15 証拠は出揃っていますので
「反論がないようなので次に行きます。アクトン男爵夫妻とアクトン家の使用人、そしてロレーヌ伯爵家の使用人の話です。彼らも格上の生まれである私に対しての暴言、暴行がメインになりますね。皆様楽しそうに嫌がらせしてきたのを良く覚えておりますよ。では先ほど同様、スクリーンをご覧ください」
アクトン男爵夫妻は爵位を継いでいないアウローラよりも身分が高いが、生まれだけで言うなら間違いなくアウローラが上。使用人に関しては指示されていたのかもしれないが、だからと言って許せるかと問われるとそんなわけがない。
アウローラは受けた恩も、された恨みも、どちらも数倍にして返す主義だ。決してその出来事を忘れることはない。水に流すこともない。
フランツやロアナの時同様、証拠映像が目の前ですべて晒されている。自分達も同じ目に合うとは思わなかったのか、石のように固まってしまったアクトン男爵夫妻と絶望の表情で崩れ落ちる使用人を横目に、アウローラは小声でフェリクスに話しかける。
「この後は私が一番楽しみにしていた家族の断罪よ。二度と立ち直れないくらい心をズタズタに引き裂いてやるわ」
「逆恨みで暴れ出したらどうするんだ? 君の家族なのだから可能性は高いと思うが」
「ええ。だからコルセットを少しだけ緩くしてもらって、アクセサリーも揺れないものにしたのよ。返り討ちにする準備は万端なの」
スクリーンから目を離さず疑問をぶつけてくるフェリクスと一瞬だけ目を合わせ、アウローラは自慢げに戦う気満々であることを告げた。この中でアウローラより強い存在と言えば、フェリクスくらいのものだ。フェリクスの父である前ロンバルティ辺境伯は怪我で若いフェリクスに当主の座を譲ったため、日常生活に支障はなくとも怪我前ほど戦うことはできない。ただまあ、彼らはアウローラと敵対するどころか一番の味方であるため、戦いになっても止められることはないだろう。
「仮にも息子の婚約者だというのにまともに対応することもできない。廊下を歩けば悪口や嫌味を浴びせられ、足を引っかけられ、馬車に乗る頃にはなぜかいつも全身が濡れている。汚いバケツの水をかけてくる使用人でもいたのでしょうか? 私はどなたか存じ上げませんが、金髪をひとつにまとめている女性や緑色の髪を持つ男性が視界に入ることが多かった気がしますね」
今にも泣きだしそうな顔のアクトン男爵家の使用人代表二人。アウローラの言葉を聞いた途端、大きく肩が跳ねた。ロレーヌ伯爵家の使用人に対しても、『父の指示という名目でいつも楽しそうに鞭を打ったり、食事に妙な物を混ぜて来る使用人もいましたね』と言えば、ひとりは狂ったように小声で謝罪を繰り返し、もうひとりはフェリクスの視線に耐え切れず失神してしまった。やはり常日頃戦いの場に身を置く者の殺気は、常人に耐えられるものではないのかもしれない。揃いも揃ってこんなだから、アウローラに足元をすくわれてしまうのだ。
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