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-3日目-
目覚めるとそこは真っ白な部屋だった。
白い壁に、白いカーテン、その部屋でオレはこれまた白いべッドの上に寝かされていた。
「うっ・・・ここは?オレはいったい?」
まだ意識がはっきりとしない中、
「むっ。目が覚めたか大西」
本を片手に、こちらを覗く神矢純の姿が視界に入り込んできた。
「純?」
「うむ。もうそんな時間じゃないがとり合図はおはよう大西」
挨拶をする純の声はなんだかとても優しく感じた。
「ああ、おはよう」
とりあいず挨拶は返したものの頭はいまだ混乱しており、ここがどこかも分からないでいる。
それに何かとても大切なものを忘れている気がしてならない。
「なあ純、オレはいったい・・」
「まあ落ち着け大西」
せがるオレをそう止める純は
「まだ記憶が混乱してるのだろう、ゆっくりでいいから思い出せるか?」
今まで聴いたことのないほどのやさしい口調でそう言った。
「記憶?混乱?なに言ってんだよ純」
平然と返してやったが頭はそれと裏腹にズキンと痛みだしてきた。
「では、俺を探しに町に行ったということは?」
「え?オレが純を探しに町に?」
ズキン!
まただ何かが頭をよぎる。
ズキン!!
「うっが!」
頭痛はどんどん激しさを増していく、まるで何かを呼び覚まそうとするように。
「ぐっ!!がぁー!!!」
そして痛みに比例するように頭の中をよぎって行った光景は鮮明さを増していく。
(あれは何だ?)
(人?そうだ人だ。人がたくさん倒れてる周りには瓦礫があって、それで・・・)
ズキン!!!
「ぐっ!!あっく!!!」
そこで限界が来たのか脳裏の景色は再び闇に溶けていった。
「大丈夫か大西!一時的な記憶の欠落だ、あまり無茶をせんでもいずれ思い出す」
「ハァハァ、くっ!心配いらねーよ、このくらいなんともねぇー。それに少し思い出してきた、確か町で大きな爆発があって、それで・・・あれ?何でオレこんな所に?つーかここ何処だ?」
(そうだ、町にいたはずのオレが何でこんなところに?それになんであんだけ探していた純が目の前に)
「そう興奮するな大西、傷に悪い。そのことについては今から説明するから。まずここは病院だ。町で倒れていたお前たちを偶然発見してな、ここまでつれってきたというわけだ」
「お前が?じゃあお前は爆発に巻き込まれなかったのか?」
「ああ、運よくな」ニッと笑いながら純は言う。
「なんだよー。じゃあ結局ミイラ取りがミイラになっただけかよー、これじゃあまた由美に馬鹿にされるな」
「まあそれはしかたがないだろうな、実際そうなのだから」
「あっ、テメー言ってくれるなー。せっかく心配してやったのに、もうなにがあっても知ねーぞ」
「おお、それは困る、スマンスマン」
そう冗談を言いながら互いに笑う。
そんなことが本当にうれしく顔がつい綻んでしまう。
(良かったまた戻ってきたんだあの日常が、みんなでまた笑いあえる・・だけどさっきの純の言葉なにか違和感があった。)
「なあ、純」「うん?なんだ?」
だからよせばいいのにオレはそれをきいてしまった。
いや聞いて正解だったのだろう、だってそれは何よりも忘れてはいけない記憶なのだから。
「純さっき気になる言い方してたよな。ほら『お前たちを偶然発見した』って。あれどおゆう意味だ?あの場所でほかに誰か助けたのか?」
俺のその言葉を聴いた瞬間、純の表情が暗くなる。
「そうか、あの時のことは思い出していないのか」
「純?」
純の感情のない声、その声を聞いているとなぜか心臓が高鳴る、まるでこれ以上聞くなと警告するように。
「ああ助けたさ、お前に重なるように倒れている志堂水希をな」
「!!」
忘れていたその名前、その名が病室に響いたとき、さっきまであった幸せはかき消されるように無残に砕け散った。




