#2 学生編
男は弓を構えて、敵に照準を合わせる。
男の心は常に静謐であった。
例えそれが、人を殺す瞬間であっても__
「御免」
男は小さな声でつぶやく。
放たれた強靭な弓矢は無駄な軌道描く事なくして、真っ直ぐと猛獣の脳天を貫いた。
「お見事!!!!!」
完璧なまでのヘッドショット。豪快に砕け散る肉塊と血液の混濁を視界に入れたその場の兵士達は、思わず震え上がり感嘆する。
「ほんと、天才だよ」
そこに凛々しく佇むは、赤兵の怪物と呼ばれる邪馬台国最強の男、英詞。
剣術、弓術、体術の戦闘スペシャリスト。
彼に命を狙われば最後、生還は不可能だ。
「う"ち滅ぼせぇ!!」
兵長の野太い怒鳴り声による合図の後に始まる邪馬台国兵団の一斉攻撃。
奇襲を撃たれ、怯む狗奴国兵たち。彼らは自分たちのリーダーが不意打ちに瞬殺されたことにより、思考がままならない状態のまま、反撃を開始することとなった。
彼らの震えた手先から繰り返される出鱈目な射撃は、全くと言っていいほど邪馬台国の陣地に届きやしない。
草木などの身を隠せる遮蔽物のない狭い川を挟だフィールド。正々堂々と対面衝突しているにも関わらず、何故当たらないのか?
答えは武器性能の圧倒的格差にあった。敵の弓矢の射程距離は、邪馬台国の使用する物の二分の一にも満たない程。
「ははっ!ありゃ“欠作”だな」
剽軽な兵士の一人が笑う。
その武器の製作に用いられる素材がどれほど低品質な劣悪品で溢れていることだろうか。
”質よりも量に拘ってしまった”
その結果が、今回の不遇な事態を招いてしまったのである。
はて満を辞しての襲撃が此の様とは。
「なんともまぁ、つまらん」
退屈を感じる第壱赤兵団・兵長の雷は、鯨のように大きく口を開いて欠伸をする。老年故に歯はもうほとんど残っていない。
なれば、矢が届くまで距離を詰めればいいだけの話だろ?と、狗奴国兵団の焦った副リーダーは、兵士達に指揮を取る。
馬鹿が、そんな事してはならん。
射程差を埋めようと我々に近づくものなら、盾を構えた我々の前衛兵に、容赦なく斬り殺されるだけだ。かつ、促成栽培された新兵達が死を覚悟して勇敢に進めるわけもない。
「無能無能!!全員ぶち殺してしまえ"!!とっととこの泥試合を終わらせろ!」
白髪混じりの兵長、雷は兵士たちに怒鳴り込む。
「喝、喝、喝!」
そして、狗奴国の襲撃は失敗に終わる。
彼らは六日間をかけて、二千人をも超える大量の死者数を排出してしまったのであった。
邪馬台国側の圧勝。
邪馬台国は均衡状態を装い、わざと長期戦に持ち込むことで、狗奴国から大量の兵士が動員されることを望んでいた。拮抗の雰囲気を醸し出すことで、彼らのギャンブル精神を刺激したのだ。あともうちょい、あともうちょいで、勝てるのではないかと。
狗奴国はまんまと踊らされたのである。
______
第四話「家族」
「.........んぅ」
「おっ!!!生平くんおはよう!」
焼き鮭の香ばしいかおりが立つ。
「おはようございます...」
眠気まなこをこすり、家の中を見渡す。
ああそうか、錦助さんにおぶられる中で僕は赤ちゃんのように眠ってしまっていたのか。
恥ずかしいというか、情けないというか。
「もうすぐ夕飯ができるから、そのまま起きていてねー」
錦助は扇を仰いで焚き火の火力を上げる。僕は彼の背中を見つめる。彼の寛大さは背中姿からも感じ取ることができた。
「其れにしても、君はホント無茶するよね」
「本当にごめんなさい。ご迷惑をかけてしまって。ご馳走になったらすぐ帰りますので...」
僕は頭を下げ、申し訳なさそうな顔をする。
「帰るって彼処に戻るつもりかい。なに迷惑なことはないさ、しばらくはここに泊まっていくといいよ」
「本当ですか!」
ああ、良かった。
お人好しで寛大な彼のことだ。生活に困っている貧民、社会的弱者を野放しにはしないだろう。そう考え、捨て身の覚悟で動いた甲斐があったものだ。
“人情”は素晴らしい。
錦助は独り言を呟く。
「そういやお裾分けしてもらったリンゴがあったな......」
彼は箪笥の引き戸を開けると呆れ顔になって顔を顰た。
「......うわ、もう無くなってる」
ザルの中にいくつか入っていたのであろうリンゴの山は、すでに空っぽになっていたのであった。
「えっ!大丈夫ですか!?...空き巣に盗まれましたか」
「いいや、多分ここの同居人が全部食べちゃったんだ。全く、あれほど言ったのに」
「同居人?」
錦助さんと他に誰かこの家に住んでいるのだろうか。
「ああ、夜穉っていう女の子を此処に住まわしてるんだ......」
女の子、大食い人間...?
生平の頭に一人の人間の姿が浮かんだ。
ギシギシと高床式住居の外階段が鈍く鳴る。
「ただいま〜」
「噂をすればだね」
僕は目を瞠る。
やはり、そこに現れたのは、先週、定食屋 烬北で客を誑し込んではタダ飯を平らげたアイツだった。
「まったく、クソみたいな街だよここは。早く引っ越そ、錦々《きんきん》」
小柄な体格で、吊り目の整った顔立ち。
前髪を半分垂らし、洒落た雰囲気がある。
「......」
「......」
沈黙。僕と少女は気まづくなると錦助に目を逸らし、助けを乞いた。
「こ、この人だれ?錦々の友達?」
どうやら彼女は僕のことは覚えていない様子であった。いや、知らないフリをしているのかは知らないが、これから同居していくのならあの時の悪事については目を瞑っておいた方がいいだろう。
「うーん。まぁ友達みたいなものかな!」
錦助は僕に微笑みを見せる。僕もつられて微笑み、少女、夜穉に律儀に挨拶をする。
「生平といいます。錦助さんにはいつもお世話になってます」
はて彼らはどう言った関係なのだろう。同棲しているということは、夫婦関係にあるという事だろうか。かなり歳の差はあるように見受けられるが...。
僕への返答として、少女は畏まった態度で目を瞑り、上品に礼をした。
「夜穉と申します。趣味は花飾り作りと、白鳥の舞踊りです。ご機嫌麗しゅう、生平さん」
「えっ!?いつからそんな趣味はじめたの」
錦助は不思議そうな顔をしている。
「あら?言っていませんでしたか?それが私の最近の趣味でしてよ」
「そうなんだ、あれ!その足の怪我どうしたの」
「ああ、これはさっきケンカ...じゃなくて。踊りのお稽古の際に、転んでしまってできたものですわよ」
「......ふーん」
夜穉は引きつった笑みを見せる。
僕は苦笑う。
「お二人は、ご夫婦なんですか?」
「ハハハっ!!!まさか!!!!!」
壁にもたれ掛かる夜穉は大声をあげて笑い、木造の床をバシバシ叩いては、僕を睨んだ。
「お前、舐めたこと言ってると殺すぞ」
「ご....ごめん」
「こらこら、もう夜遅いから大声あげないで」
いや、指摘するのはそこじゃないだろう錦助さん........。
「夜穉はね、卑弥呼様に命を助けられたんだよ」
卑弥呼。その人名を聞いて固唾を飲む。
「へ?そんな覚えないけどな」
「何を言うのさ。もし君があの村に留まっていたら、村のみんなに、殺されてたかもしれないんだよ」
「さぁ」
「...なにかあったんですか?」
夜穉は孤児院
時々、孤児院を抜け出しては村で暴れ回り、村人達を困らせていたと言う。空き巣に万引き、奇声を発しながら村の子供達を追いかけ回したり、通りすがりの人々を片っ端から罵ったり、村中に家畜を大量解放したりと。かなりの厄介者であったようだ。
そんな中、桃嫮街から卑弥呼とその役人達がやってきたのだ。当時村で使用されていた農耕具を生産効率向上の為に石製から鉄製へ転換し、
新しい国の方針や法律の指南、国からの数々の物資提供。それらを目的として訪れたらしく、錦助もまた役員の業務としてそこに同行していたのだ。
何故わざわざ卑弥呼も同席する必要があるのか。それは邪馬台国民達に安心感のような物を与えるためだと錦助は言う。テレビがないこの時代では、自分たちのリーダーが健在なのか知る術は、対面する事でしか得られない。
「なんだ、国はは俺たちを放置しやがって。俺たちがどれだけ貧しいか、思い知らせてやる」「全く国の実情がわからない、王は一体今誰がやっているんだ?不安だなぁ」
「おい、王がいま居ないらしいぜ。オレら力合わせて革命を巻き起こすぞ!」
コミュニケーション不足は諸悪の根源だ。
可笑しな勘違いを起こされたり、知らぬ間に恨みを買われかねない。だからこそ、定期的に女王は顔を出し、情報や物資を村長、町長。そこの役人たちに提供しているのだという。
外出禁止の孤児院からいつも通り脱走して村で暴れていた夜穉は、周りに親衛隊を引き連れる卑弥呼に遭遇し、生意気な態度発言を見せた。おいババア、見かけねぇ顔だな。と。
それで、「握手しよう」と卑弥呼に手を差し出したらしい。卑弥呼は微笑みそれに応じたが、なんと夜穉の手には家畜として買われていた豚の糞を塗りたくっていたらしく...。
被害を受けた当の本人は匂いを嗅いで高笑いを上げたそうだが。
「あの時の村人達の目は凄かったよ。みんな怒り狂っていた顔をしていてね」
「私も。いつもより場が凍ってたから、時が止まった感じがしてビビったよ」
「...連帯責任で皆んな処刑されるかもしれないと恐れたんですかね」
「だね、権力には誰でも怯えるさ」
錦助によって次々と卓上に食事が並べられていく。
「夜穉ちゃんやるね」
「ふふーん。まぁな!」
鼻を伸ばしてどやがる少女。引取先に錦助さんを選ばれる理由がなんとなくわかる気がする。
「さ!夕飯できたよ、食べよう〜」
「わああいただきますー!」
僕は呟く。
「僕も、卑弥呼さんに会えるのかな」
「あぁ!生平くんはまだ会ったことないんだったね。そうだねーもうすぐ女王祭が始まるから、その時にお目にかかれるよ!」
女王祭。四日間にわたって行われる桃嫮街主催のイベント。各町村の行商人が挙って参加し、桃嫮街へ集う。果実や食物特産品、彫刻、絵画美術品。衣類に日用品に娯楽品、ありとあらゆる品物が持ち運ばれ、陳列される。客を含め、毎年五千をも超える人々が訪れるという一大行事である。
そのメインイベントが最終日に行われる「女王道中」であり、普段人前に顔を出さない卑弥呼が皆の前に現れ、何やらパフォーマンスを披露するらしい。錦助は役員として出勤するべく、祭り期間中は桃嫮街に滞在するため、みんなで行こうという話になった。
「それじゃあ、今日はもう寝ようか」
二人でしばらく話している間に、すっかり寝静まっていた夜穉にそっと毛布を掛ける錦助。
「今日から僕らは家族だよ」
二人の過去を思いながらか、彼は優しく微笑む。
第五話「秀才青年」
蓏恫町立・白兵士養成学校 〜救命技術・授業風景〜
「登山中、呼吸をしていない人間を見つけた。兵士達はそれを遺体だと判断し、すぐその場で土葬した。...さて、問題点はどこか述べよ」
生徒達は黙り込み、解答権のバトンを渡されぬようにと目を逸らしている。この教官の講義は、はっきり言って地獄だ。
そう皆は思っている。
「おい紋波、答えてみろ」
「は、はい!」
突如指名され、あたふたと立ち上がるクラスメイト。授業態度は悪く成績もあまり芳しくはない彼のことだ、これから下手なこと言って怒鳴られるのだろうと容易に想像できる。
「えっと...遺体をすぐその場で土葬するのは倫理的に宜しくないかと...」
「というと?」
「い、遺族を探し出して、最後に顔合わせさせるべきです」
「なにを言ってるんだ貴様はっ!そんな法律がどこにある?!」
紋波の顔が引き攣る。いい気味である。
「遺族を探している間に遺体の腐敗化はどんどん進んでいくだろう。ではハエが常に集り、ウジが大量発生している肉体を、お前は何年間もひたすら背中にしょって運び続けるのか?馬鹿馬鹿しい。俺なら、山に捨てて熊にでも食わせてやるな」
「すみません...」小さな声で呟き、紋波は静かに椅子に腰を下ろしていく。
「おい、誰が座っていいと言った?」
「は、すみません!!!」
教官は紋波に射るような眼差しを向ける。迸る眼光は獲物を狙う猟師そのものだ。
「いいかお前ら!兵士たるもの、規則と合理のみを徹底しろ!くだらない感情に支配されて意思決定を行うな!」
「「はい!」」
生徒達が呼吸を合わせる。
「そもそも俺が訊きたいのはそこではない」
教官の利根皮がため息をつく。
彼は白兵歴十五年の実務経験のある大ベテランであり、白兵局の副曲長のポストまで上り詰めたエリートである。引退後、一軍教師の資格を取得して現在は非常勤講師としてこの学校に勤めている。「蛇は殺して土に埋め、馬は食わずに走らせろ」というのが彼のモットー。厳格な性格であるが、個人的には敬愛してやまない人物だ。
「では生平くん、発言したまえ」
紋波の次に当てられたのは僕だった。全くいい避雷針である。感謝するぞ。
古びた椅子の軋音をたてずに、僕は静かに立ちあがった。
「生死の判別が適当でないことが問題だと考えます。...呼吸していないからからといって死んでいるとは限りません。ショックで一時的に呼吸が浅くなっている可能性があるからです」
利根皮がニヤつく。
「ほう、ではどう判断する」
「たとえば、なにか紐状のもので相手の指を強く縛ってみます。血液が循環しているのであれば。生きているのであれば、指の先端は青黒く腫れ上がります。白いままであれば死んでいると判断していいでしょう。拍動と血液、この両方を確認する事が大切であります」
利根皮が頷く。
「その通り。さすがは優等生だな」
彼が何故、誰もが羨むような最高のポストを投げ捨てたのか僕は気になりオリエンテーション時に聞いてみた。彼は赤裸々に告白した。
「俺は騙されたんだ。たった一人の如何様師によって財産、名誉地位。全てを奪われた」
「何者ですか?」
黒歴史を恥じたのかそれ以上は教えてくれなかった。しかし教官は挫けた様子ではなく、
「もう済んだ話さ、其奴は、もうとっくのとうに死んでいる」
と、いやらしい笑みを浮かべるのであった。
__
「あぁ〜来週から中間考査かぁ...しんどー」
怠そうにテキストの入ったカバンを首にぶら下げ、空を眺める喬篋。
僕は同期で入った同じ5班のメンバーと授業終わりの帰り道を歩いていた。
「なぁ生平。解剖学と緊急救助学。それと法律もやばいんだよね俺。頼む!教えてくれ〜」
成績不良者の玖劉がただをこねてせがむ。
「ああ、全然構わないよ」
「ありがとう〜〜」
微笑んだ僕の身体に、強く抱きついて感謝の意を示す玖劉。
「駄目だよ!生平の勉強する時間が無くなっちゃうでしょ!授業を真面目に聞いてないのが悪いんだから」
「なんだよ、生平が良いっていうなら別にいいだろ!」
横にいた華沽が、僕に抱きつく玖劉を強引に引き剥がす。
「生平は優しいから断れないんだよ。それに私だってもう先に予約取ってるし...!」
「いや、お前も勉強時間奪おうとしてるんじゃねぇか!」
「私は少しだけだから!分からないところ」
険悪なムードが流れる。そこで僕は良い提案を出した。
「よし!じゃあ勉強会を開こう!学校の自習室は今改装中で使えないから。...みんなで、吟君の家に集まろう!」
「はい...?」
隅で静かに歩いていた吟箔がひきつった顔をする。彼の成績は全て僕に次いで二位。口数が少なく冷静沈着で、努力家。二年前に兵士だった父を亡くしており、以降は母子家庭の中、弟と三人で暮らしている。白兵学校にやってきたのも、何か因縁があってのことかもしれない。
「厳しいかな...?」
「いやまぁ、別に良いけど...」
吟箔は頭を掻きながら承諾する。何ゆえ俺の家を選ぶんだと頭上にはてなマークが浮かんでいるようだ。
「おし!じゃあきまりだな!」
にんまり笑顔で玖劉がはしゃぐ。ただ、他のメンバーは少し渋っている様子であった。なにぶん、吟箔から漂う冷たいオーラがみんなは苦手らしい。
「吟箔さんって、どこら辺に住んでるんですか?」
華沽が敬語で尋ねる。班の編成は三十日毎に変わり、この新五班が編成されてからまだ、十日しか経ってない為、仕方ないと言えば仕方ないのだが、できるだけ彼らには早く仲良くなって欲しいものである。
「......ここから一〇分くらい歩く」
「おっ近いな!っしゃいくぞ〜」
吟箔は外面こそ冷たいものの、家族の前では全く異なる一面を見せる。普段は硬い無表情を貫いているが、母親と弟の前では温和で優しさに満ちた表情をするのだ。
まだ僕らに心を開いていない証拠である。
彼は今、一人暮らしをしている自分の家に向かおうとしている。母と弟は一時間離れた実家に居ると勘違いしているようだが、今彼らが居るのは彼の一人暮らしハウスである。
勘違いしているからこそ、僕らを家に入れることを承諾したのだろう。誰だって、自分の違う一面を見られたくないものだ。
「着きました、ここです」
「なんだ、結構でかい家じゃんかよ!」
「おい、マナーないのかよ」
玖劉は感心して、すかさず家のドアを開ける。喬篋はそれを注意するものの、構わず中へ入っていく玖劉。それに続いて吟箔、僕、華沽も家の中へお邪魔する。そして吟箔は、ドアの先に自分の家族がいることに驚いた顔をする。
「あら、おかえり!!いやだ、こんな沢山お友達連れてきちゃって!さぁさ、みんなこっちおいで」
腹の肥えた吟箔の母は急いで玄関へ駆け寄る。
七人にしては狭めの食卓には豪勢な食事が並べられていた。
「こんちゃ!吟箔のクラスメイト、玖劉です!あ、そっちは弟さんですか?ちっちゃくて可愛い!」
「そうでしょ、最近ママって呼べるようになったのよ〜」
弟くんは大きなクリンクリンの目で、指をしゃぶりながらこちらを不思議そうにみている。
「お、同じくクラスメイトのは、華沽です!突然押しかけてすみません!」
「あらあなた紅一点じゃない。モテモテね」
「い、いやそんな!」
揶揄う吟箔の母と緊張して長い前髪を解す華沽。
「喬篋です、お邪魔します」
ナルシズム気味な彼は済ました顔で軽く頭を下げる。
「生平です!!お母さんこの前はどうも!」
「あらあら生平くん、どうもねぇ」
吟箔が僕の横顔を見て困惑する。
「あの、どういうことですか?これ」
「いやぁ、この前たまたま会ってね。君の家でパーティを開こうって企画してたんだ」
「え、いつから知り合いに?」
「まぁまぁいいじゃないの!今日は楽しもうよ。なにせ今日はきみの、誕生日じゃないか!」
「「お誕生日おめでと〜!!」」
皆が口合わせて吟箔を祝う。
サプライズだ。前々から皆に頼んでいたのだ。中々心開いてくれないものなので、これを機にみんなと打ち解けられるかと思っての企みもあった。テスト後から始まる予定のグループワークを楽しくやってもらう事に繋がってくるだろう。当たり前だが、組織の成功の基盤とは絆で構築されるものである。即ち信頼と友情の軌跡だ。
____まぁなんやかんやで、俺は首席で卒業し、容易に白兵の資格試験を合格。栄えあるライセンスを手に入れた。




