十四話「セクシー女優の尻」
「大変だ大変だ大変だ!!!!!」
美尻は朝からテンションだけ無駄に高く、勢いよく玲子を叩き起こした。
玲子は眠気がまだ体に残っているのか、目をこすりながら「何よ…」とめんどくさそうに答える。
「お尻がたくさん見れるイベントがあるんだよ!!!!」
あれだけ慌てて起こしておいて、内容があまりにしょーもないので、逆に空気が一瞬止まる。
「しょーも無いんじゃぁぁ!」
玲子はどこから持ってきたのかわからないフライパンで、美尻の頭を思いきり叩いた。
美尻は顔から床に落ちて「ぐへっ…玲子の良い一発…」と、なぜか嬉しそうな顔までしている。
とりあえず着替えて落ち着いた玲子は、髪を梳かしながら美尻に問う。
「お尻がたくさん見れるイベントってなに???」
「セクシー女優たちの撮影会さ、いっぱい可愛い子ちゃんが来るんだって」
美尻が紹介すると、玲子は「そんなイベントがあるなんて日本も地に落ちたわね」と興味無さげな冷たい態度を取る。
「よーし!!!そんなに美人がいっぱいいるなら僕行っちゃうよー!!!!」とテンションを上げる美尻。
玲子は、「また連行されないか不安だからついてくわ…」とため息をついた。
「ぐへへへへ…」
妄想が止まらない美尻は、どんなセクシー女優が登場するのか調べる。そこには著名な女優たちがズラリ。
だれもかれも、色んな動画配信サービスでアダルトビデオを投稿している人たちだ。
「尻、お尻、お尻~、お尻の宝庫は?Xビデオ~~!男のロマンは?ケツマ○コ~♪即ハ○!ヤリ○ン!おせち○こ~!」
美尻は即興で作った歌を歌う。こんな歌じゃ地上波デビューどころか動画投稿サイトでもBANされてしまう。
そして素人の歌声はやはりどこか外れている。あまり聞きたくないものだ。
「それじゃ紅白出られねぇよ!!!」
玲子はフライパンで美尻の頭を再び叩く。
美尻は勢いよく吹っ飛び、「あらぁ~~!!!!」と壁に背中をぶつける。
「こいつは本当に懲りないんだから!!!」と呆れる玲子。
玲子は、「もう普通にバイトして自立するわよ???」と美尻に冷めた目を向ける。
「玲子、俺のそばから離れるな」
なんて急にかっこつけて玲子を引き止める美尻。
玲子は、「たかが変態が美少女の心を弄ぶのはよくない!!!!」と不機嫌そうな表情になる。
それもそのはずだ。一瞬でも玲子は目の前の四十を超えたオッサンにときめいてしまったのだから。
「ねぇねぇかっこよかった?かっこよかったよね???やっぱかっこいいでしょ?はい僕かっこいい!めちゃくちゃかっこいい!J系アイドルだって目指せちゃう!めちゃくちゃかっこいい!僕かっこいい!」
自惚れる美尻に、もう一発殴ってやろうか。なんて考える玲子。
玲子は、「はいはい。かっこいいですね。イベント、行くんでしょ?当日風邪引かないようにしときなさいよ~」と母親のような態度を取る。
「はーい…」と珍しく素直に答える美尻。
当日。会場には既に大勢のセクシー女優が集まっていた。
握手会。いや、どちらかと言うと撮影会に近いような、そんな催し。
たくさんのお尻が行き交う会場を見て、「ほほぉ…ほほぉ…」と下手な某五歳児のモノマネのような声を出す美尻。
男性ばかりだと思えば、ちらほら会場には若い女性もいる。
「へぇ、女性でも浮かないのね」と呟く玲子。
美尻は「最近は若い女の子でもセクシー女優の名前ぐらい知ってるからな」と説明する。
「ぐへっ!」
何かに気づいた美尻は、一目散に駆け出す。
「昨夜クササちゃぁ~~ん!!!」
美尻は大好きなセクシー女優に駆け寄る。
「これにサインちょーだい!!!」
と電子タバコを取り出す美尻。
クササは、「わ、私!?私なの!??」と目を見開き驚く。
「クササちゃんがいいの~!」
間近で顔を近づけながらクササの尻の写真を撮る美尻。
クササは、「全く、イケナイ人なんだからっ、」とむしろ写真を撮られて嬉しそうな表情を浮かべた。
「ぐへへへへ…ぐへへへへ」
クササとの接近にニヤニヤが止まらない美尻。
「ねぇクササちゃん、僕と今度一晩過ごさない?」
クササがサインしている間、美尻は彼女を危険な夜に誘う。
クササは、「交流はお断りです。」と美尻の額にキスをした。
美尻は、「ねぇ口で~駄目~?クササちゃぁ~ん」とクササに言い寄るが、その様子を見ていた玲子が美尻の耳を引っ張る。
「調子に乗るな」
耳を引っ張られた痛みに、美尻は「いてててて!」と叫んだ。
クササは、「まぁ」と両手で口を覆いながら呟く。
玲子は、「帰るよ、三郎」と美尻を連れていく。
「昨夜ちゃーん!!」と足をバタバタさせる美尻。
帰り道。
「で、昨夜さんは黄金の…」と問うが、
美尻は、「違う!!!!」と即答した。
玲子は笑う。
「ねぇ、私分かっちゃった。黄金の尻の在り処。」
玲子の言葉に美尻は「本当か!!?」と叫んだ。




