襲撃
うっぷ...おぅぇぇ...
集会所で酒を飲みすぎたシンは口から食べたものを吐き戻していた。
「ははっ大丈夫か?」
そしてそれをイグニスは背中をさすってあげている。
そう。シンは思いの外アルコールに弱いのである。
「こ、この程度、己は屈しないzうっ」
おぐぅぇぇ...
シンがそう言おうと顔をこっちに向ける。
そのせいでシンの戻したものがイグニスの足の裏に流れてくる。
「」
「おい...」
「この靴かなり高かったんだけど」
「すまぬ...」
イグニスは集会所の裏でリバースしまくっているシンを放って、
歩き出す。
「ふぅ」
「ダンジョンで手に入れた金のおかげで当分は困らなそうだぜ。」
…
「...誰だ。」
「ついてきているのはわかってんだ。」
イグニスは虚空に向けていきなり話し始めたように見えたが、
言葉を言い切ると同時に、十数m先に、黒い鎧の上に黒い布を被った、怪しげな人間が現れた。
それも高いところから降りてきた?着地する瞬間しか視えなかった様に感じた。
なのに何も音が聞こえなかった。
「ふむ、流石の観察眼。我らにいつから気づいていた。」
「シンが吐いちまった辺りからだ。」
「吐く瞬間を見たがる変人なんておかしいだろ。」
「最初からか。まあ我々の目的は貴様らではない。」
「なに?...」
ではなんで俺達をストーキングしてんのか。
しかしただものじゃねぇことは見た目の時点で伝わっている。
ということは目的もろくなことじゃない。おそらくは。
「俺たちじゃねえってことは、何か物がほしいのか?それとも違う奴らが目的か?」
「大人しく話すとでも?」
「なら、力づくで」
「口を割る。」
「炎よっ!!」
斧に炎が纏わりつく。そしてイグニスは走って黒マントに近づき、
斧を振り下ろす。
ガッ!!
がしかし、
見た目通り身軽なのか、あしらうかのように後方に躱される。
そしてマントの布の中から鋭利な刃物があらわれる。
その刃物は逆手に持つ用に手前に刃が曲がっている。
月光が刃に反射し、その存在を示す。
そして逆手の刃はイグニスの腹部を襲う。
が、間一髪イグニスは斧で弾いた。
ガギンッ!!
そして激しい打ち合いが始まる。なんどもなんども打ち合う刃は
その度に苛烈さを増していく。
「ハァッ!!」
そしてイグニスは打ち合いの最後に大きく相手の得物を弾き、
相手の胴に一閃しようとするが。
「フッ...」
黒マントは狡く、怪しく、賢しげに笑った。
そしてそこで気づく、
(もう1人っ!!頭をかばいきれねえッ!!)
イグニスの頭上から、
もう一人の刃が襲う。
───ガン!
しかしそれはイグニスのはるか後方から飛んできた氷の槍に妨害された。
「何者ッ...」
「己を仲間外しにするとは、」
「楽しみを独り占めするつもりか?イグニス。」
シンがあおい目を開き、ゆっくり歩いてくる。
「はっ今十分美味しいところとったじゃねえか」
「貴様、何者。」
「であればお主の方から名乗るのが道理であろう?」
「フン、貴様はシン・アストルムか。まあいい。」
「我々の目的は貴様らではない、始末できたらより良かっただけのこと。」
「逃がすとでも?」
ガガガガガッ!!!!!
凄まじいラッシュが始まる。
「っ!!」
「はっ!?」
いきなり煙幕が張られる。
「逃げる気か!?」
「逃さぬ...!」
しかし煙が無くなる時にはすでにいなかった。
「なかなかやるようだな。その強さに免じて私の名前を教えてやろう。」
「私は〈龍の信仰者達〉通称ルーツ・ノヴァのノックスである!!」
「龍の」
「信仰者達だと!?」
「ま、待てっ!!」
「フフ...フハハ...アァッハッハッハッハッ!!!!」
◇
「───ワムラソウスケ、そしてフロス。」
「貴様らは始末せねばならん。」
「この〈龍の(ルーツ)信仰者達〉、第10席」
「ノックスが...。」
白髪が揺らいでいる。
龍の信仰者達。何者なのか。




