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美尻研究家 美尻三郎  作者: ミタラリアット


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九話 「美尻の過去」


 休日。玲子は急に思いついたのか、「そう言えば三郎の過去ってあんまり知らないな~」と掃除機をかけながら三郎に話しかける。


「なぜお前に語らなければならないんだ」美尻は溜息をつくと、「大した過去は無い。」そう言うわりに、ほんの一瞬だけ顔が曇った。


 でもすぐに、何でもないふりをして「アイちゃんのお尻堪んないなぁ…」とセクシーな画像に視線を映した。


 玲子は、美尻が誤魔化したような素振りに気づいたが、特に触れることは無かった。


「そう言えば」と美尻が口を開く。「子供の時に過ごした施設ですごく優しいお姉さんがいたな。お姉さん、って言ってももう40年近くも前の話だ。老いぼれてるとは思うけど」美尻はそこで言葉を切って、ぽりぽりと頬をかいた。


 思い出したくて思い出してるわけでもない、けど勝手に浮かんできた。


「まあそれがどうってことないんだけど」


 美尻はそう言いながらも、気まずそうに視線を落とす。


「施設?」玲子は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思ったが、気にならずにはいられなかった。


「子供の頃はずっと施設にいたからな」


 サラッと言う美尻だが、玲子は「ほぇ~」と興味を持つ。


「もう一度その人に会いたいとか思わないの」と言う玲子に、美尻は「会ったとしてももうばあさんだぞ???俺がまだ五歳の頃の話なんだから」と肩をすくめた。


 言ってる本人は軽く流したつもりらしいが、その言い方の奥に、どこか照れ隠しみたいなものが混じっていた。


 玲子は「ふぅん」と返しつつも、美尻の横顔をじっと見る。美尻はその視線が気になるのか、なんだか落ち着かない様子だ。


「その施設の名前を教えなさい、私が連絡するわ」


 玲子の早とちりな行動に、「待てよ!」と美尻は慌てて手を振った。「ちょ、ちょっと待ってくれよ。いきなり連絡とか……そんな大げさなことしていいのか?」と声が裏返る美尻。


「いいじゃない!その優しかった女性がどうなってるか三郎も気になるでしょ!!」


 玲子の言葉に、美尻は「気…気にはなるけども」と目をそらす。


「じゃあ決まりね。その施設の名前と女の人の名前教えなさい!!!」と玲子に問い詰められ、


「はぁ…」と珍しく玲子に呆れる美尻。


 玲子に押されるがまま、施設の名前と女性の名前を教えてしまったのが運の尽きだったのかもしれない。


 玲子は、「はい~そうです~。」と施設側と連絡を続ける。


 暫く話を続けて電話を切る玲子。美尻が「で?どうだったんだよ」と問うと、玲子は「オッケー!」とグッドサインを示した。


 美尻は「行動力が凄いな…」と玲子を褒める。「私の取り柄よ」と胸を張る玲子。


 二人はマンションを出て、渋谷区内にある美尻が幼少期に過ごした児童養護施設に出向いた。


「懐かしいな~」当時のことを思い出す美尻。玲子は「佐藤さん?だっけ。まだ一応いるらしいわよ。」と美尻に教える。


「60ぐらいか…どうなっているんだろうな」と美尻は呟く。


「三郎さん。お待たせ致しました。佐藤をお呼びします。」


 施設の職員は二人にそう伝えると、言葉通りに佐藤という名の女性を呼びに行く。


 玲子は、「優しかった女性…ね。つまり三郎の初恋ってことだ」と美尻を揶揄う。


「違う!断じて違う!!!」と美尻は首を横に振った。


 暫くすると、佐藤が現れる。その姿は60歳になっても相変わらず美しく、玲子も思わず「綺麗…」と見蕩れる。


「三郎くん、わざわざ会いに来てくれたの???」


 佐藤はしっかりと美尻のことを覚えていた。いつもなら鼻の下を伸ばして尻を触り出す美尻も、幼少期以来の再会に「さ、佐藤さん…」と緊張している様子だ。


 佐藤は「あんなに小さかったのに、すっかりおじさんになったわね、ふふっ、私もおばさんか。」と笑みを零した。


「つかぬ事をお伺いしますが…三郎ってその…子供の頃から…変態だったんですか?」


 玲子の言葉に、佐藤は「変態???」と首を傾げる。


「こいつ、いま“黄金の尻”を探して、日本中、いや、世界中を飛び回ってるんです!!!いつからこうなっちゃったんですか!!!」


 玲子が叫ぶと、佐藤は「え?お尻???ここにいた時はお尻の印象なんて無かったわよ。本当に、引っ込み思案で、友達が少ない子って感じだったけど」と赤裸々に語る。


「辞めろ辞めろ!!!それ以上聞くな!」玲子を止める美尻。


「三郎くんも成長して、素敵なガールフレンドが出来たのね?」美尻が玲子を止める様子を見て、何かを勘違いした佐藤は微笑む。


 玲子は、「いや、そんなんじゃないです、」と否定する。


「おふたりさん、時間取るから、お茶でもして行きません??」


 佐藤は二人を誘うと、「ね?」と柔らかく微笑んだ。


 その日、二人は佐藤と団欒しながら、懐かしい話を交えつつお茶を楽しんだ。


 玲子は、「はぁー楽しかった!」と満足そうに伸びをする。


「俺の話いろいろ聞き出して、お前は何がしたいんだ」美尻は、むすっとした表情を浮かべた。


「でも久しぶりに会えて良かったでしょー。」と玲子。


 美尻は「まぁ、僕も楽しかったよ、」と微笑み、先を歩いていった。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!!」玲子は先を行ってしまった美尻を追いかけた。

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