5 地獄へ落ちろ
◇
「────それで、改めて思ったわ。私の家族と婚約者、全員地獄へ落ちろと。自分の血鍋で皮膚がどろどろになるまで煮られ、苦しみに藻掻いても救いの手は差し伸べられず、最後は鬼の宴で食べられてしまえばいいの!」
「そんな輝かしい瞳で言うな。想像力豊かだな、君は」
アウローラとフェリクスが二人きりで顔を合わせた時の恒例行事である、『その日あったことの話を嫌味皮肉憎しみたっぷりに聞いてもらう』が終わり、最後に満面の笑みで締めくくれば、フェリクスは呆れつつも楽しそうな顔で笑った。
「今日もすっきりしたわ。聞いてくれてありがとう、フェリクス。本題に入りましょうか」
「そうだな。まずは俺から報告が一つ。ローラとアクトン男爵令息の婚姻の儀に国王陛下をお招きできることが決まった」
「本当に? フェリクス……あなたなんと言って脅したの?」
「失礼な。俺が親愛なる国王陛下にそんなことをするはずがないだろう? ただ君が喜ぶだろうと思って、『きっと国王陛下が来てくだされば、俺の未来の妻は満面の笑みを見せるでしょうね』と言っただけだ」
「ええ、たしかに嬉しいわよ? でもその言葉、私の婚約者が言ったのなら国王陛下もきっと言葉通りに受け取れたでしょうね。フェリクスが言うから脅しになるのよ。分かってて言ってるでしょう?」
この国で辺境伯は公爵と同等の権力者になるのだから、国王であろうとも下手に扱えない。他国なら伯爵以上侯爵未満が辺境伯の立ち位置になることが多いが、この国はロンバルティ家に国防を一任している。その上、猛獣も多いので尚更その役目は重要だ。現在こうして王都の屋敷にいるのもアウローラの復讐決行日が一週間前に迫っているからであり、普段は領地から出ることすら滅多にない。
フェリクス・ロンバルティ辺境伯は、使えるものは手段を選ばず何でも使うタイプの人間だ。おまけに計算高く、若くして辺境伯となっただけある実力者。そんな男が発した言葉は、他の者なら普通でもいきなり意味深な響きに変化する。
「まあまあ、国王陛下が来てくださるだけで君の計画がより良い方向に進むのだからいいんじゃないか?」
「それもそうね。証拠も十分すぎるほどに揃ったわ」
アウローラが考えている『復讐』というのは、婚約者及びその浮気相手であるロアナ、そして家族の断罪と婚約破棄だ。両家の使用人も多少は罪に問えるだろう。家族に関しては投獄もあり得るほど、証拠が出揃っている。アウローラは何度も言った。『家族を恨んでいる』と。だから身内であろうと容赦する気など毛頭ない。婚約者とのその浮気相手に関しては適当に苦しい思いをすれば良いくらいに思っている。
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