第17話 ループ
毎日が日曜日なら良いのにな、と思ったことが私にはある。というか誰にでもあると思う。特に日曜日の夕方なんかは「明日も日曜日なら良いのに」と多くの人は思うはず。でも毎日が日曜日の状態になると、かなり精神的にはキツイことが分かった。いや、時間が進むならゲームとかにも打ち込めるんだろうけど、時間が巻き戻るタイプの「毎日が日曜日」は精神的に苦しい。
……私が古物商店へ行って、手に入れた手書きの黒魔術書。それが【毎日がeveryday】だった。曜日に関わる7つの黒魔術が書かれている、一見すると普通の黒魔術の本。しかし一つ一つが強力過ぎるというか、悪質過ぎるので私は封印して亜空間の奥底へ眠らせている。
その【毎日がeveryday】にあった『毎日が日曜日』という黒魔術は、解除方法のない永続的時間遡行魔術だ。何がヤバイって、突破方法を見つけるのに黒魔術の天才である私が1600日ぐらいかかったってことだよね。いや本当、あの時は気が狂うかと思った。
具体的な話をすると、私は2017年10月15日を繰り返した。10月15日23時59分の3分後が、10月15日0時2分になる黒魔術で、解除方法が書いてないために永遠に続く日曜日という状況に。最終的には時間軸を操って10月16日へ突入することで強制解除したけど、あの苦労はもう一度したくない。
というかあの禁書、マジで性格が悪いんだよ。学校や会社を爆発させたい人向けに、と書かれた『爆発させたい月曜日』は文字通り自身を中心とした半径100㎞圏内が更地になるような爆発を起こす黒魔術だし、『谷間の水曜日』なんかは……まあ、ずっと封印しておこうか。
とにかく、時間ループを脱出するだけなら時間軸をずらして強制的に明日へしてしまえば良い気がするけど……それだけだと解決しない気がする。そもそも術の大元が分かってないし、次のループ開始時にこの世界中の人間を監視するよう大量の下級悪魔を放つ。
ちなみに、時間がループしまくっていることに異様な恐怖を抱いていたリアマリアちゃんは時間が逆行する感覚にも慣れ始めた。順応性を高め過ぎた結果がこれですよ。そろそろSAN値は0になってる。私の手でSAN値0に出来なかったことだけが心残りだね。
7回目のループ時に、一斉に下級悪魔達を解き放って色んな人間の監視を任せる。私と契約している悪魔は全員記憶の保護があるから、ループ時に記憶が忘却されない。よって、誰が時間を巻き戻しているかが今回のループで分かる。
冒険者ギルドへの討伐達成報告とかは、しばらくしなくて良いね。毎回報告するのも面倒だし、冒険者ギルド関係はループが解除されてからで良いよ。
「これ、解決するんでしょうか……?記憶の保持なんて、しなくても良いのでは……?」
「私が知らない内に、面白そうな問題が解決することは容認出来ないよ。あと世界が崩壊したらやだし」
「世界が、崩壊?」
「時間を巻き戻すような奴と、勇者が対峙しているとかそういう可能性だってあるじゃん。自分が知らない内に、世界の危機とか勘弁して欲しいね」
リアマリアちゃんは記憶の保持なんていらないとか言い出したけど、もう解除できないです。記憶を忘却させるのも難しいしね。面倒だからやらないだけだけど。そして怪しげな奴が数人見つかったとのことなので、次のループで特定できるかな。
夜になって、またループが始まる。これで8回目だし、死に戻りで確定もした。見た目は、普通の男子高校生だね。手に持っているのは十徳ナイフ的なものかな?あの人が死んだら時間が巻き戻って草原に立っていて、手慣れた動作で襲いかかって来る人達を殺している。ふーむ。最初に短期間で連続してループしてたのはあの盗賊団っぽい存在に襲われていたからかな。
ここから結構な距離があるから、合流するにはループの起点から1時間は必要。手慣れた動作を見るに、あの人は記憶の保持が為されていて、その記憶を有効に使っている。何あの主人公っぽい人。
ループを意図的にしているかどうかは……顔を見たら分かるね。どう見ても、強力な呪術のせいで逆行してるし、本人の顔色は悪い。これは、夜の相手は相当絶望的なのかな?
1人で異世界RTAをしているけど、求められているのはTAS的な動きっぽい。魔物が襲い掛かって来て、即座に狩る辺りは順応性も高そう。さて、次の次のループ辺りで合流するために準備でもしようか。
『我の出番か』
(殺すことしかできない殺戮ドラゴンは引っ込んでいて下さい。
ラウゴールに時間が巻き戻る時間を延ばして貰うだけだよ)
『ほう?時間が巻き戻るのはほぼ一瞬。それを引き延ばすのか』
(間違いなく、気持ち悪くなるからリアマリアちゃんは吐くかもね。……美少女が吐く姿って興奮しない?)
時間が戻ったら、必ず大っ嫌いなシイタケを口に含んでいるリアマリアちゃん。その上で気分が悪い状態になったら……言わずもがなって感じだね。




