「B級」と言われるエンタメ作品についての考察
はいこんにちは~。
今回もなんや関西弁で、たま~にキッツイことも言うかと思いますが、まあよろしかったらどうぞ~。
今回のテーマはタイトルの通り。
「B級」という言葉がだいぶ死語化している感は否めないので一応説明しておくと、「A級」と呼ばれる上位の作品に対して下位とみなされる作品に使われる語だと思ってください。
もちろん「C級」なんてのもありますよ(笑)。いずれも蔑称に近い使われ方をすることが多いですかね……。
ほんで。
今回つらつらと考えていたのは、特に小説ではラノベと呼ばれるものや「なろう系」と呼ばれる作品の一群であり、映像作品ならば特撮と呼ばれる作品たちのことです。
アニメも以前はそういう扱いが普通でしたし、今でも海外ではまだまだ「子どものもの」として一段低く見る人が多いやに聞きますけども、才能豊かなアニメーターさんたちによる素晴らしい作品の数々のおかげでだいぶ認められてきているので、今回は基本的には語りません。
さてさて。
SNSでは周期的にこうした話題が持ち上がります。
要するに、一般文芸を高く評価している人がラノベや「なろう系」と呼ばれる作品を見下してバカにする風潮ですね。こちらのサイト、とくにこのエッセイ部門でも、憶えのあるかたは多いんやないかなと思います。
特撮についてもどうやら同様のことがあるらしく。
一般的な映画やドラマなどの映像作品から比べると、やっぱり一段低いというか「くだらないエンタメ。B級作品」と見下す人があるようです。
卑近な例で申し訳ないんですが、我が家のムスメはとんでもない「仮面ラ○ダーオタク」。まあ私とダンナがそもそもオタクやし、特にダンナは特撮好きやしで、なるべくしてなった特撮ムスメです。
もともと高校でも芸術コースに通っていたのですが、あまりに特撮が好きすぎて、大学入試ではそっち方面を目指してとある芸術系大学を受けまして。
そこでなんやしらん、めっちゃ圧迫面接みたいなキッツイ面接を受けたらしい。
「は?『仮面○イダー』? そんなもん目指してるの?(冷笑)」みたいな、あからさまにバカにしたみたいな態度の面接官(つまりその大学の先生ね)やったそうで。
「は? そんなん勝手やん」と、疲れた顔して帰ってきたムスメから最初に聞いたときには思いましたね。
そもそもその大学の卒業生たちが実際に特撮の世界に入って活躍していることも、なんなら学内に特撮の同好サークルがあることも知っとったし、余計に「は???」ってなりました。
まあね、わからんわけではないんですよ。
いわゆるアカデミー賞やら獲るような「高尚で芸術的な」作品をがんばって作ってる人たちから見れば、そんなふうに考えてしまうのはね。
小説の世界もそうですよね。
芥川賞や直木賞、本屋大賞などの賞をいただける作品というのは確かにすばらしいし、評価されるだけの高い価値をもっている。それはまちがいないです。
私はいちおう司書もやってる身なんで、そうした評価を受ける作品が貴重で大切やっちゅうのはちゃんと理解しているつもりです。
でも、ですよ?
ラノベや「なろう系」や特撮、つまりエンタメっていうのは、そもそも最初から、なにも何かの賞を獲ろうとして作られているもんやないわな? 結果として賞が頂けることはあるとしても、基本的には「エンタメ」である以上、観る人、読む人を楽しませることが至上命題であるはず。
それの何があかんのん?
と、私なんかは思うわけです。
たまたまなんですが、先日某国営放送で「ゲームゲノム」という番組を見てましたら、司会の三浦大知さんがこんなことをおっしゃいました。
「僕の祖母は沖永良部島の人なんですけど、昔の戦争のとき、みんなで攻撃から逃げるために山の洞窟などに逃げ込んだんです。そのとき何がみんなの心の支えになったかというと、祖母は歌だと言ってました」
そして「エンタメというのは心を救うものなんだなって」とも。
まさにこれです。
もちろん、評価されている「芸術的な」作品だって鑑賞者の心や、ときには人生すら救いますけれど、「B級」などと言われている作品にだってその力はあるのです。
事実、そんなこんなでしばらく受験がうまくいかなかったり、その前にもあれこれあって高校も休みがちで鬱っぽくなって、ひどいときにはぽろっと「死にたい」とかまで言うことのあったムスメを救ったもののひとつが特撮です。
ついでながらちょっと昔のことを思い出したんでご紹介しておきますが、わたくしとある有名なアニメに係わっているアニメーターさんを存じ上げておりましてですね。日本のみならず世界でも知っている人の多い息の長い作品です。ゲームになり、テレビ放送、映画化といろんな作品が存在します。もちろんこのほかにもいろんなテレビアニメを手掛けている方です。
ご本人に許可をいただいたわけではないのでお名前は出しませんが、そのかたが以前おっしゃっていたのですよ。
「宮崎駿さんの作品は確かにすばらしい。あれは世の中にないといけない作品や。でも、オレたちが作ってる、毎週子どもたちがテレビ放送を楽しみにしてくれているような作品も、やっぱり世の中には必要なんや。だからオレらはこの作品を作るんや」ってね。
まさに第一線でエンタメ作品を作り続けるプロとしての、凄みと覚悟を感じるお言葉でした。
ああしたものは、特に長編の場合「つぎの映画(または小説の続刊)が楽しみ。それまでは生きていよう」ってファンに思わせてくれる大事なもんやと思うんです。
そこがエンタメ作品の存在意義として大きな部分やないでしょうか。
エンタメは人々の心を救い、時には命すらも救っている。人に「次の作品を見るまで生きていよう」と思わせられるなんて、なんて素敵な作品づくりか!
そこにA級もB級もない。
どちらにも価値があり、この世に存在していなくてはならないもんです。
どっちかが素晴らしくてもうひとつはアカンみたいにすぐに引き比べて見下すのは、むしろ幼稚で愚かな行為だと思うのですがいかがでしょうか。
さて。
ここまでで終わってもエエねんけど、やっぱりもうちょっと言うとこう。
じゃあなんで、「A級」がお好きな人はわざわざ「B級」をこき下ろしたり嘲ったりバカにしたりせんならんのんでしょうかね?
そうでもせな死んでまう生きもんなん??
これですわ。
別にほっといたらええやん?
この世で大事なのは多様性とちゃうん。
この世界に、マイノリティと呼ばれる人たちを含めていろんな人が生きててええように、いろんな芸術作品、エンタメが存在しててエエはずやろ。
それをなーんでああいうヒトたちは、小馬鹿にせずにはおられへんのか。
……ずばり、「自信がないんやろねー」が私の答えです。
あとはしょーもない嫉妬心。
要するに「オレはこんなに素晴らしいもんを作ってる、なのに評価されない!」とか「あんなくだらんもんを世にだして金儲けしやがって。こっちはろくに売れなくてカツカツやのに」とか。
あ、そうそう。ひとつ付け加えておきますが、自分自身でクリエイトすらしてない人たちが口さがなくアレコレとラノベや「なろう系」作品をバカにする件については、もはや語るにも値しないんで言及しません。
他人の作品に文句があるなら自分で作ればええだけのことを、なぜかああいう人たちって自分ではなんも発表することもなく、批判の矢面に立とうとすらしないんですもん。卑怯姑息すぎて話にもならん。
すんません、ちょっと脱線しました。
自分も作り手であるにも係わらず、平気で人の作品を見下すセリフを言い放つのってほんま、ただただ恥ずかしいことやと思うねんけどなあ。厚顔無恥にもほどがあるやろと。
そうやって誰かを下に見てバカにでもしていなければ、自分があまり評価されず、満たされていないことを忘れていられへんのんでしょ? 要するに。
つまんねえ人生やね。
まあアンタの人生やねんから勝手にすればええねんけどもさ。
そこに他人を巻き込むなや、と私なんかは思いますな。
自分が創作をしてるんなら、まずそのことに集中しなはれ。
他人が何を作っててどう称賛されてるか、売れてるかなんてどーでもよろしい。
人と自分を比べて、ちっさい世界で安心しようとしてんじゃねえわ。
そうやって周りをキョロキョロやって「あいつの作ってるものは下らん、バカバカしい」「オレ(わたし)の方が素晴らしいものを作ってる!」とか言うて自分を慰めてるヒマがあったら、線の一本でも文字のひとつでもかきなはれ。
自分自身の作ったもの、それだけで勝負せえや。
……と、そう思いますな。
どっとはらい。
2022.12.18.Sun.