第21話 ステータス
邪神にステータスとレベルのことを聞いたワタル君は、めっちゃ興味を示してその国に行きたいと言ったので、キルラルドの配下を借りてその国へ飛ぶ。キルラルドに3人乗るのはちょっと不安定になりそうだし、キルラルドが男に股がられるのは嫌とか我儘言ったのでこうなった。
「国境が山脈で、超えた先にはイスブルク王国。地図的にはスペインかな」
「まさかカスミって、ヨーロッパの国名、全部頭に入ってるのか?」
「むしろ高2でヨーロッパの主要国の位置を知らないってヤバくない?」
「……悪かったな、馬鹿で」
国境を越え、イスブルクの北の街まで来たので、冒険者ギルドへと赴く。入ったらよそ者だということがすぐに分かったのか、ギルドは歓待ムードになったけど、これは何かあるな。
「冒険者ギルドに登録したことはある?バーテック王国の方で」
「一回したことがあるけど、ここの冒険者ギルドも同じ感じなのか?」
「それは知らない。でもまあ、同じようなものだと思う」
ワタル君と、小声で会話をする。ワタル君が夜に殺されていたのは、狙われていたからとのこと。ジャージにTシャツと異世界人って丸わかりの恰好をしているからね。初期金の10万円を何度奪われたんだろう。ワタル君もワタル君で、返り討ちにしようと何度もループして挑戦していたようだけど。血気盛んな男の子だなあ。
「冒険者カードと共に、ステータスカードも発行出来ますがどうされますか?」
「お願いします!」
ワタル君はステータスカードの発行に興味津々って感じだけど、なんか嫌な予感がする。そもそもこの話を持って来たのが邪神という時点で、警戒するべきだったのかもしれない。
なんかの容器の口に手を入れるよう誘導されるワタル君だけど、中には魔法陣が見える。これは、解析されたくないから容器を使っているのかな?そんなものがあっても、透視出来るから意味ないんだけど……。
……あー、なるほど。遺伝子に作用するのか。倒した敵というか、殺した相手の生命力や魔力を利用して、生物として進化するタイプの術式。
『一見すると、無害なようだが……?』
(キルラルドの目が節穴なことは把握済みだけど、流石にこれは分かって欲しいなあ。
……生物として進化した時点で、普通の人と子供を作れなくなるよ)
『なるほど、とんだトラップだな。しかし、冒険者同士であれば可能だろう?』
(いや、これは無理だね。理論上、同じ個体のモンスターを同じ数だけ殺した冒険者同士なら子供を作れるだろうけど……全く同じ個体というのが、この世に存在していると思う?)
「ワタル君、ちょっと待とうか」
「え?何で?」
「ステータスカードを発行した時のデメリットぐらい、聞いてから行動しようよ」
私の言葉に、小さく舌打ちをするギルド職員がいたのを私は見逃さなかった。異世界人っていうことはバレてそうだし、随分と異世界人には冷たい世界だと感じる。そして改めてステータスカードの利点を話し始めるギルド職員だけど、肝心の子供を作れないという欠点は話そうとしない。
「……え、子供を作れないって後で知られた方が暴動になると思うんだけど何で説明しないの?」
「…………え?」
ついにしびれを切らして、自分から言うけど向こうは想定外みたいな顔をしている。ああこれ、この受付の人は何も知らないのか。
直後、パァンと発砲音がして私の身体を貫く。異世界人がいっぱいいるんだから、そりゃ銃ぐらい存在しているよね。にしても、不都合な存在なら女の子でも背中を撃ち抜くとか随分と狂っている世界だと思うよ。
「カスミ様!?」
「あー、痛い。痛いけどこのぐらいならすぐ治るから大丈夫だよ」
なんにせよ、リアマリアちゃんが撃たれなくて良かった。最上級悪魔には、「再生」の特性を持つ悪魔が多い。その力を借りることが出来る以上、私が大怪我をして死ぬということはない。一瞬で蒸発するとか即死魔法とかだと間に合わないけど、大概の攻撃では死なないんじゃないかな?ちなみに死んでも時間が巻き戻るし、時間を巻き戻してもどうしようもない時とか時間を巻き戻せない時用に身体のストックがほぼ無限にある。
もちろん、私の命の危機ということで色んな契約悪魔達が飛び出そうとしたけど引き留める。ここで百鬼夜行をしたら指名手配犯一直線だよ。既に今の時点でそうなりそうだけど、わざわざ理由を作りにいく必要もないでしょ。
撃った人を即座に取り押さえて、銃を奪う。ふーん、単発式の玩具みたいな銃だね。思っていたよりもこの異世界は技術が進んでいたし、思っていた以上に進んではいないみたい。
お、冒険者カード発見。この人の預金は3000万円か。なら2600万円程度は貰っても良いよね?殺人未遂を示談で解決して貰えるんだから、感謝してほしいぐらいだよ。
「TS転生したから野球で無双する」の更新再開をするため、こちらの更新を一旦停止致します。申し訳ございませんが、あちらの完結を優先したいと思います。




