表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/26

第25話 そして花は目覚める。

グレシア視点。

 さざめく先輩たちの声も、優しい声も、聞こえなくなっていく。

 どのくらい、眠っていたのか。


 しっかりと身体の感覚を実感したところで目を見開いたら、目の前に綺麗な男性の顔。


 え?え?え?


 あ、いや、これは花の騎士様。マウリシオ様。

 でも近い!近い近い!!どうしてこんな、目の前に!!


「ああ、良かった、目を覚まされましたか」

 にこやかにそう告げる声も、間違いなくマウリシオ様で。


「……え?どう、して、近い……」

 混乱した頭のまま、思わずそのまま思ったことを口にする。


 そこで気が付いたけど、わたし、マウリシオ様に抱っこされていますね????

 いつから????


「力を使って倒れてから、ずっとマウリシオが運んでいたのですよ」

 すぐ近くから聞こえる声は、先代様……ロミレイア様だ。

 言われてみれば、後先考えずに、全力で、力を使い切った覚え、が……


「えっと、あの、自分で、立てると……思います」

 美しい顔が間近にあるのは!流石にちょっと!緊張するのです!

 多分今、わたし、顔真っ赤じゃないかな!!


「そのようですね。では、少し足元はお気をつけて。落ち葉が滑ることがあるようです」

 マウリシオ様は微笑みを浮かべてそう言うと、そうっとわたしを地面に立たせる。


 靴の裏からでも伝わる、ふかふかした落ち葉の感触。

 ……『花園』に、こんなに落ち葉を積み上げた場所なんてあったかしら?


 あれ?視界の端っこでロミレイア様を抱いて立っているの、アルゲンティア国の王様ですよね?

 つまり、ここ、『花園』じゃ、ない?


 いやそうだ、夢のようなどこかで、先輩方がおっしゃっていた。『花園』は、もうないと。


 自分の足で立ち、足元に不安がない状態なのを確認して、ようやっと、ずっとマウリシオ様から離せずにいた視線を周囲に向ける。


 大きな、とても大きな、紫の斑点を持つやや幅の広い、長くつやつやした葉っぱ。遥か頭上でゆらゆらと風に揺れる、反り返った紫色の花。


 ……は?どこからどう見ても、カタクリ、ですよね?サイズ以外は。

 足元でつつましく咲くはずの花が、なんで、頭の上なんてところに?


 樹木が壮大なサイズなのは、まあ年を経たものには稀にありますけど……

 見回す限り、普通なら森の下草として生えているものにしか見えない植物が、あれもこれも皆樹木のような巨大さ!

 どうして?


 足元に目をやると、これは普通のサイズの落ち葉と、ごく普通のサイズの新しい芽生えが見えます。


 つまり、これは一時的な変化、なのでしょうか……?

 それにしたって、この場所は……


 ……いえ、『花園』から徒歩で来れる範囲でこんな大きな樹木がありそうな場所なんて、ひとつだけですね。


「……ここは、『神の裳裾山脈』、ですか……?とんでもない景色ですけれど」

「ご明察。だが、この景色は元のそれとは少し違うようだよ」

 確認を口にしたら、肯定しつつも現状は通常の状態ではない、と述べるマウリシオ様。


 そして、巨大な植物の隙間から垣間見える裾野は……


 一面の、花畑だ。


『花園』の花とは違う、見た事もない植物たちが、そよ風にゆらゆらと揺れながら、一面に大きな花を咲かせている。

 全体に淡い色合いの、様々な色と形。そのくせ白い花は、少ない。


 その花を踏みしだきつつ駆けてくる人馬の一群が遠くから迫ってくるのが見えて、一瞬ぎょっとしたけれど、お仕着せの配色を見る限り、あれはエドレイド公爵家の方々ではないかしら?


「まあ、お父様とちい姉さまですわ!」

 何時の間にやらわたしたちと合流していたらしいグウェンドリン様も、喜色を浮かべてそう述べたので、先頭の二騎はエドレイド公爵その人と、公爵の次女、ブランウェン様で間違いないようです。


「……グウェンドリン?!其方、無事であったのか!!!」

 そしてお互いの顔が見える距離まで近づいたところで、開口一番、驚きの声を上げたのはエドレイド公爵閣下。


 ……はて、わたしが倒れてしまってから後に、何があったんでしょうか?

 そういえば、グウェンドリン様の衣装、わたしから見て先々代のオーリオラ様が着ていたもののように見えますね??

 周囲の環境の余りの変化に、つい見過ごしていましたが!


 それに、王宮兵士の服装の陛下が騎士のマントの上で横になっていらっしゃいますね?

 服に大きな破れと血の跡があるので、お怪我をなさったようですが、今は健康的な寝息を立てていらっしゃいます……


「古の聖女様方と半神様……いえ、新たな女神さまが、陛下共々助けてくださったのですわ」

 そしてグウェンドリン様の回答には、今までなかった情報が含まれていた。


 半神様が、女神……正式の神様に?


「あれだけの力を受け止め、己がものにして放ち、邪神寸前まで届いた者を無事討伐できたのでな。

 大姉上様は『護るもの』としてすべての神々に認められ、存在の格が上がり、半神ではなく正規の神として、新たにこの国の守護神となられたのじゃ」

 全員が疑問の顔であったようで、すらすらと神女様が状況を説明してくださいます。


「うぅ……なんで、括られているんだっけ……いてて」

 そこに、背後から更なる声。


 見れば、陛下の上の弟君、モデレード殿下が馬の背に括りつけられた状態でおられます。

 人馬共に血の跡が付いていますから、彼と馬も傷ついていたのでしょう。


 今はどちらにも傷は見当たらないようですが。


「どなたかが気を喪った殿下を馬の背に括って逃してくださったようなのです」

 マウリシオ様の説明にも推定が多いので、後から追いついてきた、といった様子でしょうか。


「ケッセル伯爵が、せめて殿下だけでも、と逃がしてくださったと。

 残念ながら伯爵家は暴徒共々炎に飲まれ、大半の者は討ち死になさったと部下から報告が来ております」

 エドレイド公爵が、残念な情報を齎します。


 ……そのような状況で、マスフィルド子爵家は、お義父様とおかあさまは、大丈夫、なのでしょうか……?

 だいじなとこ全部寝てたから情報がない主人公ちゃん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ