2-11
とりあえずそのリルっていう犬を探すこと三十分、何の収穫もなく町をさ迷い歩く。
私が初めその犬を一緒に探してあげようと言ったとき大西君は少し驚いた顔をしたがすぐに頷いてくれた。
どうやら彼も初めっからその気だったようだ。
うん?
ということはもしかして彼は私がこんなことを言い出したことに対して驚いたっということなんだろうか?
だとしたら少し失礼な話だ。
確かに自分でも人のために動いているという事実に驚きを感じているけど、それを他人に思われるのは不快に感じる。
そんな考えを巡らしてムッと頬を膨らませながら町を歩いていく。
「う~ん、やっぱそう簡単には見つかんねぇーか」
あたりが薄暗くなった頃、大西君がそう呟いた。
「そうだね、理紗ちゃんがずっと探しても見つからないくらいだもん私たちが何の手がかりもなく探すのは難しいかも」
町を歩くこと二時間程、さすがにこれ以上ただ歩き回っても無駄かもしれないと思い始めてくる。
そんな私たちの気持ちを感じ取ったのか理紗ちゃんが再び不安げな声をあげてくる。
「リル見つからないの?」
「えっ・・・」
言葉が見つからない。
こんな時いったいなんと言えばいいのだろう?
嘘でも見つかると言うべきなんだろうか?
でももしそれで見つからなかったら?
きっと理紗ちゃんの心は悲しみに沈むだろう、一時の安心のためにそんな安易なことを言うのは正しいのだろうか?
そう考えるとなにも言えなくなってしまった。
私が黙り込んでしまったせいだろう理紗ちゃんは今にも泣きそうな声をだす。
「ねぇ、どうしてなにも言ってくれないの?見つかるよね?ねぇ、ねぇ!」
「そ・・・それは」
「見つかるさ!!」
そんな私の迷いだらけの弱々しい声を後方から打ち破る自信に満ちた強い声をだす大西君。
それはまるで私をも励ましているように思えるほど安心できるものを感じさせた。
「こんなにも理紗ちゃんが心配してんだ、その願いはきっと叶う!叶えてみせるよオレが。約束する!リルは必ずオレが探し出すから」
「おにいちゃん」
「ほら、だからもうそんな顔すんなって。そんな顔してたらせっかくリルが見つかってもその再会が色あせちまうだろ?やっぱり出迎えるときは笑顔じゃなきゃ!それにな、女の子は笑顔が一番可愛いんだぜ」
ニカと笑う大西君、それに合わせるように理紗ちゃんも笑顔を取り戻す。
その光景はまるで私には魔法のように見えた。
あんなにも不安げだった理紗ちゃんが今は笑ってる。
あんなにも私がためらっていたことを大西君は簡単にやってのけた。
その事実が胸を刺す。
いったい私はなんなんだろう?
いったい何が私をあそこまで躊躇わせていたのだろう?
理紗ちゃんが悲しむから?
ううん、そんなの詭弁だ。
本当は、本当は自分がリルが見つからなかった時、自分が憎まれるのが嫌だった。
だから『リルは見つかるよ』っとそんな簡単なことも言えなかった。
結局私は自分のことしか考えてなかったんだ。
なんて恥ずかしい。
最低だ、私。
胸はもうナイフで抉られたの如く痛む。
けれど気づいていたこの胸に広がる悲しみじゃないもう一つの感情に。
まだ不確かでなんでそうなったのか私自身もわからないけどたぶんこの時から私は大西学という人物のことが気になりはじめていたんだろう。
それが許されないことと知りつつ。




