表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

第8話 『花の騎士』の懸念。

またマウリシオ視点ですよ。

「そう、ですか。やはり目的は『花園』……」

 新王と話し合った時にも、幼い彼にすら推測されていた、東の蛮族の目的は、やはり『花園』だろうと、聖女様方も結論を出しておられる、と新聖女様は語られた。


 なれば、この地を護ることが、我らの務め。

 神々の遺された御力と、歴代の聖女様方による『花園』の護りの力は、国境を乗り越える軍事勢力を決して通すことはない。


 だが、ひとりふたりの悪意ある個人をも捕捉するのは、完全には無理なのだ。

 余程とんでもない輩ならば、弾かれるのだそうだが。



 しかし、この国の体制も、決して一枚岩とまでは言えないのが現状だ。

 神々の御力がこの世界を統べていた時代は、もはや神話の彼方にあり、その神々が遺した『花園』も、他国ではもはやお伽噺の類だという。


 そして、この国の民にすら、『花園』の実在を疑うものこそいないにせよ、その力を眉唾と思うものが、いるのだ。


 平和の証、といえば聞こえは良いが、要は平和呆け、というべきものだろう。

 最後にこの国に撃退された国が滅びたのは、もう二百年程前になる。


 先王が外遊先に選んだ近隣三国も、近年では自分たちのパワーバランスがこの国を生かしていると思い込んでいる。

 実際には、彼らがなくとも、このオルフェリアは侵攻を許すことはないというのに。


「プレニア国の状況も心配ではございますが、海への道を抑えられるというのは、あまりよい事とは思えませぬ」

 就任直後といえども、もともと国内でも力のある侯爵家出身の聖女アリシア様は、そのように懸念を述べる。


「それは確かです。

 ただ、現状では、我が国一行の御遺体を引き取ることすら拒まれている有様……

 何らかの策は必要ですが、それを通す手立てがございません」

 そのように回答したものの、『花の騎士』マウリシオに現状で打てる手はない。


 いや、打てる手はすべて打ったのだ。

 それでもなお、混迷するプレニア国の反応は思わしくない。


 取り合えずの手立てとして、東大陸の者が使う毒薬の解毒に効があるとされる薬草のセットを生き残った有力者に送り付けはしたが……


 届いているのかどうかも、現状では疑わしい。


「それともう一つ、報告がございますの。西……アルゲンティアの更に西、以前より風土病の薬の取引でやり取りのございましたユーレラ国との連絡が完全に途絶えておりますの」

 聖女からの情報に、思わず目を見開く。


 この世界は、丸い。

 東大陸と我らが称している賊共の本拠地を通り過ぎ、更に東に進めば、我らの住まう大陸の西端に辿り着くことは、理論上も、実践でも証明されている。


 但し、その航海は非常な困難を伴うもので、プレニアとホーレリアの南にあるレーヴィテラ国から出た十隻の船団が東に向け出航してから、その西隣であるトーリア国の離島に辿り着いたのは四年のあと、しかも、辿り着いたのはたったの一隻だったという記録が、世界一周の唯一の記録だ。


 海流と巨大で獰猛な海獣が、船を沈めたのだと記録には記されている。

 だが、毒物による尖兵を利用できる奴らなら、後者は恐らく撃破も可能なのではなかろうか。


「つまり、西からも侵攻を受けている?」

「いいえ、その線は薄いようです。アルゲンティアと北のコーテリアからの情報も頂いたのですが……そもそも、ユーレラが出発点ではないか、という考察が」

 そして、その言葉に続く『花園』からの更なる情報は、衝撃的なものだった。


 彼らの使う毒物の生成に、『花園』から出た薬が使われている可能性がある、というのだ。


「そもそも、海の流れは、東回りより西回りのほうが容易に航海が可能なのだそうです。

 ユーレラと国境を接する二つの国からの情報をもとに、先日前任様が実験を行いまして……そのような結論に」

 前任の追放聖女であるグレシア嬢は、毒物を検知するという異能をお持ちで、毒物薬物への造詣が深い方だった。


 その彼女が、件の毒物に類似した物質を作れてしまった、のだという。



 そもそも東大陸の毒物の出どころは、不明だった。


 東大陸の情報はもともと、あまり多くない。大陸全土が千々に乱れて、まとまった国のないまま戦乱に明け暮れて、海の外に目を向ける勢力もいない土地に、我ら西大陸の民は原則として興味を抱かなかった。


 戦乱で荒れた土地には、特産品と呼べるものもないし、民は荒々しく、交渉事を持ちかける事にすら向いていない。

 戦争に関わる武器は発達していたようだが、それとても群雄割拠の状態では、発達には限度があるのだそうだ。


 強いて言えば人間という労働力だが……奴隷制度は歴史上はさておき、現代の西大陸には存在しない。


 東大陸には現存するようだが、それも戦争捕虜、被征服民がそう扱われるというだけで、金銭でやり取りされるそれではない、と聞いている。


 よって、最低限の情報を確保する事以外、東大陸には関わらない。

 これが西側の諸国の基本姿勢だったのだ。


 この大陸の国とて、一枚岩ではないのだし。

 国境を接する三国全てと協調姿勢を取っている我がオルフェリアのほうが稀な存在と言える程度に、国同士の仲は、案外と微妙なものなのだ。


 そして、この大陸最大の国家であるアルゲンティアは、非常に安定した国だ。

 正攻法でこの隣国を落とせる国家は、少なくとも現在の西大陸には存在しない。


 恐らく、ユーレラはその為に海回りを選択し……自国と一見関わりのない東大陸を踏み台にしたのではないか。


 目的は、薬だ。

 恐らく、人の意思を奪う毒薬は、副産物だったのだろう。


 彼の国の風土病は、この『花園』から得られる薬でしか治療できないのだと、最後にこの国に来た使者が述べた言葉は、聖女たちからも正しいと保証されていたのを思い出す。


 だがそういえば、ここ数年、その薬の引き合い自体がない。

『花園』への依頼は全て私も確認しているが……そう、四年程前を最後に、ユーレラとの取引は、ない。


 異変の発端は、ユーレラ国だ。

 そんな確信は得たものの……


 現状で、届く手がないのがもどかしい。

最低限の情報は取りたいのは今回みたいに侵攻してきたら嫌だなみたいなアレ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ