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第5話 追い剝ぎ

冒険者ギルドの受付には、可愛らしい女の子が居た。街中でも何人かいたけど、ケモミミ尻尾付きの獣人だ。何というか、すごく若く見えるんだけど……。


「こらマリン。目を離した隙に受付に行かない。

すいません、私の子供か何か粗相をしましたか?」

「いえ、別に。

お子さんを連れて職場で働いているんですね」

「ここのマスターは寛容ですので……」

「失礼ですが、旦那さんは?」

「本当に失礼ですね。2年前、ここで依頼を受けて以降帰ってきていません」


と思ったら、同じような猫耳尻尾付きのおばさんが出て来る。ええ……あの可愛らしい女の子が、こんなおばさんから産まれるの?


というか、シングルマザーなのね。まあ、人の家の事情なんか心底どうでも良いけど。とりあえず偉そうな人の仲介で、冒険者登録をしてもらう。


「こちらが冒険者カードになります。登録したばかりですので、ランクはGからのスタートとなります」

「ランクはGからA、そしてSという感じ?」

「その認識で大丈夫です。Gランクの内は討伐依頼を受けることが出来ませんが、昇級試験を受けてFランクになれば解禁されますよ。今すぐ受けられますか?」

「その昇級試験というのは、いつでも受けられるんですか?」

「GランクからFランクの昇級試験はいつでも大丈夫です」


冒険者登録をすると冒険者カードというものを貰ったけど、残高のところにキッチリ借金10万円と書かれているし、返済期限が残り100日と表示されている。あと100日で10万円の借金を返済しないといけない少女。力か頭が無いと、結構厳しいのかな?どう足掻いても生活費は必要だしね。亜空間にテントと水とカロリーメイトがあるから、当分は大丈夫なんだけど。


昇級試験なるものもあるそうだけど、今日は日が暮れて来たのでどこかの宿屋に泊まることにする。冒険者ギルドから出て、バックからおにぎりを取り出し、もぐもぐと食べながら街を徘徊。後ろから6人の集団が付いてきていることを確認して、路地裏に入る。


これは「おい姉ちゃん、持ってる有り金全部寄越しな」みたいな絡まれ方をするのかな。なんて思っていたら、背後から鉄パイプのようなものでいきなり殴られそうになる。前方からも明らかに後ろ6人の仲間っぽい2人が差し迫っているし……8人がかりで女の子1人を身包み剥がそうとするとか、異世界怖すぎない?


いや、10万円の回収のお仕事を8人がかりですると考えたら、1人頭1万2500円の利益が出る。十分にやる理由はあるか。借金を返せなかったら奴隷になるということを考えると、この国自体が異世界人に優しくない。


初撃を当てられなかった8人の男性陣のリーダーっぽい人は、無言で追撃をしてくる。この異世界、修羅の国過ぎない?普通、女の子を襲うんだから「うへへへへ、あいつを最初に犯すのは俺な?」みたいな会話をして油断しててよ。淡々と襲うとか、お仕事感出すの辞めてくれません?


二撃目は躱せそうにもなかったので、魔力を込めた手で受け止める。そのまま足を思いっきり引いた状態から、前方へ蹴りだした。狙いは当然、男性の急所。所詮ヤクザキックでリーダー格の男を蹲らせた後は、その男の顔面へ左フックを入れる。あ、鼻が折れたかな?


「ま、待て。我々はギルドマスターの依頼でお前を試したのだ」


リーダーっぽいイケメンが倒れ伏したので、首元を持って持ち上げ、更に追撃を加えようとしたところで、隣にいる人がギルドマスターからの依頼云々を言い出し、手が止まる。その男性の方へ振り向き、嘘は言ってないことを確認したので……再度リーダーの顔面に、右ストレートを連打する。


あの初撃は私が普通の人間で、かつ躱さなかったら死んでいてもおかしくないような攻撃だった。異世界人相手に、そういうことをするのが慣習になっている可能性もあるし……そもそもいきなり攻撃してきた人の言うことなんて信じる気が起きない。


鼻が折れ、歯が欠け、両目が腫れ上がって気絶したことを確認して路地裏の排水溝に投げ捨てる。そして次の男性を捕まえると、無意味なことに抵抗をし始めたけど、後頭部を持ち、顔面に膝キックをしたら黙った。


(キルラルド。拳に身体硬化魔法をお願い)

『契約者よ、我が望みは闘争であって、弱い者いじめではないぞ?あと、先ほどまで契約者自身が使ってなかったか?』

(自分で身体強化魔法と身体硬化魔法を同時に使おうとすると、手加減が難しいの。殺しちゃうの。どうせこの人達、あのギルド内では結構な上位格だろうし……となるとB~Cランクぐらいだから、弱い者いじめにはならない。それに、弱い者いじめをしに来た人に躊躇はしなくて良くない?)

『……まあ、よかろう。襲った方が悪い。一先ず、全身を隕鉄並みにしてやろう』


拳をすごく硬くして顔面を殴ると、殴った相手の頭蓋骨が割れる感覚を覚える。この時点で何故か撤退を始める男達。君たち、まだ6人いるじゃん。相手は女の子1人だよ?襲い掛かってきてよ。それに、この空間を切り取って歪めたから外に向かって走っても出られない。話は至極単純。この一本道は、ループします。ループさせます。逃げられません。


逃げられないことが分かって絶望したのか、とうとう刃物や武器を持って襲い掛かって来たけど、私の身体をめっちゃ硬くしたら剣を弾いたし、ダメージはないっぽい。で、こちらからは1人ずつ締め上げて顔面を殴り続ける。一応、殺してはないから大丈夫。


残り全員を気絶させるのに、結局10分もかからなかった。とりあえず財布を8つと、一番使えそうな短剣を頂戴して路地裏を抜ける。冒険者登録を行ってから、30分で、50万。この世界に来た異世界人、予想していた以上に多そうだけど、借金返済のRTAは私が1位かな。

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[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >拳をすごく硬くして顔面を殴ると、殴った相手の頭蓋骨が割れる感覚を覚える。 (中略) >一応、殺してはないから大丈夫。 いや、殺してはなくて…
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