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「いったいオレになんのようだ?」
「あら、会ってまもない相手にずいぶんな口の聞き方するのね君。別にいいけど、目上の人にはもっと敬意を込めた方が社会に出てから苦労しないわよ」
女はこれ人生の先輩としてのアドバイス、と付け足して笑う。
目上?たしかにそう言われるとこの女は自分より二つほど上にみえた。
だがそれがなんだと言うのだ、そんなことはいちいち言われなくてもちゃんと判っているし、そもそもこの人の気配のしない女にそんなアドバイスをされるいわれはない。
依然として警戒のまなざしを向けるオレに女は
「まあ、そんなにピリピリしないでよ。別に私は君をどうこうしようなんて考えてないんだから。ほら、リラックスリラックス」
そんな警戒なんて気にもしないように接っしてくる。
「オレに何か用なんですか?」
二度目の問い、女のアドバイスを受ける気になった訳ではないが、自然と敬語で喋っていた。
「別に、私としては君には何も用はなかったんだけど、君のことを少し気に入っている子がいてね、それでどんな子かと思ってみにきた訳」
そう語る女の口調はさっきまでとは違い何となくトゲのある言い方だった。
「誰です?その人」
「悪いけどそれは言えないわ。でも縁があったら近いうちに会えるかもね。それまで楽しみにしておきなさい」
そう言い、女は背を向けながら
「じゃあね、たぶんまた会うことになると思うからその時はよろしくね。あと町にはこれ以上近づかない方がいいわよ。これ、人生の先輩としての忠告ね」
そんなことを言い残し景色に溶けるように姿を消した。
あの女は何だったんだろうか?
良くは判らないがこれだけはいえる、あの女のあの気配、あれは間違いなく人ではない。
なぜそう思ったのか自分でも分からないが、それだけは間違いないという核心だけはあった。
だがそんなこと今はどうでもいいことだ。
さっきまで呆然としていたがあの女のおかげで意識は覚醒したし。
不謹慎だがこの光景にも何とかなれた。
女は町には行くなと言っていたがそれは出来ない。だってオレは純を探すためにこの町にきたんだから。
そうオレが町に向き直すのと次の爆発が起きたのは、ほぼ同時だった。
まあ、一言で言えば私は運が良かったのだろう。
この町に私が通うのは別になにか用事があるからという訳でない。
ただ家に一人で居たくなかったというだけ。
家が嫌いだからじゃない。ただ一人でいるのが嫌だった。
何でこんな風に思うのかはちゃんと理解している。
まあ、たんに私の心の弱さが原因なんだけど、何であれイヤなものはイヤである。
だから、学校のない休日はこうして町へと出かけ少しでも人の多いい場所へ行き胸の孤独を埋めていた。
周りに人がいれば私は一人じゃないんだって思えたから。
そんな理由で今日も町へ行こうと思った、自分を保つために。
そうして町に行く途中町が見え始めた橋の上で一人の男性に道を尋ねられた。
今にして思えばその人は天の使いかなにかだったんだろうか。
だってあの時あの人に道を尋ねられなかったら私は間違いなくあの爆発に巻き込まれていただろうから。
だから私は運が良かった。
でも彼は運が悪かったようだ。
あの後私はよせばいいのに興味本位で町の様子を見に行ってしまった。
そしてそのあまりの光景に足がすくむ中で彼の姿を見つけた。
この地獄の中で見た彼の姿はひどく心を落ち着けるものがあり、私は安心して彼に声をかけようとした。
でも、次の瞬間、彼の近くで爆発が起こりその破片の一つが彼の頭上へと落ちていった。
だから彼は私と違い運が悪かったようだ。




