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神様の身代わり ―光の兄と、罪の妹―  作者: FERILU
第5章:一番近い光のそばで

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新しい教室、交差する視線

入学式の翌日。真新しいセーラー服の襟を整え、私は少し緊張した面持ちで1年B組の教室の扉を開けた。窓から差し込む春の柔らかな光が、ワックスの効いた床を白く反射させている。


黒板の横に貼り出されたクラス名簿の周りには、すでに人だかりができていた。

「……あ、あった。1年B組、水瀬みゆ」

自分の名前を見つけて小さく息を吐いたその時、背後から柔らかな感触と共に元気な声が響いた。


「みゆ! 同じクラスじゃん、やったぁ!」

勢いよく抱きついてきたのは、小学校からの親友、松本美咲だった。

「美咲! よかった、心強いよ。三年間ずっと一緒だね」

「だよね! ……あ、でも河村くんは隣のA組みたい。莉奈はC組だって。バラバラになっちゃったね」


美咲が残念そうに唇を尖らせる。名簿を確認すると、確かに陽太の名前はそこにはなかった。

同じクラスになれるかも、と淡い期待を抱いていた胸の奥が、小さな音を立ててしぼむのを感じる。でも、それを見透かされないように、私は窓際の自分の席へと向かった。


私が椅子に座り、通学バッグを机にかけると、教室内がふいに静まり返ったような気がした。

「……おい、あの子。めちゃくちゃ可愛くないか?」

「入学式の時から噂になってたよな。テニス部の湊先輩の妹だろ? やっぱり血筋かな」

周囲の男子たちの視線が、隠しきれない熱を持って私に集まっている。どうやら私の容姿はトップクラスのようで、自覚のないままに、新しいクラスの男子たちの「高嶺の花」になりつつあった。


休み時間、読書をして過ごそうと本を開いた時、廊下側の窓が勢いよくガラリと開いた。

「よお、みゆ! 忘れ物した、マジック貸してくれ!」


隣のA組の窓から身を乗り出し、遠慮のない大声を出したのは陽太だった。

その瞬間、教室内の空気が凍りついた。私を遠巻きに眺め、どう話しかけようか伺っていた男子たちの視線が一変し、鋭い刃のように陽太へと突き刺さる。


(……えっ、あいつ誰だよ。水瀬さんとあんな親しげに)

(隣のクラスの奴か? 馴れ馴れしすぎるだろ……)


教室内を満たす嫉妬の渦に、陽太は全く気づく様子がない。

「もう、陽太……。初日から忘れ物なんて、相変わらずだね。はい、これ」

私が苦笑しながらペンケースからマジックを差し出すと、陽太は身を乗り出したまま教室内を物珍しそうにキョロキョロと見渡し、私の隣にいた美咲にようやく気づいて目を丸くした。


「……あれ? 松本、お前も同じクラスだったのか?」

「ちょっと、おまけみたいに扱わないでよ!失礼しちゃうわね、河村くんは!」

美咲が呆れたように肩をすくめる。陽太は「いや、悪い。みゆのクラスしか確認してなかったわ、お前たちのクラス賑やかになりそうだな!」と、とんでもないことをケラケラと笑い飛ばした。


その瞬間、クラスのあちこちから「チッ」という舌打ちが聞こえた気がして、私は顔が燃えるように熱くなるのを感じた。

「ほら、陽太、もういいから早く戻って! 予鈴鳴っちゃうよ!」

「おう、サンキュ! 放課後、部活の体験行くんだろ? コートで待ってるからな!」

陽太は無邪気に手を振り、嵐のような気配を残したまま自分の教室へ戻っていった。


昼休み。お父さんとお母さんは、入学式が終わるとすぐに仕事先へと戻ってしまった。今日からまた、湊兄さんと雫お姉ちゃん、そして私の三人だけの生活が再開する。

中庭のベンチで、私はお姉ちゃんが作ってくれたお弁当を広げた。


「わあ、みゆのお弁当、相変わらず彩りが綺麗だね。美味しそう!」

美咲が隣で声を上げる。お姉ちゃんが早起きして作ってくれた卵焼きは、お母さんの味に似ていて、でも少しだけ甘さが控えめで優しい味がした。一口食べると、家族の温かさが身体中に染み渡り、少しだけ寂しかった心が解きほぐされていく。


ふとテニスコートの方に目を向けると、そこには鋭い打球音を響かせ、新入生の勧誘を仕切る湊兄さんの姿があった。

太陽を背に受けてラケットを振る兄の姿は、いつ見ても凛々しくて、この学校の秩序そのものに見えた。

でも、その横で。誰よりも大きな声を出し、兄さんの指示に「はい!」と力強く応えながら、コート中を駆け回ってボールを拾う陽太の姿に、私はそれ以上の「熱」を感じずにはいられなかった。


放課後、初めての部活動見学。

コートの脇に立ち、緊張でラケットを握る手に力が入る私の隣に、陽太がやってきた。

「みゆ、見てろよ。俺、絶対湊さんに認められて、一年からレギュラー獲ってみせるからな」


陽太が力強く笑い、コートへと駆けていく。

同じクラスにはなれなかったけれど、このコートの上では、ずっと同じ場所を目指していける。

クラスの男子たちが向けてくる好奇の視線よりも、陽太が私だけに向ける真っ直ぐな言葉と、その背中の方が、ずっと私の心を強く、激しく揺さぶっていた。


満開の桜の香りに包まれて、私は新しい季節の第一歩を、大切な幼馴染の背中を追いかけるようにして踏み出した。

おはようございます。

作者のFERILUです。


『神様の身代わりー光の兄と罪の妹ー』

を読んでくださりありがとうございます。


今の小中学校って1〜2クラスだとか…

私の時代は4〜5クラスあったので生徒数も3分の1以下ということに驚いてます。

この作品では1年はA組、B組、C組の3つとしています。

クラス分けで名前を確定させている生徒は以下です。

どのように登場するかは今後のお楽しみです。


1年A組

 河村かわむら 陽太ようた

 佐藤さとう 健二けんじ

 田中たなか 奈緒なお


1年B組

 水瀬みなせ みゆ

 松本まつもと 美咲みさき

 早川はやかわ 和樹かずき


1年C組

 田中たなか 瑛太えいた

 星野ほしの 莉奈りな

 佐々ささき りん


上級生も順に紹介していきます


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