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番外編:エドレイド公爵家の奮戦。

 ここで突然の番外編。

 いえ、前話のあとがき書いてたらこれ書かないとだめじゃねという気持ちがですね。

(と言いつつあとがきは別件で書き換えた)

 破滅の日は、唐突にやってきた。


 突然苦しみだしたかと思うと、別人のように叫び声をあげ、周囲の者を加害し始める民衆。

 全ての民がそうなるわけではなく、隣人の、家族の変貌に戸惑い逃げ出し、あるいはそのまま殴り倒され、切りつけられる者の方が、多い。


 何故この国で、そのような悍ましい光景が繰り広げられてしまっているのか。

 まさか、『花園』の護りが、薄れたとでもいうのだろうか。



 だが、徐々に暴徒と化した人々を操る者の存在が見え隠れし始める。

 彼らは、暴徒の方向性をどういう手段で以てか纏め上げ、貴族の館や王宮を目指し始めた。


 つまり、これは、内憂ではなく、外患だ。

 恐らくは、プレニアを滅ぼした手が、この国にも伸びた、ということだろう。


 問題は、この暴徒が、貴族家の内部からも出始めて、内部から外の暴徒を手引きしている事だ。

 幸い我がエドレイド公爵家では、まだそのような事態にはなっていないのだが……


「公爵様、王宮で火の手が。グウェンドリン様は本日は王宮においででございます」

「知っている。あれは陛下を護る為に送り込んだのだ。その程度の仕事はできるであろう」

 年若き陛下の懐刀となれるよう、あの末の娘は育てたのだから。


 そう。グウェンドリンには、宰相を目指したいという本人の意向を無視し、武術を修めさせた。本人は本人で、それを難なくこなしながら、勉学にも励んでいたが。


「我らも働かねばならぬ。無辜の民を救え。暴徒は断じて入れてはならぬぞ。

 当家は、これより避難民を確保の後、籠城戦に入る!」

「「「「「はっ!!!」」」」」


 我の宣言と共に、伝令が飛んで行く。屋内の者には伝声管で既に伝わっておろうが、外回りの者にはまだ通じておらぬであろうしな。



 エドレイド公爵家は、王宮の手前にある。

 それは、王宮への道を護る最後の砦として。


 だが、道は一つではない。

 裏手から王宮に攻め寄せた者たちが、内部に侵攻した、という情報が来るのに時間は掛からなかった。


 裏手にも、当家と同様の防御の要として、ノーレル侯爵家が陣取っていたのだが……

 彼らは、当主を筆頭として、大半が暴徒に与したのだという。


 いったい、何が我らを分けたのか。


「父上、いや、閣下。前聖女グレシア様が力をお使いになられましたわ。何らかの毒物が、騒動に関わっていたようです」

 ややあって、選ばれる程ではないにせよ、僅かながら聖女の資質を持つという我が次女が、そのような報を齎した。


「父呼びでも構わぬ。そうか、毒物か……ユーレラを滅ぼしたという、あれだな?」

「恐らくはそうでしょう。ああ、作戦中でございますれば、呼びようは厳密にしたく存じます」

 娘の言を聞き流し、厄介なことになった、と痛感する。


 あの薬で、一度暴徒と化した者の意識は、二度と元に戻らぬという情報が、我が手元にも届いているのだ。


 だがそうか、聖女か。

 ノーレル家からは、聖女が出たことがない。

 我が家からは、これまでに複数の聖女を出しているし、出戻った聖女の血も入って、ある程度その資質は濃いのだ。


 恐らく、あの薬への耐性のようなものが、あるのではなかろうか。


「マスフィルド子爵家の皆様が避難してまいりました!」

 マスフィルド家は、前聖女の実家として縁組をした家、そして王家の古い傍系の家、だな。


「丁重に扱いなさい。皆様平常なのだな?」

「はい、どなたにも薬物の気配はございませんので、一旦別館にお通ししております」

 薬物に造詣のある兵士を取り立てておいて良かったと、しみじみ思う。

 あんなものが内部に入り込んでしまっては、どんな防壁も、城砦も、意味がないからな。


 防衛線を張り、あらかたの難民、否、避難者を取り込んだら、後は門を閉ざし、籠城するのみだ。

 暴徒たちは武器を持つものは殆どいないから、適宜壁の上から水や熱湯、油を注ぎ、壁をよじ登ろうとする連中だけ追い落とす。


 武器持ちにしたところで、どこぞの兵士だったものですら、無茶苦茶に武器を振り回すばかりで、周囲の暴徒が傷つく有様だからな、そこまでの苦戦はしない。


 三時間か四時間ばかり経っただろうか。

『花園』のある方向から、鈍い爆発音が響いてきた、と報告があった。


 ……そんな音を知っているのは我が家門の者位。


 そして、そんな音を立てることができるのも、少なくともこの国では我が家の者だけだ。


 七代程前に、トーリア国から流れてきたのを保護したという学者が開発した、爆発の秘薬。

 二つの薬剤を混ぜ合わせることで、壮大な音と熱を発生し「爆発」を起こすという薬は、当然のように門外不出とされたものだ。


 今この家の外でそれを使えるのは、グウェンドリンただ一人のはず。

 そして、あの薬は、混ぜ合わせた瞬間に効果を発揮するものだ。

 無論分量にもよるが、遠くまであの轟音が響く量を使った者は、無事では済まない。


 そうか、あれは、逝ったか。

 せめて王が無事であればよいのだが。


「閣下。王宮から鳩が」

「内容は?」

「陛下が、よりによってグウェンドリンを庇って大怪我をされた状態で、グウェンや近衛共々脱出、モデレード様は折悪しく外出中、モーリス様は陛下と共にあられると」

 そして長男が受け取った伝書鳩が齎した情報は、想定外の事態を含んでいた。


 陛下が、臣下むすめを庇った?


「……陛下は、グウェンにぞっこんでしたからね……男としては判らなくもないです」

 我が長男は、我が子にしては軽いところのある性格だが、それ故にか、陛下の気持ちを代弁してみせる。


「そうか。なれば先ほどの爆発音は……」

「恐らくあの子が殿しんがりを務めたのでしょう。

 閣下はそのように我らをお育てになられましたからね」

 濁した言葉を、我が子はするりと述べる。


「……なれば、王家のどなたかは確実に生き残っておられるのだな。

 我らは我らの仕事を成す。籠城し、暴徒を足止めし、善良なる民を護るのだ」


 そう、今はそれが、我らの仕事なのだ。

やっぱり家門全員生き残ったわ……

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