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三章にはいります
3章
暗い暗い、とても怖いものを僕は知った。
「子供の頃って実際にはないことや、ちょっとしたことに恐怖するよなあれってなんなんだろうな?大人になるとそんなことないのに」
隣の席で酒をあおっている、くたびれたスーツを着た中年の男がそんなことを聞いてきた。
名前は知らないが、この居酒屋での飲み仲間だ。
「う~ん、確かにそうだな。子供の頃ってありもしないことに恐怖するよな。でもそれってやっぱり俺達大人より子供の方が想像力があるからじゃないのか?ほら、子供ってさ、すぐ楽しいこととかを想像して絵にかいたりするだろ。あれと同じで怖いこともすぐイメージできてしまうんだよ。だけど大人になって現実を知るうちに空想との区別がつくようになっちまった。ならもうそんな空想に恐怖なんてしないだろ。現実にある恐怖だっていちいち考える暇がない。それだけのことだろ」
その答えに男は酒を飲みながらなるほどと呟く。
「なら、いまだにそんな想像のできる奴は可哀そうだな」
「なんで?」
「だって、いまだにそんなありもしない恐怖にとらわれているって事だろ。やっぱ不幸だよ」
「そうかな?オレはいまだにそんなことに恐怖している奴がいるなら羨ましいが。だってそうだろ?そいつの心はいまだに子供のままって事なんだから。そんな奴はこんな灰色の現実を知らずに、まだ夢を見ながら生きていけるんだから」
「まあ、確かにな」
ふとテレビを見ると連続殺人事件のニュースをやっていた。
「またか、そういや、これでいったい何人目だっけ犠牲者?」
「さあな」
見ると男のグラスはいつの間にか空になっていた。




