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由美はクラスの女子と共に教室の隅のほうでなにやら話している。
「げっ、他にも人がいるのかよ。うーん、どうしたものか・・・」
流石に人前で謝るということは、なかなか出来ない。問題は、どうやって由美だけをこちらに来させるかのだが・・・。
(アイツはいったい何をしているんだろう?)
良く判らないが、学のヤツがなにやらこちらをチラチラと見ている。
まあ、用があるのは明らかに私なんだろうが、朝の一件もあるし、ここはあえて無視することにしよう。うん。
と、学のことは視界からはずし談話を続ける。
そうして、私が学を無視すこと五分、これだけの時間がたったというのにヤツはまるでそこに根でもはったかのように立ちこちらを見ている。
(ダッー。なんなんだあの男は!!ずーと、こっちをチラチラ見て。うざったい!これだけ無視してるんだからいいかげんどこかに失せなさいよ!)
イライラしてか、つい足を小刻みに揺らし始める。
「えっと、由美どうかした?なんかイライラしているみたいだけど」
さすがに、私のあからさまに変な態度に気づいたのか、話し相手、北沢夏木が、そう聞いてきた。
「ああ別に、たいしたことじゃないわ。なんか視界に害虫がはいって目障りだっただけ」
(そうさ、あんなヤツ害虫だ)
そんな私の態度に夏木はなぜかにんまり笑って、
「ふーん、なるほど。その害虫って大西君のことでしょ?」
と言ってきた。
その思いがけない言葉につい体がビクっと反応してしまう。
「なっ、なんで」
「そりゃわかるって。だって由美がそんな風に冷たく言うのって大西君くらいしかいないじゃん。なに、アンタ達またケンカしたの?」
呆れたという顔で夏木が聞いてくる。
「別にケンカっていう訳じゃないけど・・・」
人に話すにはあまりにも馬鹿らしいく言葉が詰まる。
そんな私を見て夏木はハァーとため息を漏らしピンとデコピンをしてきた。
「もぉー、アンタ達これで何回目よ。まったく、毎度毎度飽きもせずよくするわね。どうせ今回も大西君が無神経なことを言ったんでしょうけど、もう由美も許しているんでしょ?」
「うっ、それはそうだけど・・・」
そう、実は言うと朝のことは私の中ではもう終っている。
いや今回だけじゃない、いつもそうだが私の怒りは一時的なもので、すぐに冷めてしまう。
だから何時もは、私が学のもとへ行きすぐに仲直りできるのだが、今日はつい感情的になりすぎて学の前で涙を流してしまったため、なんとなく話すのがはずかしく、今まで無視を続けているわけである。
「まったく、くだらない意地張らないで素直に仲直りしてくれば?由美だっていつまでもこんな状況じゃ嫌でしょう?」
「それは、そうだけど・・・」
こちらから会いに行くのは躊躇われると、目を伏せる。
そんな話をしている内に、覚悟をきめたのか学の方からこちらへむかってきた。
学はなにやら険しい顔でこちらを見ている。
険しい?いやこれはどちらかというと緊張しているような表情だ。
「あら大西君こんにちは、何か用?」
そう、私が聞く前に夏木が聞く。
「ああ、悪いけど北沢、由美と少し話がしたいんだ席、はずしてもらえねぇか?」
突然そう勝手なことを言う学。
「ちょ、アンタ何言ってんのよ。夏木こんなヤツの言うこと聞かなくて・・・」
いいからと、言う前に夏木は
「分かったわ、でももうすぐ休み時間も終わるし話は早めにね」
と言って席を立ってしまった。
「なっ、待ってよ夏木」「いいから由美はここにいて大西君の話を聞きなさい。きっと仲直りできるから」
と、小声で囁き夏木は去ってしまった。




