6 誰よりも彼女の幸せを願う
何年も前から復讐を考えてはいたが、ちゃんと決めたのは半年ほど前でフェリクスと出会ったことがきっかけだ。偶然にもアウローラが恐ろしい笑顔で彼らを恨む言葉を口にしながら、鬱憤晴らしとでも言わんばかりにその辺の猛獣と戦っているのを目撃して一目惚れしたらしい。面白い女だと思ったのと、普段の大人しい姿を知っていたのでそのギャップにやられたとのことだ。正直、今でも意味が分からないと思っている。
とはいえ、アウローラもフェリクスに見られているのは気配で気付いていたので、その口封じも兼ねて手を組むことになった。
フェリクスはアウローラの復讐に全面的な協力を。アウローラは計画が終了した際、『自由を縛らない』ことを条件にフェリクスと夫婦関係になることを約束して。
「それはそうと、やっぱりフェリクスは女性の趣味が悪いのではなくて? 大人しい方の私よりも、暴れている方の私を好むのだから」
「何度も言っているだろう。ローラはそのお転婆を隠さない方が幸せそうなのだと。それに気付かないのは君の幸せを願わなかった家族だけだ。本来の姿を見せればきっと多くの者が君に魅了される」
「分からないわ……まあ、あなたがそう言うのならそれでいいけれど。他に私に望むものはないのかしら?」
フェリクスがいなければもっと準備に時間がかかっていた、と言えば少し悩む素振りを見せる。まだ決行すらできていないが、これでもアウローラは感謝しているのだ。そもそも最後の後押しとなったのがフェリクスの存在だったのだから。
「……正直、君と結婚できるなら残るは君からの愛くらいしか欲しいものがない。これが一番の難題だが強制するものでもないしな」
「そう……では私の方で考えておくわ」
アウローラとフェリクスは愛し合っているわけではない。フェリクスはそれでもいいと言ってくれているが、その言葉に甘えるのも申し訳なく思っている。だからと言って簡単に愛情を抱けるかと言われればそういうわけでもないので、どうすることもできないのが現状だ。
「もう帰るのか?」
「ええ。もう少しあなたと話していたいけれど、あまり長時間無断で外出するわけにもいかないから。明日の予定は?」
「空いている。今日と同じ時間で大丈夫だ」
「分かったわ。ではまた明日ね、フェリクス。おやすみなさい」
フェリクスの寝室にある窓の枠に足を掛け、手を振ると近付いてきたフェリクスがアウローラの耳元で愛を囁き、頬に軽く口付けをした。満足そうな彼に今度こそ別れの挨拶をすれば、同じ言葉が返される。その声を最後に、アウローラは静かに地上へと降り立った。
ご覧いただきありがとうございます!
よろしければ感想、レビュー、ブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価していただけると励みになります!




