14 社会的にも抹殺しましょう
「改めまして、本日はお集まりいただきありがとうございます。これより私、アウローラと辺境伯フェリクスで計画した復讐劇を開催致します! まず手始めに────私はフランツ・アクトンとの婚約破棄を宣言します」
控室にある長椅子に座るのはアウローラとフェリクス。そしてテーブルを挟んだ両隣には国王とロンバルティ辺境伯夫妻だ。フランツとその家族、アウローラの家族、ロアナ、使用人の席はここにはない。
事前に用意してあった書類を膝の上に抱え、フェリクスと一瞬目配せしたアウローラは心の底から大嫌いな婚約者へ、満面の笑みで縁切りを宣言した。
アウローラの復讐について、すべてを知っているのはロンバルティ辺境伯一家のみであるため、部屋の中が小さなどよめきに包まれる。だが本題はここからだ。
「理由は複数。ひとつ、格上の生まれである私に対しての無礼。二つ、私への暴行。三つ、私以外の女性との不貞。証拠はすべてここにございますので、今からお集まりの皆様にご覧いただきましょう」
膝の上に置いてあった書類とは別で、一つの小さな機械がアウローラの手の中にある。感情の読めない笑みを浮かべたアウローラは躊躇なくその機械を操作した。それに反応したのは壁の前に設置されていたものである。
スクリーンに映し出された景色は今とは真逆の季節だった。その機械は何の前触れもなく、『何の力も持たない女のくせに、この僕に逆らうのか!?』と言葉を発する。その声が誰のものか、この場にいて分からない者はいないだろう。場面は違えど同じような言葉が何度か繰り返され、大きく雰囲気が変わったと思ったら先ほどとは視点が変わった。今度は今まで見えなかったアウローラの姿も映っている。
これは途中から撮影されたものだ。スクリーンの中のアウローラはフランツの前で崩れ落ちている。すでに何度か手を出された後なのか、頬は腫れ唇は切れ、美しい赤髪は掴まれているせいでボサボサになってしまっている。
ふと視線を外したアウローラは、スクリーンに釘付けの招待客達を順に見渡す。晒されている本人やその家族、国王は真っ青。フェリクスとアウローラに良くしてくれるロンバルティ夫妻は怒りで表情がなく、その他の者は驚きでその目を見開きながらも呆然としていた。
「さて、これから流れるものはとても見苦しいものですので、皆様ご注意くださいませ」
アウローラの注意喚起を聞いてその場を離れる間もなく、三つ目の『アウローラ以外の女性との不貞』を証明する映像が流れ始めた。これは何度も遭遇したが、アウローラも直接は見たことがない光景だ。あの天蓋の内側を目の前の映像が見せている。平民であるはずなのに貴族の婚儀に呼ばれている時点で二人の関係はお察しで、そうでなくとも彼らの浮気は社交界では有名な話だったのでここまでする必要は本来ないのかもしれない。それでもあえて確実な証拠を見せたのは、シンプルにアウローラの嫌がらせと復讐が目的だったからだ。
スクリーンの中で愛を育んでいる彼らは今、どんな顔をしているのだろう。気になったアウローラが彼らを見れば、羞恥か怒りか、二人とも顔を真っ赤にして震えていた。なんてみっともない姿なのだろうか。
「アウローラ! お前に人の心はないのか!?」
「いくらなんでもひどいです……!」
「人の心はない? ひどい? それをあなた方が言いますか? 本気ならそっくりそのままお返ししますけど」
アウローラは何も悪いことをしていない。ただ、冤罪と疑われるのは嫌だし復讐をしたいだけ。そのために必要な情報を提示しただけのこと。アウローラは何年も苦しめられてきたのだから、証拠提示ではなく復讐の意味ではこれだけやっても足りないくらいだと思っている。
すべて自業自得。今までの自分達の姿を大勢の前で晒しただけだ。悪びれもせず首を傾げて言えば、それっきり二人とも口を閉ざして俯いてしまった。
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