドロドロさせながら意味不明なことをぼーっと考える機械に成り果てた。
「──チカ─レタ─」
「...」
それにフロスはこちらを労うような視線で見て、
「っ!?」
宗助の両脇を抱え、俵を担ぐように持ちあげ、速歩き気味に動き出した。
夜で人が少ないからと言って少女に担がれるのは流石にはずかs
「そうすけ、がんばった。」
「...あぁなんかもう、世間とかどうでもいいや。」
異世界生活9時間程度、ついに宗助さん、プライドを捨ててしまう。
そうなぜなら、今の彼は、疲れているからっ!
(今のセリフ絶対受付嬢さんが読んでるだろ。)
受付嬢さんの名前募集します()