2-13
人は窮地に陥った時、頭が真っ白になり自分でも何をしているのかが分からなくなる事があると言うが、どうやら私も今まさにその状態に陥ってしまったようだ。
一応言っておくが私には記憶障害の類の病気は無い。
無い、はずなんだけど・・・。
これはいったいどうゆうことなんだろう。
さっきまで私たちは間違いなく玄関ホールにいた、それは間違いないはず、けれど今は何故かラブホテルの個室まで足を踏み入れてしまっている。
薄明かりに照らされる部屋、明らかに怪しい雰囲気をかもしだしている。
この状況はどう見てもマズイよね?
チラリと横の大西君を覗き見る、今さっきまであんなに動揺していたのに今は平然としており欠伸なんかしている。
そんな態度に少しむっとする、なんでこの状況でそんなに平然としているのよ!もしかして慣れてるとか?
そんなことを考えてはイライラはどんどん増してくるしてくる。
けど、それに反比例するように頭は冴えてきてやっと冷静な判断ができるようになった。
「それにしても意外と綺麗な部屋ね」
余裕をかますような一言。
そうさ、別にクラスの男子とラブホテルに入ったからって何だというのだ、男女なんだからこ、こんな状況になったってしょうがないだろう。
別にいやらしいことをするわけでもないし(たぶん・・・)
そう変に自分を無理やり納得ずかせる。
私がそんな馬鹿みたいに自分に暗示をかけている頃、大西君はというと、なぜか部屋中を見渡しながら何かを探しているような動作を繰り返している。
そんな奇妙な動きをすること十数秒、目当てのものを見つけたのか再び私のそばまで戻ってきた。
「どうしたの?なにか探し物?」
何気ない質問、けれど返答は
「ああ、志堂さん。あそこにシャワーあるから浴びてきなよ」
なんて、とんでもないものだった。
「へっ!?」
あまりの驚きについ声が裏返ってしまった。
そして同時に再び耳まで真っ赤になる。
せっかく戻りかけた冷静さも綺麗いに弾け飛ぶ。
そんな私の様子に気づいたのか大西君がすぐにフォローを入れてくれる。
「あっ、別に変な意味じゃないから。ほら、雨で志堂さん濡れてんじゃん、だから風呂で温まった方がいいかと思って」
決して不純な動機はないと弁解する大西君。
その必死さは見ている分には異様に面白く感じられ、つい笑ってしまった。
「むっ、なんだよ志堂さん。そこで笑うのはヒドクないか。こっちは必死で自分は無害なことを証明してんのに」
「フフ、ごめん。ありがとね、わざわざ。けど、私が先でいいの?大西君だって濡れてるでしょ?」
流石に一緒に入る訳にはいかないが、自分が先というのもなんだか申し訳ない気がし一応了承を取ることにする。
「ああ、別にいいさ。どっちにしろオレ外に出る気だったし」
さも、それが当たり前かのように言い、部屋を出ていこうとする大西君。
そんな彼の手がドアノブに回るのと私が彼の手を握ったのはほぼ同時だった。




