13 彼が愛しているのは
◇
アウローラの支度が済んで少しした後、控室には続々と人が集まっていた。『大切な話』があるから集まってほしいと全員にお願いしていたのだ。
ひとり、またひとりと現れる招待客に、一番最初に呼んでいたフランツとロアナは困惑していた。アウローラしかいない時には『似合わない』だの『衣装が可哀想』だの、散々罵ってくれたというのに。さすがに自分よりも格上の存在が多い場所でそのようなことをする勇気はないのだろうか。本当に最後の最後まで情けない人間達だな、と表情ひとつ動かすことなく思う。
「国王陛下、この度は私達のために貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございます。これからお見せするものはとても見苦しいと思われるでしょうが、どうか最後までお付き合いいただけますと幸いです」
フランツにロアナ、ロレーヌ伯爵夫妻、マリー、アクトン男爵夫妻。そして両家の執事長と侍女長。これで役者は出揃った。その他、国王やロンバルティ辺境伯夫妻というアウローラの協力者もこの場に集結した。そして最後、少しだけ遅れて姿を見せたのは……
「遅くなって悪い、ローラ」
「大丈夫」
「ロンバルティ、辺境伯……!?」
フランツが招待した覚えのない相手であろう、フェリクス・ロンバルティ辺境伯だった。冷たさが目立つ風貌ではあるがフランツよりも遥かに美しく、おまけに辺境伯なだけあってとても強い。そして男爵令息と辺境伯では権力も財力も天地の差。
今まで近付くことすらできなかった雲の上の存在を前に、同じような性格をしているフランツの浮気相手ロアナとアウローラの妹マリーは獲物を仕留めるべく彼に視線を向けた。二人で争う気満々なところを邪魔するようで悪いが、彼が想いを寄せているのはアウローラである。フェリクスはアウローラの夫となる人物なのだから、性悪女になど決して奪わせはしない。アウローラにとって彼は、愛していなくとも大切に思っている存在だ。
「アウローラ、なぜ彼がここに!?」
「私が招待したからに決まってるじゃないですか。たかが伯爵令嬢と男爵令息の婚儀に、辺境伯が自ら参列してくださると思います? 国王陛下も同じくですよ」
「な、なっ……なぜ!? それこそおかしいだろ! ああそうか、僕のことを認めてくださっているからだな!?」
「違う。黙れ」
「うぐっ!」
ショックの受け方が大げさすぎる。フランツは大根役者でも目指しているのだろうか。なんて、そんな冗談を言っていられるのも心に余裕があるからだろう。何せアウローラは今から、ずっと楽しみにしていた自分を苦しめた者達への復讐を始めるのだから。
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