テ、テンプレが起きるとは…これも転生者の運命か…!
初ゴブリン討伐からある程度時間が経ったが、未だに僕達は1階層にいる。
護衛が言うには、このダンジョンは結構広いらしい。
じゃあ浅いダンジョンなのかって言われるとそうでもないらしく、現在の最高到達層は36層のようだ。
もう既にゴブリンは3匹殺しているが、レベルアップはしていない。
ちなみにだが、魔物のステータスを【天眼】で確認してみたが、少々人間と違うようだ。
例を出すとこんな感じ。
ーーーーーーーーーー 1/1
種族名 ランク
名前 年齢 性別
レベル 26
生命力 B
魔力 R
攻撃力 O
防御力 L
敏捷性 Y
アビリティ
[ダークブラストスティンガーLV26]
ーーーーーーーーーー
人間とは違って、名前、年齢、性別の上に種族名が付いたり、スキルとかが存在せず、全部アビリティ っていうのになっている。
そして、種族名の横には強さの等級を大まかに表すランクというものが存在している。
最低が G なのは変わらないが、その次が GG GGG
ときて、F FF FFF という感じで、+- ではなく、数で段階を表している。
最大はSSSランクのようだ。
ラストの知識があっているのなら。
……最低ステータスの方は、勿論G-で人間と同じですよ?
……ふと、視線を感じた気がして周囲を見渡すが、僕とエルフィと、その前にいる護衛AとBしかいない。
気のせいだったのかな?
視線を戻すと、目の前に護衛Bがいてぶつかりそうになった。
急に立ち止まってどうしたんだ?
「おや?あれは」
何かを発見したっぽい。
もう1人と少し話をしてから、壁にゆっくりと近付いていっている。
「どうやら、この先に隠し通路があるみたいですね行ってみますか?」
隠し通路ときたか
勿論僕の回答は決まっている。
「隠し通路?ひょっとしたらお宝があるかも知れませんね私は行ってみたいです」
エルフィは賛成か。
まぁ、エルフィの家は子爵家だけど結構貧しいんだよね。
お金を稼ぎたいようだ。
「僕は反対です。隠し通路の先に何があるか分かりませんし、いくら護衛がいるといっても、危険な罠があったりするかも知れませんし」
「ラストくん、ここはまだ1階層ですよ?そんな危険なんてないですよ」
「そうですよ、まだ1階層です。罠の類は殆ど無いのであまり慎重にならなくてもよろしいと思いますが」
護衛まで賛成か。
僕にはどうしようもないっぽいね。
いくら伯爵家の次男だろうが、ダンジョンに潜るのは初めてだし、その上10歳だ。
精々、怖がっていると思われるだけだろう。
(俺も反対だな。何があるか分からんし)
お前には聞いていないよ。
でもまぁ、初めて意見が一致したな。
「まぁ、多数決で負けたのならしょうがないですね。行くことにしましょうか」
「では、少々壁から離れてください」
何をするんだ?
と思ったら魔法を使うようだ。
初魔法、よく観察してみよう。
「《風の精霊よ、我が願いに応え、力を貸し給え》
《ウィンド・ボール!》」
厨二かよ。
え、あの詠唱すんの?
間違いなく、僕だったら恥ずかしくて死ぬよ?あれ。
護衛Aが前に突き出している右手に、空気が集まって球が作られていく。
どんどん大きくなっていって、最終的にはハンドボール程度のサイズになった。
そして、ハンドボールサイズになったウィンド・ボールは勢いよく発射され、壁を破壊した。
結構威力があるようだ。
くっ僕は魔力が全く無いから魔法が使えないんだ。
<[願望]を獲得しました>
スキルを獲得する程魔法を欲しているのか僕は。
でも、あの詠唱はしたくないから無詠唱も欲しいな。
壊れた壁の先には横幅3m程、縦幅5m程の通路があった。
明かりはやや薄暗い感じで、所々苔が生えている。
近くに水源でもあるのかな?
あれ?今地面が光ったような
目を凝らして地面を確認してみると、青色のピンポン球程度の大きさの石があった。
淡い光を放つその石は結構綺麗で、吸い込まれそうだ。
【天眼】でちょっと見てみよう
ーーーーーーーーーー
ダンジョン専用転移石
レア度 C
説明
ダンジョン内で稀に生成される石。
手に入れたダンジョンで魔力を込め、呪文を唱えれば、石を持っている人物と、その人物に触れている人物、又は持ち物をダンジョンの何処かへランダム転移させる危険な石。
だが、凶悪な魔物に襲われている時などに使用することで逃げれるので、一定の需要が存在している。
呪文は「蒼き石よ、望む場所へと運べ」
ーーーーーーーーーー
転移○晶?
いえ、転移石です。
説明を見た感じ緊急離脱用っぽいけど、何処へ転移するのか分からないなら相当危険だよね。
それにしても、何故か嫌な予感を感じさせる通路だ。
僕の感覚がおかしいのか?
エルフィも護衛A、Bも何も感じてないみたいだけど。
〜〜〜〜〜
30分程歩いただろうか。
魔物1匹おらず、部屋すらも無い。
外れの通路を引いた可能性もありそうだな。
一応通路の突き当たりまでは目指すっぽいね。
なんか進む度にどんどん嫌な感覚は増加していっているが、大丈夫なんだろうか。
一応警告だけしておこうか。
「3人とも、少し聞いてください。この通路に入った時から少し嫌な予感がしていたんですが、奥に進む度にどんどん強くなっています。僕は今からでも引き返した方がいいと思います」
「ラストくんは心配しすぎですよ。ただ怖いだけなんじゃないですか?」
「大丈夫ですよ。私達は2人とも、全能力値がBは超えていますので、負ける事などありえません」
これはちょっと慢心が過ぎる気がしなくもないな。
おいラスト、お前はどう思う?
(俺もなんか嫌な予感がする。帰った方がいいと思うが、今までの行動が行動だから、帰るとしたら1人で帰ることになるだろうな。)
まぁそうだね。
言い方は悪いが、僕は次男、エルフィは女。
長男じゃないから、比較的いなくなっても構わない存在だ。
無理矢理帰ろうとしても無駄だろうね。
後さ、お前10歳なんだよな?とてもそうは思えないんだけど。
(お前の世界とは違って、こっちの世界の人間はちょっと成長が早いんだよ)
そういうもんかねぇ。
こっちの世界は目に見える危険が多過ぎるからなぁ。
草食動物が産まれてすぐ走れるようになるのと同じような感じで、成長が早いんだな。
ーーッ!?
おいおい
突き当たりまで来たのはいいけど、最早嫌な予感では済まされないぐらいの警告が頭から発せられてるぞ?
突き当たりには、特に扉とかは無くて、広めの空間があるだけだった。
だが、途轍もない程の恐怖を感じる。
一体ここに、何がいる?
「ここで、行き止まりのようですね」
体が、動かない。
なんなんだ?どうなってる?
「何もありませんでしたねもう時間も遅いですし、そろそろ帰りませんか?」
く、くる
何かが近付いてくる。
「?ラストくん、そんなに震えてどうしたんですか」
「ど、うしたじゃ、ないです、よ。何も、感じな、いんです、か?」
震えてまともに話す事すらも出来ない。
このまま、ここにいてはいけない。
早く逃げなければ。
「確かに、何か嫌な感じがーー」
ぐしゃり。
目の前で、護衛の1人が潰された。
「え?」
「なっ!?」
いる!
透明な何かが、そこにいる!
恐怖を押し込め。
無理矢理にでも、だ。
僕が転生する前、何を思った?
もう、後悔する人生は嫌だろ?
ここで、動かなきゃ、"主人公"になんて、なれない!
「【天眼】!」
右目の紋章が輝く。
見える。
敵が視える。
「見えるように、なれ!」
ーーーーーーーーーー
ハイド・ストーカー B
No name 0 男
レベル1
生命力 D
魔力 C-
攻撃力 B-
防御力 C-
敏捷性 B-
アビリティ
[ハイドLV1]
ーーーーーーーーーー
「Bランク、だとっ!?」
うちの護衛2人がかりでもCCランクを倒すのが精々だっていうのに、なんでこんなところに……
それに、どういうことなんだ?
年齢とレベルが初期値なのはどう考えてもおかしい。
これが示しているのは、こいつがつい最近産まれたという事になる。
だが、つい最近産まれたばかりなら、このステータスは絶対にありえない。
何故かって?
魔物はお互い殺しあって、レベルアップして進化するんだ。
だから、この魔物の年齢が0歳なのはありえないんだ。
どれだけ強かろうが、産まれたばかりの時は最高でもCCCランクが限界。
何かが、この魔物に関わっている。
す、数値化……
ーーーーーーーーーー
生命力 D (2500)
魔力 C- (3600)
攻撃力 B- (5000)
防御力 C- (3200)
敏捷性 B- (5000)
ーーーーーーーーーー
本気で、言ってんのか……
僕の数値は1桁なんだぞ?
それを……いきなり4桁に挑めと?
僕は……
僕は、どうすればいいんだよ……