ゴブリン討伐
遅くなりました。
「これで良いか。ゴブリン退治。」
ラティがクエスト内容らしきものが書かれた依頼書を指差して言ってきた。
「ゴブリン退治?ゴブリンって、あのゴブリン?」
「そうよ。それを10匹。報酬は銅貨10枚。」
「いや、銅貨とか言われても分からないんだけど・・・。」
「そうね。じゃあ簡単に説明するわ。お金の単位は上から白金貨、金貨、銀貨、銅貨の順に並んで、白金貨は金貨10枚の、金貨は銀貨10枚の、銀貨は銅貨100枚の価値があるわ。」
「銅貨は1枚1円なの?」
「マスター。元の世界の硬貨と同じだと思わない方がいいと思います。」
「それもそうね。そうするわ。」
「それで、どうするの?このクエストにする?」
「それにしようか。」
私たちは受付に依頼書を持って行き、近くの森へと向かった。
森の中は妙に静かで時折鳥の鳴き声が聞こえる程度。今は昼だが、夜になると何か出て来そうだ。
それから10分ほど歩くと、不意にラティが立ち止まった。
「いるね。3匹かな。」
「え!?どこ?どこなの?」
「あの木の裏。私が矢で1匹仕留めるから、あんたは残りの2匹仕留めてね。」
そう言ってラティは弓を構えて歩き出した。
「マスター。マスターは横から回り込む方がいいと思います。」
「了解。」
私はアズラエルの助言で横に回り込み、2本のショートソードを鞘から引き抜いた。
ゴブリンたちは俺たちに気づいていなかったようで、のんきに森を歩いていた。
すると突然、ラティが放った矢が飛んで来て、先頭にいたゴブリンに当たり、倒れた。残りの2匹は突然の事に驚いていた。俺は1匹目が倒れた瞬間に飛び出し、ゴブリンの首を跳ねた。 もう1匹は俺が出た瞬間に逃げていったが、それを見逃す俺じゃない。すぐさま追いつき、首を跳ねた。
ショートソードを納刀すると、ラティがやって来た。
「初討伐おめでとう。最初だから、もう少しビビるとおもってたわ。意外と殺す事に躊躇しないのね。」
「当たり前だ・・・でしょ。私は殺人に飢えています。私の生きがいの半分は常に何かを殺す事だったからです。」
「それ、ゲームの話でしょ。」
「バレた?」
俺が生きていたのはVR技術がかなり進んでいて、学校や会社もVR空間で。なんてとこがほとんどだった。
ゲームでも沢山のVRゲームが存在していた。
RPG・STG・ACG・AVG・SLGなどがあり、俺は一応全てやっていたが、ACGを特に集中的にやっていた。ACGの中でも、対人戦を主にやっていて、魔法を使ったり、銃を使ったり。拳ひとつで闘ったり、1v1や1v多数などと、様々な環境下で闘い、遂に俺は闘いにおいて右に出る物は居ないと豪語出来るまでになっていた。………が、それは当然ゲームの中での話なので、現実で再現など不可能だったのである。
「でも、この世界のこの身体なら今までやってきた事が全て出来そうだ。」
この身体は生前の俺と比べ物にならないくらい身体能力が高い。その為、ゲームでやっていた技法が役に立ちそうだ。魔法だってほとんど自分が思った通りに働いてくれる。色んなゲームでの魔法の知識を合わせれば夢の魔法コンボだって再現出来る。
「さぁ、残り7匹。サクッと終わらせようか。」
「そうね。じゃあ討伐の証、ゴブリンの耳取ってきて。」
「え?倒したら素材が自動的にドロップしたりーー」
「しないわよ。馬鹿じゃないの?此処は現実よ。ゲームじゃないの。当然死に戻りなんてしないわ。」
「はぁ。仕方ない。素材取ってくるか。」
私はそう言って2匹のゴブリンの耳を取っていった。うえぇ、気持ち悪い。
「トランスフォーメーション」
私は様々なゲームの中のひとつに存在していた収納魔法を唱えた。すると剥ぎ取ったゴブリンの耳が消えていった。
〈トランスフォーメーション〉
物体を使用者の魔力に変換し、結合する魔法。収納出来る大きさや数は、使用者の魔力量に比例する。
「へぇ、便利ね。その魔法。」
振り向くとラティがゴブリンの耳を巾着袋に入れていた。あの巾着袋は森の倉庫から取ってきた物だ。
「さて、今度こそ続きしようか。」
「そうね。」
私たちはそうしてゴブリン狩りを続行したのであった。