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「遅いわよ学、何してんの、こっちは何時もより15分も早く起きてるのに」
そう挨拶もせずに白井由美は、オレの襟首をつかみ上げ怒鳴ってきた。
いきなりのこの挨拶、毎度のことだが振り回されるこっちの身にもなってほしいものだ。
「遅いって、まだ待ち合わせの時間には余裕があんだろ、何そんなにカリカリしてんだよ?」
オレの一言に由美の顔がいっそう険しくなる。
「アンタ、今日は用事があるから何時もより早めに着てって言ったわよね」
「え?言ったけそんなこと」「言ったわよ!!」
うーん、確かに思い返してみるとそんな事を言われた気もする。
「それは悪かったな。で、言いにくいんだけがそのままあと少し待ってくれないか」
「待ってろ?待ってろですって?私をこれだけ待たしておいて!」
由美の体がぶるぶる震えている、そして聞こえないくらいの声で何かぶつぶつと呟いている。
コイツハやばい、何か知らないけどヤバイ気がする。
「おい由美?」恐る恐るたずねると、由美は何か吹っきれたような顔で、
「あと五分」と、呟いた。
「へ?」「後5分だけ待ってあげるわ」
そう、不気味な笑顔で答える由美。
「でもオレ、まだ飯食い終わったばかりなんですけど」
「いい学、5分で準備するか、ここで死ぬか選びなさい」
「うっ、急いで準備させて頂きます」
「いい判断ね、じゃあのんびりしてないで、さっさっと行く」
と、オレのしりを蹴り飛ばしてくる。
(きしょー。由美のヤロウおぼてろよ)
ケツを抑えながらオレは急いで登校準備に取りかかった。
努力のかいあって何とか3分で準備を完了することができたが、オレを急がした張本人は、玄関で座って
「遅かったわね」
なんていいやがる。
「遅くねーよ。十分過ぎるほど早いってーの!!」
「そう?まあいいや、じゃ準備もできたみたいだしいくわよ」
そうして由美は、さっさっと学校へ向かいだした。
(このアマ、いつか泣かしてやる)そう心に固く誓う。
「ところでよーオレにいったい何の用事なんだよ」朝からの疑問を由美に聞いてみる。
「うん?ああ、実はさへへ・・・私ってほら美術部も部長じゃない、それで先生に美術室にある彫刻を準備室にかたずけろって言われてるのよねー」
「ふーん、ってまさかおれにてつだえと?」
「そっ」由美は笑顔で答える。
「ふざけんなよ、何でオレが朝からそんな労働を」
「いいじゃない、今度ジュースでもおごるからさ、ね」
「何が「ね」だ、嫌だね、絶対に嫌だ」「なによこのケチ」
言葉と同時に、ガッと一発足を蹴られる。
「いてー。何すんだよ」「ふん」たく、何だこの暴力女は。
「はは、また仲がいいねお二人さん」
突如、真後ろから聞こえてきた声にオレ達は同時に振り返る。
「なんだ、明じゃないかよー脅かすなよ」
「はは、ごめん別に驚かす気は無かったんだけどね」
と、オレ達と同じ制服を着た男、月神明は笑いながら謝ってきた。




