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静かな夜

あれからも沈黙が続いていた。

窓の外を見ると、気付けば太陽は沈んでいた。


【この部屋は、二人では出られません】


何度見ても理解できない。いい加減置かれている状況は分かりだしたが、脳が考えるのを拒絶している気がする。

そういえばこの部屋には時計がない。蛍光灯は無情にもこの部屋を照らし続けている。


どれほど時間が経っただろうか━━。

急に音がした。音が部屋に響き渡る。

澪の方を見ると、顔を赤らめている。最後にモノを口にしてから相当の時間が経ったように思う。


「お腹、空いたな…。」

「そうですか。」


確かキッチンのようなものがあったはずだ。

そもそも食料は用意されているのか?


「あ、あった」


水、菓子パン、米、インスタント麺、カセットコンロ、洗い場

食料は生きていくには十分なほどあった。


「これ、毒とか入ってないよな…。」

「毒…?さすがにそれはないでしょ」

「こんなところに閉じ込める人がまともな考えを持っているとは思えないですよ…。」

「でも食べないことには…。」

「そうですけど…。」


押し問答が続いていたが、俺の腹からも音がした。


「もう食べるよ?このパン」

「本当に食べるんですか?」


止める間もなく、澪はパンを食べ始めていた。よくこんな訳のわからないものを食べられるなと思いながらも羨ましく思えてきた。

気付けばパンに手を伸ばしていた。

普段はコメ派だというのに、なぜかとてもおいしく感じた。

500㎖のペットボトルが空になった。


空腹がましになると、どっと疲れが押し寄せた。


【この部屋は、二人では出られません】

幾度と見たこの表示に怒りを覚えた。

もし近くに鈍器があったら画面を叩き割っていただろう。でも、それすらもできなかった。もう、体を動かすことができなかった。


力が抜けたようにその場に倒れこみ、目を閉じた。眠るというより、沈んでいく感覚だった。


ふと思った。

寝て起きたら、この状況は終わっているのではないか。

夢オチということで終わらないだろうか。

そもそもこれは現実なのか。


ふと不安を感じた。

この部屋の中で明日を迎えることはできるのか。

この部屋の外に出ることはできるのか。

これから生きることはできるのか。

これから俺はどうなってしまうんだろうか。


明日がどうなるかは俺にはわからない。

瞼がどんどん重くなって、気付いたら眠っていた。


しかし、眠っている間もこの表示が消えることはなかった。


【この部屋は、二人では出られません】

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