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もうここにいたくない

 


 家の中ではぎこちないながらも、姉と妹として上手くやれていると思う。私の前で、お父様やお母様、お兄様達やお姉様に褒められているところを見て、「私はそんな言葉をかけてもらった事がないのに」と泣き出したいのを堪えているし、顔にも出していないから。


 学園に着くと「お姉様」が「リリアーヌ様」になって少し寂しいけど、「まだ慣れていなくてご不快な思いをさせて申し訳ありません! リリアーヌ様」と、そう謝罪されてしまったのでもう姉と呼んで欲しいと声をかけるのはやめようと思った。

 ニナさんの声で注目を浴びてしまって、目立ったように感じて話を終わらせてしまったとも言う。まるで私が義妹を受け入れてないみたいな他人行儀な話し方をされて、どうしたらいいのか分からなくて。


 けど家では「リリアーヌお姉様にはとても良くしていただいてます!」と他の家族に笑顔で話して私の腕に抱きつくことさえあるのに、何が良くないのか私には本当に見当もつかないのだ。


 私が抱えている、なんだか上手く言葉にできない感情は置いておいて、ニナさんは上手くやれているようだった。

 昼食はクラスメイトととるようになって、常に人に囲まれている。見目も良い彼女は男性からの視線も集めていた。当然公爵家の庇護する魔法使いにあからさまに近寄る男子生徒は目につくところにいない。彼女のクラスの方達がお願いした通りにそれとなく守ってくださっているのもあるだろうが。

 座学はまだまだで、養子となった方向けの補習を受けつつ励んでいるようだ。あまり結果は芳しくないようだが進むペースは人それぞれなので、とりあえず様子見をしている。


 ニナさんの学園生活を陰ながら見守りつつ、私は狩猟会の準備も進めていた。ニナさんは座学が苦手な分か魔法の実技は成績が良くて、まだ入学して一か月に満たないが異例として狩猟会への参加が認められたそうなのだ。

 周りの嫉妬を買うから口外はあまりしないようにと光属性の担当教官のアマド教授は話された。


 その中で、本人の実力も裏打ちしたが、稀有な光使いの力を実践で見たいという意向も強く感じられる。おそらく国か学園が関わっているのだろう。治癒ともうひとつ、魔物を浄化する力。その程度を確認したいので私は狩猟の成果を上げるのではなくニナさんのフォローをメインに動くように指示をされた。

 学園が手配した警備用の冒険者や教師ではなくなぜ一介の学生の私が、と思うと、ニナさん自身が大人の方を怖がってそう希望したらしい。さらに言うと本人はライノルド殿下に随伴したがったのだが、奥地に向かう殿下達と行動させるわけにはいかないからと私が役目に選ばれたのだと言う。

 学園の教師に「アジェット嬢ならまかせられるから」と言われて、ちょっと荷が重いとも思ったが応えたいと考えてしまった。

 家族からの称賛ではないけれど、それがもらえない私は必要とされるとどうしても喜びを感じてしまうのもある。


 お父様が学生の時に打ち立てた、学園の狩猟会の記録。これを塗り替えたら褒めてもらえるかもしれないと挑戦するつもりだったが、初めての実践をおこなうニナさんの身の方が大切なので当然引き受けた。これを機にまた仲良くなれるといいのだけど。

 どうか何も問題が起こらず、狩猟会が成功しますようにと祈ったが、私の願いは天に届かなかったようだった。




「ダメ……! ニナさん! 皆のところに戻りましょう!」

「えー、別に他の女の子たち、いらなくないですか?」


 風魔法で索敵を担当する子や、遠距離支援に優れた子を混ぜた4人のパーティーで行動していたのだが、どんどん進むニナさんを追うために別行動になってしまった。ニナさんを一人にするわけにいかなくて私だけついてきたけど……助けを呼ぶように指示した後、彼女達は先生達と合流できただろうか。

 私も、現在の状況では救難信号を打つべきなのは分かっているが、移動しながらではできない。止まってもらわないとと思うのだが、ニナさんは聞いてくれなくて、私は困り果てていた。


 この狩猟会にはもともと女性はほとんど参加しない。本来私一人だけなら奥地に向かって成績のために自由に魔物を狩る予定だったが、パーティーを組んだ子達にも今回は点数の高い魔物を狩れる奥地に行くのは諦めてもらったのだ。

 だから、初めての実戦になるニナさんに合わせて森のごく浅いところで魔物を狩るつもりしかなかったので、そのための準備しかしていない。もしもの備えは用意していたが、ここまで積極的にずんずん奥地に向かってしまうなんて予想すらしていなかった。


 今のところはニナさんの光魔法の浄化の一撃で倒せているからか、危機感がまったくないようだ。私一人ならたしかにもっと奥に行くつもりだったけど、魔物との戦闘のサポートに慣れた人ならともかく彼女を庇いながら戦う自信は無い。

 どうしよう。

 

「ここまであたし、ちっとも手こずらずに倒せてるじゃないですかぁ。それともあたしがたくさん狩りの成果を出したらそんなに困るんですか?」

「ここは急に強い魔物が出ることもあるの! お願い、言う事を聞いて、皆のところに戻りましょう!」 


 乱暴になってしまうと力ずくにならないようにした手は先ほど振り払われたが、もう余裕はない。痛みが出るくらいに力を込めることになってしまったが、しっかりと腕を掴んで通ってきた道なき道を戻り始めた。

 嫌がるように抵抗されるけど、もう気遣っていられない。普段のニナさんとかなり口調が違うのも、私は気にしてすらいなかった。


「いったぁ……痛いってば! ねぇさっき倒した魔物まだマジックバックに入れてないんだけど!」

「そんなもの! 危険な魔物が出てくる前にここから離れないと……!」

「あぁ……そう、そんなにあたしの活躍を邪魔したいわけ……? 

……このっ!」

「きゃああっ!」


 一瞬で視界が真っ白に染まった後世界が暗転した。強い閃光で一時的に目が焼かれたのだと気付くのに数秒かかってしまう。

 どうして、光を放つ魔物なんてこの森にいないはず。そもそも索敵はちゃんとしていて、私の近く範囲に魔物はいなかったのに。……もしかして、ニナさんが?


 混乱する私がやっと視界を取り戻したころには、手を振り払ったニナさんは先ほど倒した魔物のもとに駆け戻ってしまっていた。はるか後方に、地面にしゃがんでいる背中が見える。


「……ニナ!! 顔を上げて!! 11時の方向!!」

「えっ……いやぁっ?!」

「私の方に向かって逃げて! こっち!」


 死んだ魔物を獲物と見たのか、森の奥手から別の魔物が姿を現していた。体表をびっしりと苔が覆う小山のような粘液状の大きな体。相当大きいが……スライムの一種だ。索敵手段を持たないニナは私が叫んだ今やっと気が付いた……遅い!

 私は叫びながら駆けだした。


「何してるの! 走って!」

「いやぁあ! やあ! ぎゃぁあっ!」


 ここまでのように先に私が接敵していないので、突然至近距離に魔物を見て腰が抜けたみたいで座り込んだまま動かない。私の声も聞こえていないようだった。めちゃめちゃに腕を振り回して浄化の光を放っているけど、スライムに対しては相性は最悪、表面を焼くだけであまり効果はないのだ。高出力でまるごと浄化するなら話は別だがパニックで魔法がきちんと編めていない、大部分が霧散してしまっている。

 スライムは光を嫌がってはいるようだが、中途半端な挑発にしかなっていない。体を硬化させてあの質量で殴られたらニナに身を守るすべはないと気付いてぞっとした。座り込んで動けない彼女の元に私が駆け寄るのが先か、スライムが臨戦態勢に入るのが先か。


「ひっ、や、うげっ」

「……くっ、う……!!」


 ひたすら混乱したままでたらめに腕と魔法を振り回す彼女の首根っこを掴んで勢いよく引き寄せた。寸前まで座り込んでいたところをドパン、とスライムの体が打ち抜いて地面がくぼむ。ニナの足を狙ってもう一撃が振りかぶられたので、胸ぐらをつかんで後方に転がした。

 代わりに一撃、足に入ったのは覚えている。

 臨戦態勢に入ってしまったスライムは学生の身に余る脅威でしかない。知恵も痛覚もないので、自分が動けなくなる瞬間まで近くの範囲の生き物の命を奪おうと本能のままに動くから。


 小さいものなら魔法で焼き尽くせるけど、人ひとりより大きい、表面に苔が生えるほど年季の入った体積の大きなスライムなんて一人で討伐するものではない。そんなのバカがやることだと分かっているけど、今この場に戦える者は私しかいない。

 遠距離攻撃手段は持たない魔物だし移動は遅いのだから逃げてしまえばいいのだが、同じ体格の人間を一人連れて逃げるのにはさすがに足りない。選択肢は一つだけ。





「はぁ、はぁっ……はぁ、げほっ、……はぁ……」


 考える余裕なんて無くて、無茶をするしかなかった。最終的に腕を突っ込んで、中からスライムを焼いた左手は火傷でボロボロになっていて、脈打つたびにズキズキと痛む。手の表面が全部神経になってしまったみたいだ。それくらい痛い。

 よけきれずに殴打されたところも痛むけど、そんなのが霞むくらい。


 体内から爆破されて、あたりに飛び散ったスライムだったものは「キーキー」と体液を震わせて音を立てながら死んでいっている。


 ……頭がぼーっとする。

 ああ、そうか……スライムは討伐するなら焼き尽くすことになるから、学園の狩猟会の舞台になるこの森では倦厭されて長年生き残ってこんなに大きくなっていたのか。手間がかかるのに目立つ成果にならないから。索敵して見つけても誰も狩らなかった。近づかなければたしかに怖い魔物ではないけど、これは次回からは議題にあげて対応しないと。

 私はびちびち跳ねながら断末魔を上げる粘液を眺めながら、今考えなくてもいいそんなことをぼんやり考えていた。


「あ、あたしっ、悪くないから! 勝手に怪我したのそっちだからね! 邪魔されなきゃちゃんと気付いてたし、落ち着いて対処すればスライムくらい簡単に殺せてたんだから!」


 至近距離で爆発を起こして、キーンと耳鳴りがする。ニナさんが何か言っているのは分かっていたが、それに対応する余裕がなかった。聞こうとすれば会話もできたのだろうけど、今はここから離れて人を呼ぶ方が先。

 一方的に「他の魔物がまた寄って来ないうちに離れて、助けを呼ぶから」そう告げて彼女の腕を、火傷してない右手で掴んで有無を言わさず歩き出した。


 疲れていたし、痛いし、恐ろしい目に遭ったニナさんを気遣う事を忘れたまま、私は救援を呼びやすい、空の見える木々の空白にたどり着くと学園の規定で決められた救難信号を空に向けて放って地面に座り込んだ。

 スライムを倒して、日の射す場所に出て気が緩んでしまったのも大きいと思う。




 いつの間にか、私は痛みから気を失っていて、次に目が覚めたのは自分の部屋のベッドの上で、狩猟会はとっくに終わって2日も経っていたのだ。


「アンナ……?」

「ああ、お嬢様……! 目が覚めましたか?!」


 体を起こそうとしたが全身が痛くてベッドに座ることすら出来ない。口がカラカラに渇いていて、まずはお水を、とアンナが差し出す吸い飲みで口を湿らせた。

 アンナによると私は救難信号を見て駆け付けた教師と冒険者に保護されて、2日も意識を失ったままだったらしい。この2日間ほとんど寝ずに看病してくれていたのだろう、目の下に隈を作ったアンナが「意識が戻ってよかった」と喜びに涙を流してくれた。

 心配させてしまった事に申し訳なさを感じるが、その思いが嬉しいと思ってしまう。


「奥様と公爵様を呼んできます」

「アンナ……そんなの他の人に任せて貴女は寝て頂戴。私、自分のせいで貴女が倒れたらそれこそ自分を許せなくなるわ」


 しぶるアンナを説き伏せて、どうにか自室に下がってもらってすぐ、バタバタと他の使用人が私の部屋を出入りしたと思ったらお母様とお父様がやってきた。


「目が覚めたのね! リリアーヌ……何であんな真似をしたの?!」

「実戦が初めてのニナを連れてあんな奥地に行くなんて! とんでもない事になるところだったんだぞ!!」


「……え?」


 一瞬、お二人が何を怒っているのか本気で分からなくて、理解できなくて、まともに言葉が返せなかった。

 固まっている私を見て、お父様もお母様も勝手に話を続ける。


「自分が預かるからと狩猟会にニナを参加させるなんて、貴女は自分の実力を過信しすぎだわ。大事には至らなかったからいいものを」

「お前の左手の火傷はニナが治してくれたんだぞ。無茶をしたお前を庇って負った自分の捻挫を後回しにしてまで……後でちゃんと感謝を言うように」


 あまりのショックに、私はハッハッと浅く短い発作のような呼吸しか出来ずにベッドの上で溺れそうになっていた。

 頭が理解を拒絶している。


 何で? 何で私が無理矢理ニナを狩猟会に参加させたことになってるの? どうして私が自らニナの引率を引き受けたことになってるの? 

 ニナは止める私を振り切って奥に向かったのに。忠告も聞かなかった。活躍したいと言っていたのもあの子。閃光で目潰しまでされて、それでも何とかニナを守るために怪我してまで庇ったのも私なのに。


「ニナはずっとリリアーヌの心配をしていたんだ」


 震える子ウサギと見間違うような、泣きはらしたのか真っ赤に充血した目のニナが部屋に呼び入れられる。

 怒りを抑えきれずに強くにらむと、大げさにおびえて小さく悲鳴まで上げていた。何それ。何で? 貴女のせいでしょう?


「お姉様、ごめんなさい……私が役立たずだったから。私が代わりに怪我して、ううん、死んじゃえばよかったんだわ! ごめんなさい、ごめんなさいっ……!」

「そんなことを言わないで。ニナちゃんは十分リリアーヌのために頑張ってくれたわ」


 森の中で乱暴な言葉で「あたしは悪くない」と叫んでいた子と同じ人物だと思えない。

 いきなり言われた言葉が荒唐無稽すぎて、あっけにとられてしまった。そしてその言葉に、お父様とお母様が何に怒っているのか、その嘘を誰が作ったのか一瞬で理解する。

 その嘘つき女をお母様が労るように背中を撫でていて、それが余計に私の気に障った。


「よくもそんなでたらめが……!」


 当然、私はその子の言っていることは全部でたらめだと、お父様とお母様に真実を話した。狩猟会以前の話、そもそもニナさんを同行させるように頼んだのは学園側だと、そこから全部。

 私の話を聞いて顔をこわばらせたお二人が、何か口を開く前にニナが叫んだ。


「ひどい! お姉様……失敗して、ショックなのは分かるけど、私のせいにするなんて、どうして!」


 私とニナと、順番に見たお父様とお母様は困ったような顔をしたけど何も言わなかった。

 それを見て、お二人がどう判断したのか分かってしまって……それ以上、私は何も、事情を説明する気にすらならない。


 私、そんなバカな真似をするような娘と思われていたの……?

 事実を話したのに信じてもらえないなんて。実際は全く違うのだから、私の発言をもとにきちんと調べれば事実は判明するだろうが、反論する気すら起きなかった。


「苦痛を和らげるために光魔法を使って差し上げたいから、お姉様と二人にさせていただけますか? 人に見られてるとまだ緊張して上手くできる気がしなくて……少しでも、効果の高い魔法をかけたいのです」


 優しそうな声色でそんなことを言い出したニナは、まんまとお父様とお母様に使用人まで全員追い出すと私のベッドサイドに膝をついた。

 耳に唇を寄せて、悔し涙をこらえてる私にそっと囁き始める。


「アマド先生は研究のためにあたしを狩猟会に無理言って参加させたみたいで、元々お姉様なら問題なく引率できるだろうからってお姉様の推薦で参加したことにしてたの」


「アナベルとマリセラだっけ? あの子達はね、公爵令嬢を一人で森の奥地に向かわせて怪我までさせたお叱りを恐れて、でも嘘をつく度胸はなかったみたいで『気が付いたら二人とはぐれてた』って証言してるの」


「お父様もお母様も、お姉様が慢心して起こした問題だってあたしの事を信じてくれたわ。活躍しようとちょっと焦って少し騒ぎになっちゃって、どうしようかと思ったけど……リリアーヌお姉様って、信用無いのねぇ」


 愉快そうに笑ったニナは、わざわざ私と目を合わせるようにのしかかってきた。私の体に影がかかる。


「だからもうあんたが何を言っても誰も信じないよ」


 そう告げて醜悪に顔をゆがめる。その言葉に私は共感してしまったの。

 ああ、そうね。実際にお父様もお母様も信じてくれなかったわ。


「あ、そうだ。治しとかないと不自然だしね。えーと……治癒の光よ、我らが神の慈悲をここに――」


 ニナの口から長々と語られる光魔法のための呪文は、知識で知ってるだけの私でもところどころ間違ってるのが分かったけど強引に発動させたらしく、ほんの少しだけ体が楽になった。


 治療が終わったと外にいたお父様とお母様を呼び入れると、まるで「姉を慕う妹」みたいに可愛い声に戻ったニナが私の容態を案ずる。


「リリアーヌのために、ありがとう」

「本当に。ニナがいてくれて良かったわ」

「いえ、そんな……私は私のために出来ることをやっただけですから!」


 私は、リリアーヌがいてくれて良かったなんてお母様に言ってもらった事なんてない。

 お父様にああやって頭を撫でてもらった記憶もない。


 それに改めて気付いたら、今までたった一言褒めて欲しいと頑張ってきた自分がとんでもなくバカらしく感じて、心の中で何かがぽきりと音を立てて折れた。


 見舞いにと城から駆け付けたアンジェリカお姉様を含めた他の家族からの言葉もどうでもよくなって、内容を理解せずに全部聞き流す。

「もう二度とこんな真似しないで」

って、私がしでかしたって話をそのまま信じてるのね。どう思われているか分かっていたけど。





 『アンナへ』


 そうして私は一人になると、私の大切な侍女に宛てた長い長い手紙を書きはじめた。会ってから姿を消したらアンナの責任にされてしまう。それだけは避けたくて。

 本当は何が起きたのか、何を言われたのか。感情が昂って、ちゃんとした文章になっていない、ひどく字の荒れた手紙を。


 もう無理だった。もう頑張れない。アンナという大事な味方はいるけど、どうしようもなくむなしくなってしまったのだ。

 ここにいたくない。私を褒めてくれないのに、他所の子を褒めるお母様もお父様も見たくない。見ていたくない。



 こうして、何も褒める所のない娘、妹であるリリアーヌ・カーク・アジェットは、手掛けていた事業と依頼についてすべて放り出す謝罪と、家族に向けて不出来を詫びるだけの短く簡素な手紙を残してある夜忽然と王都の屋敷から姿を消したのだった。

 


これでしんどいパートは終わって、次回からは

「自由になったリリちゃん♪ウキウキ♪楽しい家出編」

が始まります。

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