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秋風に揺れるコスモス。

「先月の模試の結果返却された?どうだった?」

最後の夏休みが終わり、文化祭も体育祭も終わった10月半ば。

校内は受験モード一色だった。

毎週のようにテストや模擬試験が行われ、センター試験対策講座も始まった。


不確かな未来ほど不安なものはない。

半年後の自分のいる場所がわからない。

自分の進むべき道が正しいのか、

間違っているのかすらわからない。


混沌とした思いを抱えながら、私たちは進まなければならない。


「B判定 英語が下がった 夏夜は?」

「ギリギリCに入ったとこ…今回ちょっと自信あったのに」


黄金色に色づいた銀杏並木を眺めながら、どんよりと曇った空を見上げ、溜息をついた。

「いやな雲。」

まるで今の自分を表わしているかのような天気。

ますます気分が落ち込んでいく。


「イチは頭良くていいなー」

ポツリと呟いて、俯く。


まだ2か月ある。

しかし、気ばかりが焦ってどうしようもならない。

イチを責めたいわけではないのに。

イチと同じ大学に行きたいだけなのに。

表情も自然と暗くなっていく。


そんなとき、いつもイチは前向きに励ましてくれる。

「あとちょっと一緒にがんばろ」

そう言って、頭をなでて、笑ってくれる。


自分だって、同じ立場で大変なのに。

「息抜きにいいとこ連れてってやるよ」



いつもの帰り道からそれて、イチが連れてきてくれた場所は、一面、花で埋め尽くされた川原だった。


「キレー!!何これ!!コスモス?!すごい!!満開!!」

薄いピンクに、濃いピンク、白。

見渡す限り、コスモス畑が広がっている。


「だろ?この間偶然通って見つけた 絶対喜ぶと思ってさ」


笑うイチを見て、泣きそうになった。

自分のことでいっぱいいっぱいな自分。


相手を思いやる余裕が持てない。

イチはこんなにも私のことを思ってくれるのに。


「ありがとう 元気出た!!」

泣きそうになるのをこらえて、精一杯笑った。


雲間から、一筋の光がさしている。

秋風にコスモスが揺れる。


秋―――強くて優しい人になりたいと思った。あなたのように。何があってもめげないように。





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