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その瞳はどこまでも黒く、けれど決して暗くはない光を宿し、髪はこの夜空に溶け込むかのごとき柔らかな漆黒。
そしてその少女は何より美しかった。
ただ綺麗というだけじゃない、まるで美術品のように完成されつくされた美、女の私でもいいえ多分誰もが心を奪われるようなそんな一種の恐怖にも感情を抱いてしまう。
彼女はいったい何者なんだろうか?
ここら辺では見ない顔、外人さんのようにも感じるけど、まさか・・・。
「セナ、お前なんでこんなところに?」
あたりまえのようにこの超絶美人に話しかける学。
その光景は予想外な光景ではなかった。
私の知り合いでないとなればあとはここにいるのは学だけ、だからこの光景は想像できた。
出来はしたんだけど、なかなか堪えるわねコレ。
学がまさかこんな美人と知り合いだったなんて。
私としてはいおうなしに二人の関係が気になって仕方がないのだけど・・・まさかライバルなんてことにはならないよね?
「ねえ学、この人は?」
「うん、コイツはセナ。知り合いだ」
「で」
「いや、それだけだけど」
コイツ、マジか!!
いや確かにセナっていうこの人は学と知り合いみたいだからその説明に間違いはないのだけど。
「そんな適当な説明はないでしょ!簡略し過ぎだって、私が聞きたいのはその・・・二人が一体どういった関係なのかとか」
そう、一番気になるのはそこだ!
そこをきちんと説明してくれないと私としては色々不安になってしまう。
「そう言われてもな。オレもセナとはこうして町で会うだけであまり知らないんだよ。セナも自分のことは全く話さないし。それよりお前!またこんな時間まで一人でうろついて!女の子なんだから危ないだろ」
時刻はすでに九時過ぎ確かに今のこの街で一人で出歩くのは不安を覚える。
けど、私には学の心配は無用のように感じられた。
何でかは分かんないけど。
「私が何をしようと私の勝手だろ。お前に指図されるいわれはないよ。それに今は私より自分の心配をするべきだろ、大西学」
瞬間、空気が一変した。
「はぁ?」
「理解できない?そんなことはないだろ、だってお前たち今まさに命がけで逃げてきたんだろ」
驚きの余り声が出なかった、それは学も同じなんだろう、青い顔のままセナという少女を見つめている。
「なんで、お前がそんなことを」
行きつく先はそこ。
私たちが襲われたことを知っているのはあの場にいた私と学、そして明以外ありえない。
なのにこの子はそれを知っているという、つまりそれって・・・。
「お前、まさか!!」
明の仲間、共犯者。
「っ!!!」
由美を守るようにセナの前に立ちはだかる学。
ここにきて学は自分の愚かさに本当に腹が立っていた。
だってセナの行動はそのすべてが不自然だった。
初めて会った時から。
なのに何故今の今までその不自然さから目をそらしてきたのかと。
「―――――」
あたりに緊張がはしる。
そんな空気を、
「なんだ、そんな風に人を疑うこともできるんだな大西学」
何でもないかのように断ち切った。
「私はお前たちの敵じゃないよ。味方と思ってくれていい」
「それを信じろと言うのか」
「ああ、私が敵じゃないという証拠はないけど、それでも信じてくれるのなら協力はするし、大西学お前が何で命を狙われているかも私の知る範囲でなら答えてやる」
大いに頼もしい発言、けど何でセナはここまでしてくれる?
いや、それどころか・・・。
「なんでお前、オレが襲われる理由を知ってるんだよ。一体なんなんだお前は!」
疑惑と不安を抑えきれずセナへとぶつける学、けどセナはそんな学に呆れてしまう。
「まさか、今更そんなことを聞かれるとは思わなかったぞ。それはもっと初期、私と出会ったころに聞くべきことだったんじゃないのか?」
もっともな意見である。
彼女が怪しいのは最初っからわかっていたこと、それなのに美人で悪い奴には見えないからっとその素性を知ろうとしなかったのは間違いなく学のミスである。
だからこれに関しては何も反論できない。
「うっ・・・」
「まぁ、別にいいけど。どっちにしろ今からその話をしようと思ってたしな」
「それはどうゆう・・・」
「大西学、お前がこの現状を打破するには自身の真実そしてこの街の異常について知らなければならないということだ」
「オレの真実?」
それは明の言っていた、知らなくていいこと?
「――――――」
自身が知らない自分を知る、そこに恐怖がないといえば嘘になるし、その事実は決して自分にとって良いものではないということも理解している。
それでもセナの言うようにこの破綻した日常を戻すにはその原因を知らなくてはならない。
「どうする?私を信じてみるか」
大西学が望むものそれは今までの日常、ならここは信じるというべきだ。
けど、それでも煮え切れない理由がある。
彼女、白井由美はこの事件には無関係だ。
ただ、大西学を助けようとして巻き込まれただけそんな彼女をこれ以上巻き込んでもいいのだろうか?
本来なら家に帰らせるべきだが、明に狙われてしまった以上一人にするのはあまりにも危険。
「オレは・・・」
「聞こうよ学、私は大丈夫だから。学は知るべきだと思う」
言いよどむ学を由美はそうさとした。
そう、彼女も知りたかったのだ自分が気づいている町の異常について。
「由美、お前。・・・・・わかった、セナお前を信じる。だから手を貸してくれ」
その言葉を待っていたといわんばかりに笑うセナ。
「ああ、じゃあまず場所を変えようか」
そうして三人はさらに町の奥へと進んでいくのであった。




