俺と彼女の物語
「八つの龍の話を知っているか?」
「そいつは俺も知らねぇな。」
イグニスは言った。
続けてシンは
「もともとこの世界には龍神がいた。しかしむかしの人類はそれに脅威を見いだしたのか、とある剣を使い、龍神の力を八に分断した。」
「それが今の世界の八龍たち及び破龍。」
「そして龍神を斬った剣は今もこの世界に存在するという。」
「そして龍たちはそれぞれこういう。炎龍、風龍、水龍、雷龍、破龍、地龍、死龍、龍王の八つ。」
「たしか破龍の序列は三位。」
「それでたしか、この伝承にはつづきがあって、八龍以外にも龍族はいて、その中から、人のカタチをした片角だけの龍のなり損ないが生まれるということ。」
っ!!?
「その子供はやがて八龍の力を奪い、完全なる龍神の再臨となる。」
え!?それって
俺は隣に目を向ける。
「...」
フロスは黙ったままだ。
「ん?お嬢ちゃんがどうかしたのか?というかそんな深くフードを被っちまって、前が見づらいんじゃないか?とってみな。」
イグニスがフロスのフードに手を伸ばす。
「ああっ!俺ら今から依頼受けるんだったぁ忘れてたぁ。」
「フロスっ!いくよっ!」
俺は大きな声を出してその場をごまかし、フロスの手を引いて受付へ向かう。
「...?」
「なんだ?急に?」
────────────────────────
「おい、嘘だろ...」
その伝承の正体ここにいるんですが?...
いやまて、いくらなんでもこいつが正体であると決まった訳では無い。
フロスは隻角で腰には尻尾が生えている。だがしかしその忌み子とやらがフロスである証明にはならない。
つまりこうだ。
隻角で尻尾がある=フロス≠忌み子の伝承
なんじゃないかということ
そうだそうに違いない俺はそう信じている。
「な、なあフロス。」
「あんな話知らないよな?破龍なんか興味ないよな?...」
「...」
フロスはまるで憂いている様に下を向いた。
…
。。。
、、、
。、。、。。。....。、...。..。、。、
ッスーーーーーーー
いやこれ確定じゃん。これフロス忌み子やんっなんで?
運がいいのか悪いのかさっぱりなんだけどもうなんで?これもなにもかもあのクソろくでなしのゴミカスクソカス神(笑)の仕業なのかっっ!!!
「ああっクソっ」
俺はその場で足踏みする。
んん...いやまて。一度落ち着こう。もし仮にあの伝承の内容が本当のことであるとするのなら、フロスは最終的に龍神になるってことだ。シンは確かに「龍神の再誕」と言っていた。それはつまりあのボケに反逆の一矢を報いるポテンシャルがあるということなんじゃないか...?
逆に考えるんだ...あげちゃってもいいさと...。(?)
いくら考えてもフロスが忌み子じゃないと証明する方法はない。
なら今やるべきは、破龍とやらと会うことだ。破龍とフロスが何かがあって破龍の力を彼女が行使できるようになった時点でその伝承は確定だ。
いろんなことが脳を錯綜させる。
「...」
「ソウスケ、わたし、わるいこ、かな?」
フロスは少し顔に影を落としていった。
よく考えたらフロスはまだ大人にすらなっていない。
年端もいかぬ女の子が忌み子、忌み子と言われるのは耐えられないだろう。
俺はフロスの気持ちを考えずに忌み子とか言ってしまっていた。
「フロス...君の過去を...教えてくれるか...?」
「...うん...」
「わたしは...」
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…
……
………
「こいつ人間じゃないか」
「その癖角と尻尾だけ生えてるぞ」
「気持ち悪い」
「死ね」
………
……
…
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フロスは過去を話した。
結論から言うと彼女は伝承の忌み子で、同じ龍族から迫害され追放されて此処に来たらしい。
今俺のかけるべき言葉は...
「フロス、お前は同族に虐げられて今まで生きてきた。」
「そうだろ?」
「俺はな、昔からずっと一人だった。」
「俺とお前は同じだ。」
俺は彼女の境遇と自分の過去が重なり、放っておけなかった。
「だから、俺はお前の味方だ。一緒だから絶対裏切らない。」
「友達、な。」
「やり返しに行こう。」
────これは俺と彼女の
復讐譚だ。
ちょっと今回しんみり気味ですね
これが彼女たちの物語です。