プロローグ
世界の破滅を導かんと手を伸ばした魔王は、異世界から召喚されし勇者の手によって滅び世界は平和を手にしたはずだった。一体誰が気付けただろう。魔王が滅びてたった3年後に、四方や聖国が見るも無残に滅びてしまうことを。
勇者召喚を行い、世界を守った聖国はこの世界の中心と呼ばれる程の力ある国であった。それも最早過去の話。それを見てある国主は愕然と恐怖に震え、またある国主はさもありなん、とほくそ笑んだ。彼らはそれぞれに噂を掴み囁き合う。
国が滅びた原因は、一体誰にあるのか。
「召喚された勇者様が権力欲しさに聖国の姫に反旗を翻した」
「本当の所は姫様が勇者様を利用した上手ひどく裏切ったとか」
「いや、本当は2人を手玉に取った悪い男がいたらしい」
それぞれに囁かれる噂は、どれも真実味がなく浮ついた物ばかり。滅びた国の醜聞は民達に一時の話題として提供され、年月を経て次第に風化していった。真実など、誰の耳にも届いてはいない。
――――やっと、時が巡ってきた。
男は独りほくそ笑む。これで彼の望みが叶うのだ。多くの犠牲を経てようやくここまで辿りついた。
今まで何度も何度も同じことを繰り返し、失敗を重ねてきた。まさか、“国1つ程度”の犠牲で十分だとは……。何年も、何十年も犠牲にして彼はようやく迷路の出口をその視界に捉えることが出来た。
これで、苦しいだけの生活は終わりだ。私は解放される!
男は歓喜に緩む顔を隠しもせずに扉へ手をかけた。
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