2-21
体が重い、何だこれは?
そのあまりの息苦しさに目が覚めた。
「うっ」
視界に入る光に目を細める。
オレは、電気をつけたまま寝たのか?
広がるのはいつものリビング。
「ああ」
そういえば橋本が来た後、気分を悪くしてソファーでふて寝したんだっけ?
それにしても・・・・。
「なんでオレの上に座ってんだよ、かあさん」
「なんでって、ここはソファーでしょ。ソファーは座るものよ」
「今このソファーはオレが使ってんだけど」
「なら使っているアンタが悪い!!」
なんて無茶苦茶言うんだこの人は。
我がははながら目を覆いたくなる。
そう、今目の前にいるこの女性こそ何を隠そうオレのはは大西春華である。
見た目はロングヘアーでスレンダーな美人だがその外見に騙されてはいけない、中身は女王様気質のとんでもない性格、そのせいで息子はいるくせにいまだに結婚はしてない。
パシ、突如頭を叩かれる学。
「何すんだよ!」
「アンタ今何かアタシに対して失礼なこと考えたでしょ、それにその辛気臭い顔やめなさい。何かあったの?」
「なにもない・・・」
橋本のことは正直かあさんに話す気にはなれない。
「学、アンタはすぐ顔に出るんだから下手な嘘はよした方が良いと思うけど」
「・・・・」
「まあ、アンタがそこまで言いたくないならいいけどさ」
「ごめん」
「だからその辛気臭い顔をやめなさいって」
パシ、再び頭を叩かれる学。
「いてー、だから叩くなって」
「そんなことより学ー、おなかすいた~」
う~、とうなりながらオレにのしかかってくるかあさん。
やれやれ、これじゃあどっちが子供なのか分からない。
そんな母の姿を学は微笑みながら見守る。
「待ってて、いま温めなおすから」
ソファーから立ち上がりフラフラと眠気眼で台所へと向かって行く。
途中後方からかあさんの声がする。
「今日のご飯は?」
「鮭フライとサラダ、それに豚とトマトのスープ」
「おっほー、ヘルシーな感じでなかなかいいんじゃない?」
きゃっほーとソファーの上で歓喜のダンスを踊るかあさん。
本当、この人の精神年齢は小学校低学年で止まっているんじゃないかと思ってしまう。
そんなことを考えつつ調理を続けていると携帯の着信がなった。
なんだこんな時間に?
そんな疑問を感じつつ携帯を手に取る。
「うお!4件も電話きてるじゃん。しかも由美から。やべーな、寝てたから気づかなかった」
でも、いくら由美でも深夜三時にこんなに電話をかけてくるだろうか。
たいがい一回かからなかったら諦めそうなものだが。
それにこんな感じまえもあったような・・・・。
何か言い知れない不安を感じつつ電話を取る。
「もしもし」
「・・・・」
無言。
いや正確には酷く言葉に詰まっているように感じる。
「おい、由美なんだろ?どうしたんだよ」
「えっと、その・・・」
なんだろう、由美にしては声に覇気がない。
どうにも様子が変だ。
「おい!なにかあったのか」
「あの、学。お願いだから落ち着いて聞いて」
何なんだよその言い方。
なんで純が事故に巻き込まれたあの時と被るんだよ。
「なんなんだよ・・・・」
あたまはすでに警告を始めているこの先は聞くなと。
けれどなぜか携帯を手放すことはできない。
「じつは・・・・」
そして語られた、由美の口からその現実が。
「-」
ゆっくりとその場に座りつくす学。
異変に気付いた春華が呼びかけても身動き一つしない。
携帯の向こうでは由美が何かを叫んでいるがもはやそれも耳に入らない。
ただ頭の中で由美の語った言葉だけがグルグルとまわっている。
「水希が・・・水希が・・しんだ・・・水希」
呆然と呟く学。
ソレはもはや以前の大西学ではなくただの抜け殻にすぎないモノだった。
第2章 終




