八話 「モデルの尻」
ある日。美尻はインスタグラムを調査していた。黄金の尻を持つ者が存在するんじゃないかと。まだ美尻は諦めていなかった。
あくまでも仕事の一貫で、セクシーな画像を調べ続ける美尻。
「尻…尻…お尻…」
美尻は興奮のあまり表情を崩す。「またエロ画像見てるの???」と目を細める玲子。
「尻はロマンだぞ!!!!????」と言い返す美尻。
玲子は、「はいはい。わかってるわよ。今日もまた黄金の尻を探すんでしょ???」と美尻に言う。
美尻は「黄金の尻…黄金の尻…」とインスタグラムを探す。
「これは!!!!!!!」
一枚の画像に目を奪われる。
「なに?? 見せなさいよ」
玲子は横から美尻のスマホを奪った。
「あら、随分と長い脚ね」
玲子はその写真を見て感心する。
美尻は「水野サヤカちゃん。職業モデル! セクシーで最高だねぇ…」と鼻の下を伸ばしながら説明した。
「きっと彼女が黄金の尻の持ち主に違いない!!!」
やる気になる美尻。玲子は「じゃあ取材のオファー入れてみたら?」と提案する。
美尻は「さっそくホームページから行っちゃうぞ~!」とパソコンを開いてカタカタとキーボードを入力し、お問い合わせフォームから仕事の依頼を送る。
「これでサヤカちゃんに来て貰えるぞぉ!!! 今度の水曜日、公園でサヤカちゃんに会える!!!!!」
高揚した気分でサヤカの画像を眺める美尻。「僕とデートしようねぇ…」と下心丸出しの様子だ。
玲子は、「目的が違う!!!!!!」と美尻の頭をフライパンを振りかざして殴った。美尻は衝撃で勢いよく吹っ飛び、家の壁に身体をぶつける。
「ふへ……」
だがやはりどこか嬉しそうな表情を浮かべる辺り、この美尻三郎という男は変態である。
当日。美尻はお洒落着に着替えていた。「サヤカちゃんに会うぞ!! サヤカちゃんこそが黄金の尻の持ち主だ!」と気合い充分な美尻に対し、玲子は「なんで私こんな男の助手をやっているんだか」と呆れる。
マンションを出ると、二人はサヤカに会うために公園へ向かう。
「でも、サヤカさんになんて言って取材のオファーをしたの?」
玲子は心配そうに美尻に問う。
美尻は、「へ? どうって。普通に。尻の研究をしている者です。サヤカさんの尻について研究させて下さい…みたいな内容で」と返答した。
「よくそれで許可貰えたわね!?」
玲子は驚く。
公園に辿り着くと、そこには既にサヤカと思われる人物が待っていた。
「サヤカちゃ~ん!!!」
美尻はサヤカの尻に飛びつく。
サヤカは「えっ!!??」と表情が固まる。
「あなた今日の仕事内容ちゃんと伝えられてる?」
急いでサヤカの元に駆けつけた玲子が問う。
サヤカは、「お、お尻の研究…」と困惑する。
美尻はサヤカの尻の写真をパシャパシャ撮影する。
「ちょ、ちょっと、何!?」
と状況を飲み込めていないサヤカ。
「ごめんなさい! この人変態なの、」
玲子が説明する。
「は、はぁ……」
と困り果てるサヤカに、美尻は「いい尻だねぇ…」と目をハートマークにする。
「もう、誰なんですか!? あなたたち一体!!!」
サヤカは叫んだ。
美尻は少々カッコつけながらサヤカの手を取る。
「僕が有名な美尻研究所の美尻三郎です…で、この色気の無い女が助手の玲子です」
サヤカに紹介する美尻。玲子は「だぁれが色気が無いだって???」と美尻に圧をかける。
美尻は、「ちょ! 待てよ、」と某元アイドルの雰囲気すら似ていないモノマネをする。
「変なモノマネをするなぁぁぁぁ!!!」
玲子はフライパンで美尻の頭を勢いよく叩いた。その衝撃で「うぉああ!」と美尻はサヤカの上に覆いかぶさってしまう。
美尻に訪れた、ラッキースケベ。美尻は「ぐへへ…」と幸せそうな、いまにももういっぺん殴ってやりたいほど気持ち悪い表情を浮かべる。
「きゃぁぁぁぁ!!!」
サヤカは美尻から離れる。
「あなたの取材はお断りさせて頂きます!! 帰って!!! 帰ってください!!!!」
サヤカは叫び、走り去ってしまった。
美尻は「サヤカ……サヤカちゃぁん…」と失恋したかのような落ち込みをみせた。
「今日はもう引き上げた方が良さそうね」
玲子が言うと、美尻は「サヤカちゃんとランデブー…」と出来もしない妄想を語るばかりだ。
「諦めなさい、今日は夕飯美味しいもの作ってあげるから」
玲子の言葉に、美尻は「はぁい。」とようやく現実を見て、先を歩く玲子についていくのだった。
「で? サヤカちゃんは黄金の尻だったの?」と毎度の質問。
美尻は「また黄金の尻じゃ無かった…」と写真を見ながらしょんぼりした。
「黄金の尻の定義ってなんなのよ、」
玲子はため息をつきながら頭を悩ませる。
「丸くて細くて突き上がって柔らかくて触り心地の良い尻の事さ!!!!」
美尻は黄金の尻の定義をはっきりさせるのだった。




