遅すぎた恋
夏祭り、地元で行われる小さな祭り
少し離れたところに双葉葵がとある少女といた。
「付き合う人ができたの」
祭りの賑やかさから少し離れた図書館の駐輪場で聞いた、桐山美咲が放った静かな言葉。
祭囃子の音が一瞬聞こえなくなった。
…遅すぎた恋…
出会いは中学三年、二学期の事だった。
周りは転校生が来ると騒いでいた。
ほんの少し違うセーラー服
背負ってるカバンも違っていて
あの子が転校生だと一目見てわかる。
(転校生、背が高い)
廊下のすれ違いで思った葵の印象はそれだけ。
ざわつく中中性的な見た目の美咲に思ったのはその感情だけ。
朝の朝礼を終えたら隣のクラスに人だかりができていた。
他愛のない質問に美咲は当たり障りのない返答をしていたのが目に入った。
美咲のクラスメイトの那智が廊下を通り過ぎる私に声をかけてきた。
那智は朝読んでいる小説の話を振ってきたが
葵は何か分からないまま美咲に声をかけた。
「初めまして、双葉葵って言うの、よろしくね」
無愛想な声でよろしくと美咲は返答する。
何故だろうか、葵は美咲と友達になりたいと強く思った。
これが2人の出会いだ。
時が流れて距離を縮めていく葵と美咲。
美咲は葵に話しかけてきた
「私ね、前の学校では女の子からよく告白をされてたんだ」
静かに教えてくれた秘密
葵は違和感を感じることなく、嫌悪感もなく
そうなんだ、と一言返した。
胸がチクリと痛かった。
この痛みがなんなのか分からずにいた。
それでも君と友達になれるなら、と
葵はそばを離れなかった。
軽いスキンシップを受けていく度に
心臓がうるさかった。
美咲の家で膝枕をしたり、至近距離で会話する度に気づきたくない想いを募らせていった。
葵は遅かった。
何もかもが遅かった。
たくさん一緒にいて、沢山話す高校に上がったばかりのこと。
自分の気持ちにも何となく感ずき始めた頃だ。
美咲に彼女ができたと知った。
「おめでとう」
と一言言い切った葵はその瞬間
決定的な気持ちを理解した。
(ああ、私は美咲のことが…)
「私じゃないんだね」
とポソリ口から出た言葉
祭囃子でかき消されたその言葉
(私の恋は遅かった)
私達は祭囃子の中に戻る
ただ違ったのは
もう私はこの気持ちを伝えることが出来ないんだと言うことだった。
END
続きも書こうかと思っています。
読んでくださった皆様、拙い文書ですみません。
ありがとうございました。