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19

和やかなドライブが終わり、市民体育館の入り口へと車が到着した。

圭一がハザードランプを点滅させると、Ice Dollのメンバーは次々と車を降りた。

早朝の体育館周辺は静かで、かすかに湿った土の匂いがした。


「さーて、着いたね!」

ネージュが大きく伸びをする。

アイビスが入り口の扉を開けて中に入ると、すぐに自動販売機で水を買っているアクアと出くわした。


「みんな、おはよう。無事に遅刻もないようで何より」

アクアは買ったばかりのペットボトルの蓋を開けながら挨拶する。

「来るの早いねー。アクアたち」

アイビスが感心する。


「わたしらは始発で来たからねえ。電車旅、中々楽しかったよ」

ルナが気配を察したのか、アリーナの中扉から出て来て言う。

「始発はいやだなあ。よくやるよ」

ネージュが呆れた顔で言う。


その時、アリーナの奥から、低く鋭い声が響いた。

「はいはい、みんな着いたわね。時間が勿体無いから、早くストレッチに入って」

振り向くと、そこには厳しい表情のミーナが立っていた。

全員の顔から一瞬で遊び心が消え、緊張感が走る。

「「「「「「はいっ!」」」」」」

皆が力強く返事をする。ビオラは背筋を伸ばす。

レッスン開始だ。


体育館に『Glacies』が鳴り響く。

ミーナの怒声が飛ぶ。

「アウラ、まだ遅い! アイビス、指先がブレてる。ネージュ、サボらない!」


結構な時間、練習が続いた後、ミーナは手を叩いた。

「はい、小休止。水分入れて」


やはり、ネックはシンクロダンスだ。

本番を想定して、全員が離れた位置で輪となり踊る。

お互いの細かな動きは見えないため、どうしてもズレが出て来てしまう。


皆が息を整えているのを見ながら、ミーナは考え込む。

「やっぱ必要か」

ミーナはそういうと、『Glacies』の曲を止めるように圭一に指示を出す。

「みんな、昨日のやつ、覚えてるわよね?ビオラが考えてくれたリズム打ち。あれに合わせるわよ」

ミーナはビオラを見た。

「ビオラ、お願いできる」

「はい!」


体育館の端に準備されていたシンセサイザーの前に立ち、ビオラは動きを音符にしたようなリズムの強調された、『Glacies』の間奏を流し始めた。


「よし、じゃあみんないいわね?つぎの小節から入るわよ!」

ミーナの指示で、メンバーは再びフォーメーションについた。

強化されたリズムが流れ出すと、メンバーは驚くほど動きを合わせやすくなっているのを感じた。

……やはり、あの時の騎士団長様のお話は正しかったですわ。


ビオラは、集中力を高めながら、自らのリズムに合わせるメンバーの動きを目で追う。

その横に、圭一が録音機をもって静かにやって来た。

何度か間奏を繰り返す。

「はい、一度ストップ。どう圭一くん?」

「いけそうです」

「じゃあお願いね」

圭一は、再生機の方に戻り、先ほど録ったばかりの音源を流す。

バッチリ、ビオラのリズム音が再生できている。


「おおー、最近の機械はやっぱすごいんだねえ」

水を飲みながら、ルナがしみじみ言う。

「やめてよルナ! 私たちは若い。まだ若い」

自分に言い聞かせるアクア。

「まあ、これで全員で練習できるね」

アイビスが満足そうに言う。

シンクロの難易度が格段に下がったことで、皆の表情にも安堵の色が浮かんだ。


「よし。 圭一くん、ひとまず、このリズム音を流し続けて。

みんな、しっかり合わせていくわよ!」

皆のシンクロ率が上がってくる。

離れた距離にいるはずなのに、リズム音が導くことで、確かな一体感が生まれて来た。


「よし。良い感じ。それじゃあ、つぎは『Glacies』のオリジナルの間奏で、もう一度チャレンジね。

でもすぐには難しいか?」

ミーナがそう呟く。


「あの」ビオラが手を挙げた。

「ん?ビオラ、またアイディア生まれた?」

ミーナがビオラに目線を向け、尋ねる。


「まずは音源を重ねてみるのはどうでしょうか?」

「ああ、私も思ったけど。やっぱり、しっかり作成した曲と、ここでビオラが即席で作成した音だと、

どうしてもズレが出ちゃうでしょ?」


「たぶん大丈夫と思います」

ビオラは確信めいた口調で答えた。

「え?まあ……試してみるか。圭一くん、ミックスってすぐできる?」

「調整しないでいいなら、すぐ出来ます。五分ください」

「OK。じゃあ、とりあえず皆、水分補給ね」


ネージュがビオラの横に寄ってきた。

「ビオラ、すごい自信だね?」

「え?同じリズムで演奏しているのですからズレないでしょう?」

ビオラはなぜ自信を問われるのかわからず、首をかしげる。


「いやいや、やっぱどうしても細かくはズレるでしょ?」

「わたしもアクアもリズムには自信がある方だけど、演奏するとなるとやっぱね」

アクアとルナが言う。


プロのダンサーとして、彼女らはコンマの世界の微妙なズレに敏感だった。

そのとき、パソコンを操作していた圭一の顔色が変わった。

彼はイヤホンを外し、ミーナに声をかける。

「ミーナさん、ちょっと音源チェックしてもらっていいですか」

「はいはい。やっぱ即席で作成するのは無理よねえ」

そう言いながら、ミーナは圭一からイヤホンを受け取り、音源をチェックする。


一瞬の静寂の後、ミーナは驚愕に目を見開いた。

「えっ?完璧に重なってる。何で?」

動揺するミーナ。

「ほんとに?」

ルナがびっくりして、圭一のもとに駆け寄り音を聞く。

「やっぱビオラはすごいねえ」

素直に褒めるアウラ。

ビオラはメンバーの驚きと、ミーナの動揺を理解できず、やっぱり首をかしげるばかりだった。


その後、圭一は急遽アリーナの隅に簡易的なDJセットを用意した。

「すごいね、マネージャー!何でもできちゃうんだ」

ネージュが感心して覗き込む。

「まあ、これくらいは」

圭一は冷静を装いながら答える。だた、その耳は少し赤くなっていた。

めざとくそれを見つけたアイビスがニヤニヤする。


圭一が操作を始め、まずは『Glacies』の間奏にビオラの完璧なリズム音を重ねた音源を流し始めた。

皆が所定の立ち位置に移動する。


「はい、それじゃあ次のターンから行くわよ。準備はいいわね?」

皆が踊り始める。


メンバーが慣れて来た頃を見計らって、ミーナが指示を出し、

圭一が重ねた音源から、ビオラが作成したリズム打ちの音量を、少しずつ、小さくしていく。

徐々に引いていくことで、メンバー自身の身体にそのリズムを刻み込ませる。

何度も何度も繰り返して、六人は汗まみれになった。

そしてついに、オリジナル音源のみで、皆のダンスが完璧にシンクロした。

離れていても、六人の動きはまるで一つの氷の結晶のようだった。


「これは、すごいステージになりそうね」

ミーナは満足げに腕を組んだ。

「皆、帰りにミックス音源を渡すから、時折聞いて身体に染み込ませておいてね。じゃあ、昼休憩!」

「「「「「「お疲れ様でした」」」」」」

ひとまずの解放の合図に、メンバー全員が一斉に床に座り込んだ。


一息ついたメンバーたちは思い思いに昼食の準備をする。

「外に東屋があるみたいだよ」

アウラが嬉しそうに言う。

「いいわね。外で食べるのが気持ち良さそう。」

アイビスもご機嫌だ。


「遠足みたいで、いいね。おやつは300円まで!」

「先生、バナナはおやつに入りますか?」

ケラケラ笑いながら、ルナとネージュが定番の遠足ネタを掛け合う。

「えっ?ミカンじゃないの?」

きょとんとしたアウラの一言に、会話の流れが凍りつく皆。


「いやだなあ。通じるでしょバナナネタ。えっ世代?やだっ」

アクアがフォローしようとアウラに聞くが、反応が鈍い。

「ねえ、通じるよね?」

助け船を求めるように、ルナがビオラに聞く。

それを見て、アイビスは顔を覆いながら虚空に手を伸ばした。

(ああ、助けを求める相手を間違えてる!)

……おやつ?ああ、屋外で食事を楽しむ時に持参する間食のことでしたわね。うちの執事たちがいつも用意が大変そうでしたわ。日持ちのしない果物を運ぶのは特に難儀すると。そうそう、その時わたくしが思いついたのが……


「果物は現地の方から買い取って調達するのが良いと思いますわ」


ビオラは真面目な顔で、過去の公爵令嬢としての知識に基づいた合理的な結論を述べた。

皆の目が点になる。

「さようですか」

かろうじてネージュが、丁寧すぎて妙な返事を絞り出すのが精一杯だった。

場の空気は完全に停止した。

ビオラの突飛な貴族的な発想は、現代日本の「おやつ」文化とはあまりにもかけ離れすぎていた。


「まあ、とりあえず。みんなで東屋でご飯を食べよう」

ルナが気を取り直して言うと、アクアが続く。

「そうね。はい行きましょう」


ぞろぞろと東屋に移動し、昼食の準備を始める。

メンバーたちは、各自の体調管理や好みが反映された弁当を披露し始めた。


ルナとアクアはお揃いの弁当箱。

中には鶏胸肉と豆腐ハンバーグ、それに玄米とブロッコリーがぎっしり詰まっている。

「まさに筋肉飯だねえ」

「身体が資本だからね。特にダンスは」

ネージュのからかいにルナが応える。


「そういうネージュは?」

アクアが尋ね、皆が覗き込むネージュの弁当箱には、

白身魚の生姜煮付けとお粥、それに蜂蜜ハーブティーが添えられていた。

「おおっ、ボーカル飯ですねえ。喉を大事にしてる」

今度はアイビスがいじる。


「アイビスは?」

ちんまりとしたお弁当箱には冷しゃぶサラダが入っていた。

「私はちょっと……この前のカフェリサーチでケーキを食べ過ぎて……そっそれより、アウラは?」


「へっ?」

すでに夢中で食べていたアウラの大きな円形の弁当に入っているのは、なんとカツ丼。

豪快なボリュームに皆が目を丸くする。

「おおっ。やっぱ若いねえー」

遠い目をするルナに、アウラは「お腹ペコペコで」と、えへへと笑う。

全員が(カツ丼食べて、午後のダンスできるのか?)とドキドキしている中、ネージュが恐々、最後のメンバーに尋ねる。

「ビオラはどんなものを?」

「わたくしはお母様渾身のお弁当ですわ」


ビオラが蓋を開けると、そこには鮮やかな彩りが溢れていた。

ふっくらした卵焼き、可愛いタコさんウィンナー、プチトマト、ほうれん草ソテー、

そして、白米を丸く整えたしろまるを模したおにぎりがちょんと座っていた。

「かっかわいい!」

アイビスが目を輝かす。

その可愛らしさと、愛情のこもった手作りの温かさが、他のメンバーのストイックな弁当とは対照的だった。

得意げなビオラ。


「これは、いい弁当だねえ。愛情を感じる」

ルナがしみじみと言う。

「はい!」

満面の笑顔のビオラ。

彼女にとって、この家庭的な弁当は、過去の世界では得られなかった、無償の愛の象徴だった。


和やかな昼食タイムが過ぎていく。

誰もが、朝のレッスンの疲れを癒し、午後に備えるために、つかの間の休息を楽しんでいた。


昼食休憩が終わり、メンバーは再び体育館のアリーナへと戻った。

午後のレッスンは、残りの楽曲である『Alba Neige』と『Volare Ibis』のフォーメーションの確認の時間だ。

これらは、全員でシンクロする『Glacies』とは異なり、

ボーカルとダンスに役割が振り分けられ、複雑な動きが求められる。


ミーナの指示が、的確に飛び交う。

「ネージュとビオラ、さっきの移動を、ワンテンポ早く。

今のままじゃあ、ルナの移動とクロスして美しくない。もう一度」


繰り返されるメロディに合わせて確認作業が続く。

「アクア、サビ前の左回りの際、もう少し大きく動いて。

アイビス、その空間をうまく使って。アウラはアイビスの影にならないように気をつけなさい」


何度もフォーメーションの動きを繰り返す。

次第に、メンバー同士の呼吸が合い、動きに流麗さが生まれてくる。

「よし。形になってきたわね。じゃあ小休止のあと、本番の気持ちで一本通すよ」

ミーナが声をかけ、メンバーたちは一旦床に座り込み、飲み物を口にした。


「アウラ。カツ丼、口から出ない?大丈夫?」

「大丈夫です。すっかり消化されています」

ネージュがアウラのカツ丼ネタで軽口を叩き、予想外のアウラの返しで、場が和む。


「じゃあ、いいわね」

ミーナの声で再び緊張感が戻る。

圭一が再生機を操作し、『Alba Neige』の切ないイントロが流れた。

雪を思わせる繊細で美しいメロディだ。

皆が踊り始める。圭一がその様子を撮影している。


「Uh- この感情は……」

動きながら、ネージュが楽曲の感情に引っ張られ、思わず口ずさんだ。

それを聞き、ビオラも曲の世界に没入する。

「Ah- なのにどうして……」

ネージュがそれに気づき、二人で目を合わせる。

互いの歌声と動きが共鳴し、感情的な波がシンクロするのを感じた。


「ネージュ、ビオラいいわね。動きが合ってきたわ。そのまま、その感情を乗せて!」

ミーナの力強い肯定の言葉が、二人のパフォーマンスを後押しした。

少しずつ音が消えていく静かなピアノの音とともに、ゆっくりと皆の動きも止まる。


「よし、圭一くんどう?」

十分な余韻の時間をとったあと、ミーナが圭一に聞く。

圭一はカメラのディスプレイを見ながら、早送りで映像を確認する。

「全体はきちんと撮れている思います」

「OK。じゃあ、小休止ね。そのあと、『Volare Ibis』いくよ」


メンバーたちは、タオルを手に、床に座り込んだ。

「あー、『Alba Neige』やっぱめっちゃいい曲だよね。踊りながら泣きそうになった」

アウラが目を潤ませながら言う。

感情移入の深さはアウラの強みだ。


「ふふ。嬉しいな」

ネージュが笑顔で応える。

ビオラがその様子を見つめていると、ネージュはビオラに親指を挙げた。

ビオラも口元を綻ばせ、そっと頷きを返す。


その様子を微笑んで見ていたアクアが、ふと思い出したように言う。

「そういや、次のライブの衣装って、デザインどんな感じなんだろうね?」

「いつもの感じだと、そろそろ案が上がってくるよね?」

ルナが続く。

「あーまたセッちゃんタイムが始まるのかあ」

ネージュがなぜかげんなりして言う。

「「セッちゃん?」」

アウラとビオラが同時に首を傾げる。聞き慣れない単語だ。


「デザイナーのセツナさん。Ice Dollの衣装担当なんだけど、ちょっと圧がね(笑)」

アイビスがそっと説明する。

「いや悪い人じゃないんだよ。いつもめっちゃクールな衣装考えてくれてるし、でも圧がね(笑)」

ルナがフォローしようと頑張るが、やはり苦笑いが混じる。

「ルナ、フォローしきれてない。まあ、じきに二人も会えるわ」

アクアが苦笑しながら、ビオラとアウラに言う。


……衣装ね。ローゼンブルク家でもお抱えデザイナーを何人も抱えていましたけど、人気の方はやはり少し変わっていましたわね。セツナさんは、どんな方なんでしょう?

ビオラは前世の経験と照らし合わせて、セツナという人物に興味を覚えた。

「衣装楽しみだなあ」

アウラが純粋にワクワクしている様子を皆で微笑ましくみる。


ミーナが手を叩いて、全員を立ち上がらせる。

「それじゃあ、始めましょう」

アップテンポなイントロがかかり出し、活気が戻る。

メンバーは弾むようなリズムに合わせて力強く踊り始めた。


「みんな笑顔で!大きく動いて」

ミーナの声が響く中、メンバーはステージをいっぱいに使って動き回る。

何度も動きを確かめるような練習が続いた。

「よし。良い感じね。じゃあ通しで行くわよ。圭一くん、撮影お願いね」

圭一が手を挙げて応える。


皆が位置につき、イントロが流れ出す。

中心にいるのは、曲のイメージを体現するアイビスと、ダイナミックなアウラだ。

ルナとアクアは確固たるスキルでリズムと基盤を支え、

ネージュとビオラはそれに合わせて流れるようにフォーメーションを変えていく。


そして、楽曲がサビへと向かい、「Toki Dance」が始まる。


「Volare Amore」

アイビスが、口ずさみ、軽やかに、そして一瞬のタメを置いて跳躍する。

その動きは夜明けの空へ飛び立つ一羽のトキのようだ。

そして降り立つ。


その後ろに、他のメンバーが流れるように並んでいく。

六人が縦一列に並び、曲調がコミカルでノリの良いリズムへと変わる。

「pinpin pinpin pin pipipin……」


ノリノリのリズムが鳴り、それに合わせて順次、六人が波のように羽ばたきを表現する。

これが、動画投稿サイトで人気が出ている独特の振り付けだ。


六人の先頭でアイビスが満面の笑顔で羽ばたく。

そして、リズムに乗って、最後尾にいたビオラの元へと向かう。

他のメンバーはアイビスとすれ違うタイミングで反対方向を向く。


「pinpin pinpin pin pipipin……」

六人の動きがシンクロし、一つの楽しげなトキの群れをなした踊りに昇華されていく。

……この自由で、面白い表現。楽しいですわね。まるで、みんなで空を飛んでいるようですわ。

ビオラも自然と笑顔になって踊りを続けていた。

かつての厳格な公爵令嬢の顔は、そこにはない。


「みんな良いわね。ビオラもすごく良い表情よ」

ミーナが褒める。

ビオラは褒められたことに少し驚きながらも、満足感で胸がいっぱいになった。


曲が終わり、六人がポジションをキープして息を整える。

「よし、今の通し、最高ね。圭一くん……そっちも大丈夫そうね。

それじゃあ練習はこれで終わり!」

圭一がOKサインで応えたのをみて、ミーナはうなずき言う。

「「「「「「ありがとうございました」」」」」」


「お疲れ様。この後、冬木プロデューサーが来て軽い打合せがあるわ。

少し時間があるから、皆、着替えを済ませておいて。シャワー室も借りてあるから」

その瞬間、ビオラの胸が高鳴るのを感じた。


「皆さんの準備が整ったら、シャワー室に案内しますね。それから……」

圭一が話し始めるが、ビオラの耳には、その声は遠くで聞こえていた。

……この後、プロデューサーと会う。どうしましょう?いや、不審がられないようにしなければ。


機会を逃すわけにはいかないが、いきなり探りを入れるのは危険すぎる。

プロデューサーの冬木光一は、もしかしたらビオラにとって、

過去の世界で命を落とした大切な幼馴染み、リヒト・アイスバーグかもしれないのだから。


ビオラはタオルで汗を拭いながら、決戦を前にしたような気持ちで、そっと目を閉じた。

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