19 私のかわいい娘を
罪状を告げられ、絶望しながらも今後どうするべきかを考えているであろう彼らを横目に、今度はロレーヌ伯爵達への対応について相談する。この三人は殺人未遂や法で禁じられているレベルの虐待をしてきたので、このような場でなくとも見つかり次第捕縛していたとのこと。さすがに王族ではないので極刑にはならないが、それに準ずるくらいまでなら好きにしていいらしい。
つまり、いつかのアウローラが言った『自分の血鍋で皮膚がどろどろになるまで煮られ、苦しみに藻掻いても救いの手は差し伸べられず、最後は鬼の宴で食べられてしまえばいいの!』を実行できるわけだ。
なんて魅力的な話なのだろうと目を輝かせていると、いきなり背後から何者かに抱きしめられた。覚えのある体温だったのでゆっくり振り返れば、そこにいたのはいたずらが成功して喜ぶ少年のような顔をしたフェリクス。すぐに離れた彼はポンポンとアウローラの頭を撫で、床に座り込む家族を見下ろしていたアウローラの隣に並び立つ。
「お楽しみの時間だ。こういうのは俺の方が詳しいぞ?」
「じゃあ一緒に。とりあえず、断頭台行きは駄目みたいだから……鞭打ちは絶対よね」
「鞭打ちは回数を増やすならある程度期間を空けながらの方がいいかもな。内出血で死んでしまう。週に一度、五十回を二十週。合計千回でどうだ? もちろん三人とも同じように」
「異論ないわ。その上で他の罪人と同じ労働をすること。お母様やマリーは女性だからもう少し一度の回数を減らした方がいいかもしれないわね。合計回数は変わらないけれど」
アウローラは前に『痕になるほどの傷は付けられない』と言ったが、鞭打ちは上手くやれば痕を残さず痛めつけることもできるらしい。おかげでフェリクスの元へ嫁ぐ際も綺麗な体であるが、だからと言ってこの三人にも同じようにしてやるはずがない。特に女性である母やマリーは精神的にも辛い思いをするだろう。だが精神崩壊はしないように注意してほしいと、後で執行人に伝えておこうと思う。そのような『逃げ』は決して許せないから。
「懲役も無期限がいいな。重罪人の基準で働かせよう」
アウローラとフェリクスの恐ろしい相談に混ざってきたのは、フェリクスの父であるロンバルティ辺境伯家前当主だ。美しく咲き誇り、その姿を目に入れたすべての人を魅了する笑顔なのに、少しでも触れたら大きな傷を残してしまいそうな棘がある。薔薇そのものと言えるようなその笑顔は、彼の息子であるフェリクスに良く似ている。
「旦那様、酷いことをおっしゃいますわね。もう少し優しくして差し上げればいいものを」
「例えば?」
「やはり心が壊れてしまう半歩手前までの拷問あたりが良いでしょうか? 駿河問い、水責め、木馬責め……シンプルに中身の分からない薬を飲ませるのもいいですね。毒を飲まされるかもしれないという恐怖に怯えながら、でも何を飲むか選ばなければ容赦なく苦痛がやってくるのです。それから……」
フェリクスの母は優しく小動物を思わせるような華奢な容姿をしている。実際、ちゃんとしている人にはとても優しいしアウローラのように森の中で駆け回ることもない。しかし、そこは危険に囲まれることとなる辺境伯の元へ嫁いだ女性だ。常人のような思考回路はしていなかった。
「────私の大切でかわいいアウローラちゃんをここまで傷付けたのです。これくらいのことは覚悟して当然、ですわよね?」
「母上、ローラは俺のです」
「論点そこじゃないし、私は私のものよ」
他の拷問案を出し続ける辺境伯夫人に別の部分で対抗するフェリクス。それに対して突っ込みを入れるアウローラもいれば、明らかに引いている様子のフェリクスの父もいた。素で異様な空気を作り出す彼らは、それが余計に周囲の恐怖を煽っていることに気付くはずもないのだろう。
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