雨は止み、太陽を浴びて、花は咲く。
前回のあらすじ。
需要ない吸血鬼×人のBL。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺は店の棚においてある靴を眺めている。
なんでかって?
「フロスは靴を履いていないんだ。」
俺は虚空に向かってつぶやく。
事実、彼女は出会ってからずっと裸足でいる。
森なんかに行ったりするとあの白い足が赤くなっていく様は
見てはいられない。
だから初対面のときに助けてもらったときの礼を込めて靴をあげようと思う。
…これなんてどうだろうか。
シンプルなブーツだが、かなり頑丈そうで、脚力で壊れたりしなさそうだ。
足のサイズは出る前に大体のサイズを確認しておいた。
まあブーツなら大きくても紐をしめたら履けるだろう。
まあ第一候補にしておこう。
んでもう一候補選ぶとして、店の人におすすめを聞こう。
そうしよう。双子葉類。
…死ね。
「あのすみません、頑丈で、強い脚力に耐えられてシンプルな見た目の靴ありますか?」
とりあえずこの三拍子が揃っていれば問題ない。
「でしたらこちらなんていかがでしょう」
俺の目の前に差し出されたのは鉄でできた、騎士のすね当てのようなブーツだった。
…センスねぇな。
たしかに三拍子揃ってるけど...
「...ええと、ちょっと極端すぎますね...」
「そうですかぁ?素敵だと思ったんですけど?」
これが?こんなゴテゴテしいのが?
あとその「自分のセンスがおかしいっていうんすかぁ?」みたいなカオやめろっ
「やっぱりこれで...」
俺はさっきのブーツを差し出し、引きつった顔のまま言う。
「はいはぁい。お買い上げありがとうございまぁす。」
俺はチッと舌打ちし、靴屋を離れた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺は宿の部屋のノブに手を掛ける。
時刻は昼の1時。
大体9時に出たので、4時間外に出ていた。
中に入ろうと、ドアノブを回
「───うぅ...ぐすっ...。」
ゑ?
俺は反射的に扉を開け、中に入る。
???
そこにはフロスが泣き崩れている姿があった。
なにゆえ?
「...フロス。」
俺が声を掛けるとフロスは振り向き、そのままこちらにすごい勢いで抱きしめてきた。
ギュッ
「どうしたんだフロスっ!?」
脳に浮かぶ言葉がそのまま出てくる。
それは彼女が涙を流している状況に関する焦燥からくるものだろう。
「...うぅ...おきたらいなくて...すてられたと、おもった...。」
「まえ、みたいに...また...ひとりだと...おもったら...ぐずん...」
「...」
なるほど。フロスはまた1人になることが怖いのか。
俺が
『お前と同じだよ』
『だから裏切らない』
と前に言っておきながら嘘ついていなくなることが泣くほど恐ろしいんだ。
俺はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「フロス。」
「俺はここにいる。」
俺は彼女の体を抱き返す。
「お前の周りにいた奴らなんかと違うって」
「それを一番知ってんのはきっとお前だろう?」
「...ぐすっ...うん。」
事実俺前の世界では友達いないから本当にそうである。
そして俺は買ってきた靴を袋から取り出し、
「なあフロス、俺はお前に贈り物を用意したんだ。」
「お前、裸足で森なんか行くと痛そうだったから。」
俺はフロスに靴を渡す。
するとまるで大輪の花のようにパァッとフロスの顔が晴れた。
「...ん...ありがとう。」
フロスはブーツを抱きしめ、晴れ上がった空を思わせるようなとびきりの顔で
笑った。
───止まない雨はないし、明けない夜もない。
曇ってしまったならまた晴れればいい。
俺は笑顔を返す。
「またにげたらゆるさない。」
「逃げてねえよっと」
雨が降れば植物に水を与えなくてもいい。
太陽を浴びて植物は1人でも生きていく。
そうして花は、
綺麗に咲いていく。
これは復讐譚。
しかし同時に喜劇でもある。




