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部屋中にも割と立ち込める火薬臭、それは体育祭などでよく嗅ぐスターターピストルのそれによく似ておりこれが本当に銃、人の命を奪う道具なのかが疑わしく思えた。
けれど、ポタリポタリと床に滴る真っ赤な鮮血がそうではないことをひしひしと感じさせた。
グラリと体勢を崩し床へと倒れる体。
頭から落ちたのかそれとも手をつき体を守る事ができなかったのか、あとに続くのはドサリではなくゴトリという鈍い音が二つ響いた。
そう2つ、つまり銃弾により倒れたのは一人ではなく二人だったのだ。
由美はその二人を交互に見つめる。
倒れたままピクリともしない橋本と明の二人を。
正直何が起きたのか由美にはわからなかった。
ただ銃声が二発響いたかと思えば明と橋本の二人が呻きそのまま貧血でも起こしたかのように倒れてしまった。
ただ今の状況を述べただけだがそれしかわからなかったのだから仕方がない。
由美の位置からではそこまでしか見れなかったのだ。
それが見えたのは彼らの真後ろに控えていた学と春華の二人だけ。
もっともその二人も顔面を蒼白にしており現状を理解できていないようだった。
「お、おい!」
恐る恐る学が倒れている二人に近づく。
橋本は微動にせず、その胸付近からは赤い液体が床ににじみだしていた。
明の方持ちこそ出ていないようだったがその体は人形の様に動かないでいる。
「明?」
そろりと手を伸ばし学はそこで初めて気づいた自分の手が信じられないほど震えていることに。
明の方をつかみ様子を見ようとその体を仰向けにしようとするが力が入らず手を滑らせるばかりだ。
なんとも情けない。
もちろんその間も明の名を呼び続けるが依然として反応はない。
どうしても思い浮かんでしまう最悪の結末、それを否定しつつも手の震えは収まるどころかより一層激しさを増してしまう。
落ち着こうと焦れば焦るほどより平常心が失われていくという悪循環。
そんな学の姿を見かねたのかいつの間にか隣まで来ていた由美が学に手を貸し、やっとの思いで明を仰向けにすることに成功した。
そしてそんな彼らを待ち受けていたのは全身にヒビが入りながらもいつものように穏やかな視線を向ける月神明の姿だった。




