3 恨む気持ちは晴れることなく
マリーが部屋から出て行った数分後、いつもの侍女がアウローラに食事を持ってきた。相変わらずこの屋敷の使用人は常に怯えた顔の者ばかりだ。
先ほどマリーは夕食の時間であることを伝えに来たが、そんなものはただアウローラの部屋を訪れるための口実だ。アウローラはいつも私室で食事を取るため、食事の時間になればそれを伝えなくとも勝手に使用人が持ってきてくれる。つまり、マリーは何か『わがまま』を言える物を探しに来ていただけ。
「……問題なさそうね」
今日の夕食はトマトリゾットのようだ。パンひとつとスープのみの日がほとんどだからこれはかなり豪華な方に分類される。たとえ使われている食材が野菜の切れ端だったり、両親やマリーの料理に使った食材の余り物だったとしても。だからいつも以上に警戒したのだが、何も仕込まれてはいないらしい。
リゾットの入った皿の横に添えられているカトラリーは使わない。一応料理に触れさせ、使った痕跡は残すが実際に使うのは隠し持っている銀製のカトラリーだ。銀は基本、毒に反応する。
だから食べても問題ないことは分かったが、念のため少しずつ料理を口に運ぶ。リゾットから漂う湯気が温かく、冷ますように息を吹きかければとても良い香りがした。
「美味しい……いつもこうなら嬉しいのだけど」
アウローラの家族はクズを極め、もはやその範疇に収まらないところまで来ているのでその日の気分でアウローラの食事に毒を盛ることがある。初めて毒を摂取したのが七歳の頃で、死に至るものではなかったが数ヶ月は手足が麻痺していた。外での活動を好むアウローラとしては、思うように体が動かないことほど辛いことはない。あの事件をきっかけに、アウローラは完全に家族を見放して恨むようになったのだ。
食事はアウローラだけ私室で取るが、あれ以来いきなり毒を混入されるようになったので対策の取りようがなかった。それでも少量ずつ様子を見ながら食べるようになったことで毒の影響は受けづらくなったが……
それはそうと、今日は彼の屋敷に行く日だ。昨日は相手に予定が合って会えなかったが基本的に毎日会って話をしている。もちろん、アウローラと彼くらいしかそのことを知る者はいない。
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