アーモンドアイ
府中競馬場の帰り路、競馬ファンの言葉を聞いた。
「もし、アーモンドアイが牡馬であったら」
テレビのスポーツ番組、アナウンサーの言葉を聞いた。
「もし、アーモンドアイが牡馬であったら」
彼女には関係のない話だ。
彼女が感じるのは、無数の人びとの歓声だけだ。
深夜の小田急線、酔っ払ったサラリーマンの言葉を聞いた。
「アーモンドアイより強い馬はいない」
レースの翌日の新聞、評論家の言葉を聞いた。
「アーモンドアイより強い馬はいない」
彼女には関係のない話だ。
彼女が感じるのは、雨上がりの芝生の硬さだけだ。
彼女の先を走るものは誰もいない。
百年の歴史、その先頭を彼女は走り続けているのだ。