第1コア 俺はギアマスター
フーッ………
タバコを吹かし終え、水の入った灰皿に吸い殻を吸てる。
ボシュッと火が消えた音が鳴り、ゆっくりと立ち上がり身支度を整える。
スマホに財布をポケットに入れ、リュックの中身を確認。
完璧である。
リュックを背負い、家族に手を振り家を後にした。
「ほな、行ってきます!!!」
電車に揺らされること20分。
駅からそれほど遠くない目的地までスマホの地図を見ながら歩く。
時間に余裕があるのでコンビニでパンとお菓子を買い、ふわぁ…とあくびをする。
今日から新しい職場で働くことになった螺良隼汰。
職種は清掃員。
長年清掃の仕事を転々と職場を変えやってきた隼汰からしたら、どんな内容でもやっていける。そんな自身を持っていた。気になるのはやはり人間関係だけだろう。
クリームパンを頬張りながら歩くこと10分。
どうやら目的地に着いたようだ。
「ここか。デッカイ建物やのぉ…。」
まるでタワーマンション。
都会にそびえ立つビル群でも一際目立つその建物に入る。
「こんちは〜。本日面接予定の螺良言います。」
「ようこそ螺良サマ。内容は伺っておりマス。ではではこちらにドウゾ〜。」
ウィンウィンと音を出しながら歩く受付スタッフ。
人間ではない。
アンドロイドである。
科学の力って凄いのぉと思いつつ歩みを進める隼汰。
アンドロイドの女の子がこちらですと両手で部屋を指す。
その後どこかに行ってしまった。
隼汰はアンドロイドにお礼を言い、部屋を4回ノックしてドアを開けた。
ノックは普通3回である。
アホかコイツは。
「こんちは!本日面接予定の螺良隼汰言います!お忙しい中お時間取ってくださりありがとうございます!」
「いやいや、こちらこそですよ。ささ、その椅子に座っわてください。さっそく面接をさせていただきます。」
言われるがまま椅子に座る。
履歴書などを渡そうとするが、もう預かっているから結構と断られた。
(履歴書渡したか…?覚えが無いんやが…。)
良くある内容のやり取り。
特にこれといって深い内容は無い。
そう思っていたが、面接官が真剣な眼差しに変わる。
「なるほど…。ありがとうございます。では…これをご覧ください。」
「む?」
デスクに置かれたなにか。
それは六角形で黄色とオレンジ色を混ぜたような色合いであり、手のひらより少し大きいサイズ。
隼汰の頭はハテナで埋め尽くされていた。
なにこれ?
「こちらが例による…ゴッド・ギアです。実物をご覧になるのは初めてでしょうか?」
「はぁ…まぁ初めて…ですね。というかこれなん」
「そうでしょうね。ギアマスター以外の民間人が見れるのはレプリカですからね。………これを埋め込んだ女の子の事をギアドールと言います。そこまではご存知ですよね?」
知らんがな。なんの話しとんねん。
と言いかけた隼汰であるが、面接官が手のひらを前に出し制止。
電話が鳴っている。
胸元からスマホを取りだし、誰かと通話している。
「螺良さん、貴方の適性を確かめたいので軽いテストを受けてもらいますね。案内をしたいのですが…少し問題が発生したようでして。」
No.14のエレベーターから地下に行って欲しいと伝えられた隼汰。
面接官は足早に何処かに行ってしまった。
「…………………え、これ絶対勘違いしてるよな。え……なによゴッド・ギアて。ギアマスター?ギアドール?む???」
正直帰りたかったが仕方がない。
伝えられた通り、どうにかエレベーターを探し当て地下に降りる。
その間心が不安でキンタマがシュンとしていた。
35階からの地下1階。
スマホを見ようにもなんか見る気が起きない。
静寂が支配する中、15階でエレベーターが止まり、人が乗ってきた。
黒髪でセミロング、学生服を着たこの建物には似合わない格好の女の子。身長は150cm程。
耳にはなにかヘッドギアの一部のようなものを着けている。
補聴器にしては大きい。
「こんちは〜。」
少し気だるそうではあるが、目を細め笑って挨拶をしてくれたので挨拶を返す隼汰。
エレベーターはそのまま地下へと降りていった。
「えっと…地下来たけど…そっから話聞いてへん…。どないしよ。」
アホ丸出し。
どうしようかと腕を組み悩んでいると後ろから声をかけられた。
「あん?もしかして今日来る予定の新人ギアマスターさんっすか?」
「ん???もしかして関係者の方でっか?」
「そうっすよ。じゃ、自己紹介といきましょうか。私はルーハって言います。内容は聞いてますぜ螺良さん。」
ニシシと笑う少女。
「はぇ〜…関係者の方やとは…。はじめまして、螺良隼汰て言います。」
改めて頭を下げる隼汰。
顔を上げてルーハを見つめる。
「もしかしてこの服気になってます?セーラー服っすもんね。」
「まぁ、それもありますけど…。」
「この制服は会社の趣味っすよ。どこぞの変態親父どもが決めたんでしょうね。それとアレっすか?私が女で学生ぐらいの年齢なの気になってます?」
ドンピシャで正解である。
その事を尋ねると、あとあと説明すると言い目的の場所まで案内するとルーハは言い切った。
「にしても、なぁ〜んでこんなとこ来たんすか。若い女に囲まれるから〜とかそんなもんと思ってましたけど…螺良さんそんな感じじゃないですし。それにこんな時代にこんな危ない仕事。」
「何を言うても…やっぱり金かの。給料が良かったんですわ。それに今の時代、わけのわからん異星人が地球来て戦ってますやん?自衛隊と軍が太刀打ち出来る相手で良かったですわホンマに。」
ビタッ…と歩みを止めたルーハ。
「………自衛隊と軍が太刀打ち…?それマジで言ってるんすか?まぁ確かに出来てますけど。」
「ん???む???なんか変なこと言いました???」
腕を組み、悩む様子のルーハ。
どうしたのかと思っていると静かに口を開けた。
「螺良さん……名前は?」
「螺良隼汰でっせ?」
「螺良…隼汰じゃなくて…?」
「え、はい。」
マジかよーーーーー!!!!!
急に叫んだルーハ。
ビックリした隼汰に慌てながら説明を始めた。
「同姓同名で名前の読み方違うじゃんかクソ会社ッッッ!!!え!?!螺良さんここに仕事しに来たのは合ってるんすよね??!」
「そうでっせ!!!清掃員として来たんですわ!!!」
頭を抱えるルーハ。
こんな間違いは初めての事らしい。
どうやら先程の隼汰の言葉で違和感に気づいたようだ。
ズカズカと目的地の反対方向に進むルーハ。
「どこいくんすか?!」
「戻りましょう…!まだ螺良さん深いとこまで見てませんし、多分引き返せると思うんすよね。」
「どゆこと?」
「何も見てないし聞いてないでしょ?私たちの事とか。」
「えぇっと…ギアマスターにギアドール、ゴッド・ギアも聞いたな。それに本物?のゴッド・ギアを見せてもらいましたわ。ルーハさんも埋め込んでるんすかね?」
ズコッー!!!!!
全部聞いたし見てた。
「全部見てるし聞いてるし!!!ウッッッッワ!!!マジでどうしよ…。民間人に教えんなよクソ…!!!」
「え、これ俺どうなるんすか?」
「このまま戻ったら消されると思います。」
「うせやろッッッッッッッッッ!???!」
2人して頭を抱えどうしようと悩んでいると…
ギュイイイイイイィンッッッ!!!
ギュイイイイイイィンッッッ!!!
警報が鳴り響いた。
どうしたんやと隼汰が叫ぶ。
「こんな時に来やがったッッッ!!!ハイヴァー!!!」
「え!??!ハイヴァーて何よ!??!異星人の事か!??!」
「そうです!!!クッソ…!!!取り敢えず!!!螺良さんはここに居てください!!!ここはシェルターにもなってるんでまだ安全なはずです!!!ちょっと行ってきます!!!」
そうルーハが叫ぶと、近くにあったボタンを拳で叩き人が一人入れる程度の扉が開いた。
「絶対に上に来ないでくださいよ!!!」
ルーハはそれに乗り、上に行ってしまった。




