16 情状酌量
「それでは最後に……お父様、お母様、そしてマリー。私に何か言うことはありますか?」
残るはロレーヌ伯爵家の者を断罪するのみとなった時、アウローラは初めて心からの笑みを見せた。これまでも笑っていることはあったがずっと青色の瞳に怒りの炎を灯していた。だが今は、血の繋がった家族の断罪を前に楽しそうに笑っている。そんな笑顔の中にも見下すような雰囲気を混ぜることを意識して家族を見れば、三人は情けない姿を衆目に晒されて怒り狂っているようだった。
「……悪かった。これまでのことを反省し、もう二度とお前を苦しめないと誓う。だからどうか許してほしい」
それでも父は心から嫌うアウローラに頭を下げるほど、自分達の身がかわいいらしい。後ろに立つロレーヌ伯爵夫人やマリーも同じく。だが、『目は口程に物を言う』という言葉がある。彼らも例に漏れないらしく、表情は完璧に反省の色を見せているが、その目からは屈辱だと思っているのが良く伝わってきた。
結局彼らは口だけなのだ。アウローラのことを想ったことなど一度もないし、謝罪すらまともにできない。ここまで来てもアウローラが従順な性格だと信じているから『許してほしい』などと断られるとも思っていない声色で言っている。せめて僅かにでも本物の反省が見られれば、情状酌量の余地があったかもしれないというのに。
「よく、分かりました。……あなた方はこの光景を見ても変わろうとする気がないのだと」
目の前で何人も断罪されているのにも関わらず。それから、『これまでのことを反省する』『二度と苦しめない』と自らの首を絞めていることには気付いていないのだろうか。いや、ロレーヌ伯爵は救いようがないほどの馬鹿ではない。きっと気付いていて、アウローラが許してくれると思っているだけだ。
「それでは皆様、お待ちかねの断罪の時間ですよ!」
「は……」
「ちょ、ちょっとお姉様! 許してくださるのではなかったのですか!? ちゃんとお父様が謝罪したのに……!」
「あらマリー。勘違いも甚だしくてよ。いつ誰が、謝罪すれば許すと言いました?」
人の話はしっかり聞いた方がいいわよ、と今更どうにもならないであろうアドバイスをする。アウローラは『何か言うことはありますか?』としか言っていない。謝罪すれば許すだなんて、言うはずがないだろう。それくらいで許せるほどアウローラの家族への想いは軽くない。
実の娘でありながら誰よりもアウローラを酷く扱った父に、自分の腹を痛めて産んだはずなのに傍観か一緒になって虐げることしかしなかった母。ある意味同情の余地はあるが、そんな両親を見て育ち、同じようにアウローラの大切な物を壊したり奪ったり、暴力や毒物混入をやめなかった妹。三人がアウローラにしたのは、どれも一歩間違えれば死に至るものばかりだった。そのことを彼らは知らないのだろう。
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